第25話 その作業環境では
ホームページを作ったら問い合わせが来た。
「当社ただいま専任のファーム作業者を求めています。フル作業で何があっても当社の仕事優先でなくてはいけません。呼んだ場合はすぐに来てもらわないといけません。それと金額と作業環境を教えてください」
こう言ってきた。
相手先の会社を調べてみると、マイクロソフトのオフィスをパッケージで契約し、これを再契約の形で個別に頒布している会社だ。つまりは隙間商売である。
顧客に取っては年二万円程度の金額が二千円程度安くなる。頒布側にとっては一件で毎年千円がピンはねできる。そんな商売である。
もうこの時点でがっかりである。
どこかの会社からはじき出された連中が独立して作った会社だ。こんな商売をやっている以上、資金繰りの薄さが透けて見える。とてもファーム専任者を丸ごと雇える会社ではない。当時流行り始めたいわゆるSOHO(Small Office Home Office)であろう。作業環境を聞いて来るのも向こうに作業場がないからかも知れない。
「月工賃80万ですが継続契約ならば60万に負けさせていただきます。作業場は自宅の一室を一つ割り当ててあります」
そう返しておいた。
たちまちにして返事が来た。
「高すぎます。それとその環境では不足です」
はあ、はあ、そうですか。ではまたのお越しを。
月60万は平均だ。この金額を聞いてパニックになるのがそも分からん。人を丸抱えするのにいくら出すつもりだったのだろう。高校生のバイトじゃないんだぞ。
それにこれより低い金額でいったいどれだけの作業場を維持しろと言うのだろうか?
専用の事務所が一つ丸ごと必要ならそれだけで月10万強の家賃がかかる。それだけで月の工賃は80万を切ることはできない。
言うこと一つ一つすべて矛盾しているのだ。
そして断るなら断るでクレームの形にする必要はない。今回はご縁が無かったようでの一言で事足りる。
このように会社をやりながらも金銭感覚がおかしい人たちは意外と多い。
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