第17話 聞き語りあれこれ
F社の頃の同僚と会う。
F社の子会社にFD社というのがある。彼はそこの社員だ。
この会社でJPEG2000チップを作ったそうである。私が作ったのは画像の圧縮解凍を行うソフトであるが、それをハードで行うチップである。
開発は見事に成功し、それを機にFD社は上場を果たした。
やったね!
浮かれ騒ぎの中、それで集まった金はすべて次のチップVer2に投入された。
時間が経過すること一年にしてVer2は出来上がった。
ただ一つ誤算だったのは、出来上がったVer2はなぜか性能がVer1とまったく同じ事。
こうしてせっかく得たお金はドブに捨てられた。株を買った人たちは泣くしかない。
いやいやいやいや。設計段階でそれぐらいは予想がつくでしょ?
この会社では専務同士が次の社長の座を争っていた。
そこでS専務は出世策として『みんな大好きS専務』作戦を考えた。
社員一人一人を酒に誘い仲良くなろう。そしてそれを後ろ盾にして社長の座を確保しよう。
そう考えたのだ。
こういう戦略もアリと言えばアリだ。
酒に誘う本人が酒に飲まれる人でなおかつ絡み酒でなければ・・の話だが。
結果としてS専務に誘われた人間すべてが酷い目に遭い、たちまちにしてアンチS専務の山が出来上がった。
ところがS専務本人だけは自分の計画はうまくいっていると勘違いした。
酒乱が強い人間は酔うと記憶が曖昧になる。相手がどれだけ嫌な顔をしてもそれは認識しない。
認識すれば酒が楽しめなくなるためだ。要はS専務の無意識は酔って酒乱を表に出したいだけで、それを意識側に命令するために出世のための人気取りと理由づけたに過ぎない。
この壮大な実験の結果として会社の部下全部がS専務を軽蔑と共に嫌うことになった。
その後S専務がどうなったのかは知らない。
きっと今でも酒場の片隅で誰かに絡んでいるのだろう。
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