第22話 ネコさん

 G社に居たときネコさんと呼ばれる技術者がいた。

 誰もみていないと歩く時に「ネコネコ」と呟きながら歩くからだ。

 故郷に戻ったとき霊能者に観て貰ったらネコが憑いていると言われたと自分で説明していた。

 それ以外は常識人で腕の良い技術者である。


 例の転落事業部長が社長を務める四人きりの部署で働いていたが、この人もG社を辞めることになり、故郷で仕事を探すことにした。

 そうやって見つけた新しい会社が彼に仕事を依頼したらしい。三か月でシステムを作れば百万円払うという話である。そしてその会社に野党という条件である。

 これは相場の半額である。明らかに足下を見ている。

「え~。受けたんですか?」

「うん。故郷に戻ったのは療養のためだし、毎日やることもないからね」


 そして三か月後に見事にシステムは出来上がった。

 ところが完成祝いにこれでウチの社は安泰だとばかりに社員全員でコンパニオンを呼んで宴会をやったきり、このお金は払われなかった。それどころか入社の約束も話にすら出てこない。

 これに対してネコさん本人は飄々として笑っている。

「あのシステム、他社が作らないのはエネルギー効率が無茶苦茶悪いから。そんなものに社運かけているようではあの会社長くないからね」

 しばらくしてネコさんは別の会社に部長待遇で迎え入れられた。


 個人相手の約束は平気で破る会社は多い。

 日本でもまともな会社はほんのわずかである。

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