第27話 師匠来る
少し前のことだがF社時代のH先輩から連絡があった。会いに来るそうだ。
この人は没落元事業部長の強欲に巻き込まれてパソコン作りの夢を諦めて他の会社に移った先輩で一年だけだが私の師匠に当たる人である。
私が尊敬する数少ない人の一人でもある。
Hさんは自転車に乗って現れた。ふと思い立って昔の知り合いを順に巡っているそうだ。
色々現況について話をする。
会社を作ったって聞いたんでネットで調べたら見つからなくてね。知り合いに聞き回ってやっと連絡先を見つけたんだ。そう言っていた。
今度独立するんだ。そうも話していた。出入りの営業から仕事ならいくらでも回すからと言われているそうだ。
・・どこかで聞いたことのあるセリフである。
それからすぐにHさんは独立して会社を興した。
約束の仕事は貰えず、営業は逃げた。
半年ほどでHさんの会社は潰れた。
メールで泣いていた。君はどうやって会社を維持しているのか、何か大きなコネでもあるのかと。
それに対してウチは母が軍人遺族恩給持ちでしかも締まり屋なので、生活費を折半できる。でなければ当の昔に倒産していたでしょうと返す。
事実である。ウチの会社は当の昔に資本金を使い尽くし事業主貸しでかろうじて対面を保っている。それでも法人外形税は取るのだから行政とは鬼である。
それに対してHさんは妻も子もいる。最初から仕事の大きなパイプがなければ立ち行かないのだ。
勘違いしてはいけないのがHさんは技術の塊のような人で鉄人とまで呼ばれていた人だ。これほどの技術者が日本では一人で食っていけない。
だから自分の会社がうまく行かないのも不思議はない。
日本では取引先の会社の人員や技術ではなくまず会社の資本金を見る。
機会の平等を歌う米国では会社の規模を見ない。まず小さな仕事を与えて、それで駄目なら容赦なく切るだけだから、仕事を出すのに躊躇いがない。失敗して失う費用は最初から人件費として割り切っている。
この点、日本では新しい会社が生き残るのは至難の技である。
そして資本金の額だけ見て仕事を出した結果、LEDがピカピカ光るのを見て喜ぶような幼稚な技術チームに莫大なお金を払って泣きを見るのである。
大笑い。
ネットで自分の会社がヒットしないというのを聞いて調べてみる。
このホームページは友達鳥が自分の趣味のホームページを立ち上げたときについでに作って来たものだ。もちろん多くのお返しをした。
どうしてこれが外から見るとヒットしないのか調べてみた。
グーグルなどの検索エンジンは生きているホームページを調査するのにBOTと呼ばれる自動プログラムを使う。HTML言語にはBOTに対してこのホームページは検索対象から外せという命令があるのだがこれがオンになっていた。
つまりこの二年間誰にも見られぬホームページを維持して来たのだ。私は。
やはり、こういうことは他人任せにしてはいけないと深く反省した。
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