第21話 聞き語り2
知り合いの会社の営業での話。
「これ、一カ月でできませんか?」
どうみても二カ月はかかる仕事を持って来られた。
スケジュールを組みなおし、応援を入れ、残業を山ほどするということにして何とか一カ月でできる工数を算出する。
当然こうすると費用は三倍かかる。工期の前倒しとはこういうものだ。
「それでですね」相手は続ける。
「一カ月でできるんでしょ。では工賃は一カ月分で」
とんでもない話である。
これが営業スキルだと豪語する営業は簀巻きにして川に流してしまえ。
*
元同僚から聞いた話。
新人が入った。やる気のある新人で色々なことを質問し、片っ端からメモ帳に書き込んでいく。
やる気のある新人はベテランたちにも受けがよい。皆一所懸命に色々なことを教えた。
やがて誰かが気が付いた。
「なんでお前は同じことを三度も四度も聞くんだ? いつも取っているメモは何のためだ?」
必死で行っていた『使えるヤツ』の演技が剥がれた瞬間である。
*
知り合いから聞いた話。
その人はフリーランスである会社から仕事を貰っている。
ある日その会社の担当から呼び出され、車で二時間かけて指定の場所へ向かった。
指定先の喫茶店で会いしばらく会議をする。だがその内容がどうでも良いことばかりだった。
次の日もまた呼び出された。また片道二時間かけて行くとこれがまたどうでもよいことばかり議題に上る。
一週間これが続いてはっと気づいた。
相手は喫茶店でコーヒーを奢らせるために呼び出しているのだと。
一日潰されコーヒー代とガソリン代はすべて自腹である。これが毎日続くのだから遠からず仕事は破綻する。
だが担当者は一切気にしていない。自分の権力でコーヒー一杯がタダで飲めるなら下請けにどれだけの迷惑を掛けようが気にはしない。
人は心の中に餓鬼を飼う。
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