良性進化癌

シュン・ニジオカ

第1章 祝・キャンサー・ベイビー誕生

「検査の結果、あなたはステージⅣの進化癌です」

 医者に宣告を受けたタロマの複雑な顔が、一気に明るくなったように見えた。


― やった! これで長生きできる。


「元気なキャンサー・ベイビーです。おめでとうございます」

 出産に立ちあったタロマが、満面の笑みで喜んでいるように見えた。


― わが子にしっかり遺伝してくれた。


 キャンサー・パーソンが多数を占めるこの時代、美意識も180度変わっていた。癌細胞のような無秩序な形態の顔や体を持つ個体が美しいとされ、かつてイケメンとほめそやされた整った顔に嫌悪感を持つ人が普通だ。顔がケロイドの様に乱れているので表情が読み取れないのが、難点であるが、ある意味良い点でもある。


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