第7話 すれ違い

 またもや昼ギツネ課長が現れた。

 今度連れていかれたのは新宿にある会社だ。

「じゃ、これで」

 相手の会社の課長に合わせた後に昼ギツネ課長は姿を消した。

 おい、おい、ここで何しろというのよ。何も聞いていないぞ。

 アホか、お前は?

 コミュ障にも程があるぞ。


 向こうの会社の人が現れて机に案内される。

「ではここに座っていてください。座っているだけで結構ですから」

 そう言いながら肩を抑えて椅子に押し込む。

 実に失礼だ。高校生のバイトか何かと勘違いしているのか?

「ちょ、ちょっと待ってください。昼ギツネ課長から聞いていないんですか? 私は通いはできないので自宅作業が必須なのですが」

「え?」


 何度も昼ギツネ課長には念を押しておいたのだが、新宿までの通いなんかできるわけがない。私は車酔いの王様で電車ですら距離が長くなると酔うのだ。そしてここまでは片道1時間以上かかる。だから今までは勤め先の会社の近くに引っ越して働いていたのだ。

 そこらへんの事情が完全に飛んでいる。さすが昼ギツネ。人の話は絶対に聞かない。


 強硬に主張していると向こうの課長さんとの会議となった。

 こちらの状況を説明し、では何ができるかという話になり、向こうのソースの問題点の確認などはいかがですかという話に持っていった。

 相手の課長は頷くばかり。

 結局ソースは出して来た。


 帰った後に昼ギツネがデコしてきた。あんた今までどこに隠れていた?

 一応経緯を説明する。

「そう、仕事が取れたの」ほっとした顔をする。

 いやいや、あんた仲介人だろ?

 少しは向こうとコンタクト取ろうよ。徹底的に仕事の手抜くの止めてくれない?


 それから二週間貰ったソースを解析する。だいたい理解したので、そう言えば金額の交渉をしていなかったなと思い相手の課長に連絡を取る。

 ・・騒ぎになった。

 向こうは仕事を出したつもりはなかったらしい。

 いやいやいやいや。課長職にある人間がウンと言っておいて知りませんはないだろう。それなら最初からどうしてソースを寄越して来た?

 まさかタダで色々やらせる気だったのか?

 ゴネているとついに向こうの課長が電話に出てこなくなった。

「本課長はメンタル不調にて休暇を取っています」

 この会社はそんなものでごまかせると思っているのが凄い。駄目な課長は昼ギツネだけではなかったのだ。


 結局この話はグタグタになって終わった。

 そろそろ昼ギツネ課長の体から貧乏神の臭いが漂い始めた。


P.S.タダで仕事をさせようという会社は驚くほど多い。

    これから先も山ほど出て来ることになる。

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