第2章 人類の不老不死達成

 癌細胞(最近は〝悪性原始癌〟と〝良性進化癌〟と区別されて呼ばれることが多い)は、DNA鎖末端にある寿命を決定するテロメアが安定化した不老不死細胞だ。しかし、かつての彼ら(悪性原始癌)は無秩序な増殖を起こし、宿主である人間とともに命を失って来た。いわば自爆テロだった。

 〝悪性原始癌〟も馬鹿では無かった。いつしか組織を形成し、さらには器官として機能するまでに進化していった(良性進化癌)。そして、かつての人間の正常細胞が、〝良性進化癌〟 細胞にすべて置き換わった結果、進化癌人間(キャンサー・パーソン)が出現した。癌細胞がかつての人間の正常細胞を組織的に乗っ取ったのだ。

 こうして人類はついに念願の個体レベルでの不老不死を獲得したのだ。そしてキャンサー・パーソンからの赤ちゃんもキャンサー・パーソンとして誕生した。つまりキャンサー・ベイビーが生まれはじめた。

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