第20話 税務処理
税務処理を教えてやるからと税務署に呼び出される。
新しく会社を作った者には最初の二年は色々指導を行うのだ。
正しく法律を守らせて税金を搾り取るために。
会場に行き番号札を取る。
相談役は会計事務所などから借り出された一般の税理士たちだ。無料で手伝わされる代わりに相談相手は未来の依頼主だ。税理事務所側にも人手を出すメリットが十分にある。
役人というものは税金から十分なお金を貰っておきながら徹底的に手を抜く。だから地獄の中には彼らのためにいつも特等席が用意されているぐらいだ。
番号で呼び出される。
まず就業規則を提出させられる。このためにネットを漁って慌てて作り上げたものだ。たった一人の会社で就業規則も何もあったものではない。
続いてここ三か月の就労記録を提出させられる。
テキストエディタで各日付曜日出勤時間退勤時間を並べたものだ。きちんと祝日は休みにしてある。
プログラマーなんだからそもそも休みはない。一年365日働き続けるのがプログラマーというもの。
「これが就労記録?」
相談役の太った税理士が鼻で笑った。
馬鹿野郎。たった一人の会社でタイムカードなんか使うか。
こういうものを提出するチンケな会社が税理士なんか雇うわけがないと見切っての侮蔑の笑いだ。
そしてこれから先この笑いには何度も遭遇する。人は他人そのものではなくそれが所属する組織しか見ない。積み上がった金にしか愛想を振りまかないのだ。
おうともさ。これから先まんいち会社が大きくなっても、お前のような嫌味な税理士に誰が頼むものか。
貰った名刺は家に帰り次第ゴミ箱に放り込んだ。
表情一つ制御できないでよくこの世間の荒波を泳いでいるものだ。
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