062 tr12, another wasted day/再び徒労の日

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【AD:2117年, 革命新暦:195年、春】



「ユーリアーおあよー」

「おはようシーちゃん、今朝は一段とテンション低いわね」

「まーねー、例のイニシエーションのスケジュ-ルと教育シラバスみたー?」

「ええ。選抜者の決まったところ優先なのはまあ理解できるけど、それ以外にも希望を聞いて別途処置を行うって書いてあったかしら…?」

「そっちが問題なんだよねー。ウチはオプション多すぎて、気になるの選ぶと追加授業がとんでもなくてさー」

「内容によっては時間数も違うものね。イニシエーションで学べなくて、直接授業みたいなコースも多いみたい」

「言語とか科学系は共通で取れそうだからユリアと一緒に行けていいけど、特殊授業とか全滅じゃーん」

「あら、一緒に出てくれるなら房中術なんて気持ちよくて楽しいからオススメよ?」

「うげ、一番ヤなやつじゃん。僕のシラバスにそれ書いてないよ」

「あはは、私だって何十kmも走るなんて嫌だもの、この辺が特性の一つなんじゃないかしら」

「そーだねぇ、イニシエーションも何やるのか気になるけど、カリキュラム読み込まないとだね。

 それよかDDTからPCB(Parent Characterized Binder)に順次変わるってのが気になるかな。

 例のなんだっけ、ロミオさんどーなるんだろ?」

「次会ったときに聞いてみるわ、他にも相談があるしね」


「そういえば、グループ分けとかカリキュラムってどう決めてるのかしらね。

 どんな基準で決めたかシーちゃんは知ってる?」

「僕ら『設定』なんて言われたでしょ、あの言葉が引っかかってたから調べたら、どうも遺伝子操作されて作られた子達みたい。


 そう考えると、色々辻褄合うんだよね。

 図書室の本でよく見る『お父さん』『お母さん』なんて僕らにはいないけど、普通は居るみたいだし。

 フーちゃんやナージャ、シス、メドやんって他の子と全然違う毛の生え方してるでしょ、耳の形も僕らと違う。

 前に巨人組なんて言ってたけど、2m超える子が何人もいて、しかもそんな特徴持ってるんだもん。

 何かの獣の遺伝子を持ってて、それで強いんじゃないかなぁ。

 ケーにいちゃんなんて電気だって、普通人間は発電なんてできないよ。


 アベル様やリザ、ドラクル、グリゴリ辺りの普通くらいの背丈の子達は比較的見た目に特徴は出てないけど、ユリアだってもうおっぱいボイーン!で綺麗だし、エッチなこと大好きでしょ?

 だから、見えない処に何かあるんだと思う。


 僕?うん、小柄…いや小人組も特徴あるよね。

 アジンやシャスチはまだ小さい普通の人サイズだけど、サルのやつ、オズベヤーナなんて名前付いてるって初めて知ったけど、あいつ見た目サルだけじゃなくて腕も長いし、明らかに背も低いよね。

 僕なんて未だに第二次性徴期来ない、子供のまんまだよ!

 ずるいなーユリア、やっぱりちょっとおっぱい分けてよ!」

「いいわよ、シーちゃんならいつでもあげちゃう!」

「っく、苦しい悪かったよもー。

 とにかく、ちょっとだけ真面目にこれからの為に考えなきゃ」


「できるだけオプションは取った方が良いんじゃないかしら。

 シーちゃんはあちこち行きたいしフィールドワークって言われてたから、言語は必須よね。

 私も自分の身体の事良く知らないと、グリゴリさんに任せるのはちょっと怖い」

「ユリアってなんかアイツとドラクル嫌いだよねー、ドラクルは僕も好きになれないけど。

なんでグリゴリだめなん?」

「だって、何度話しかけても下向いてじっとしてるか、フガフガ言ってどっか行っちゃうんだもの。

 かと思えば何の脈絡もなく突然『来い』なんて腕掴んで声かけてくるのよ?

 意思疎通できない人は嫌。

幾ら専門分野って言われてても、怪我とか病気の治療は任せたくないわ」

「ユリアも相手を選ぶんだねー。

 そういえば暫くスーちゃんとトゥリを見かけないけど、どーしちゃったの?」

「あの子達はねぇ…2年位前、ドベちゃん達の様子がおかしくなったことあるでしょ?」

「うん、そのあと逃げ回ってたら、寒くなるころに姿見なくなっちゃった件ね」

「その更に少しあと、去年の今頃からあの二人も様子がおかしくて…居なくなった訳じゃないと思う、夜中に物音がするし。

 だけど日中は二人とも部屋にこもったきり、朝ごはんの時間にも出て来ないの。

 こないだ名前を呼ばれたってことは生きてるんだろけど…

 そういえばドベちゃんも名前呼ばれたってことは、生きてる筈よね?」

「部屋はおろか建物も敷地も行かれるところは全部回ったつもりなんだけど、姿見なかったのにね。

 14の子達もリザは『居なくなって清々した』なんて言ってるけど、あれだけの人数が姿見せないってなんかあるよね…」


「不思議なのは、なぜか14種類あるグループで全部1人は生き残ってるところよね」

「逆に、2人以上残ったグループでまともに活動できてるのって無くない?

 その割にはイニシエーションの順番を選抜者から…なんて言ってたし。

 だってあと残った07のアーちゃんとこも彼女以外は居なくなってて、やっぱり姿見ないのに」

「彼女とは仲直りできたの?」

「元から仲悪くないよ。僕が微妙に避けられてるだけ。

 アーちゃんはアベル様かケーにいちゃんのこと好きみたいなんだけど、僕が仲良くしてるのが気に入らないんだ。

 大きい人好きなら一緒に混じって遊ぶか、近くで訓練の見学すりゃいいのに」

「それが乙女心なのよ。

 あの子も変わってるわよねぇ」

「うん、いつもスケッチブック抱えて絵を書いてるの、僕は割と好きなんだけどなぁ」

「ほーらぁ、私と云うものがありながら他の子が好きだなんて!ヨヨヨ…」

「あっは!僕の一番はいつだって君だよユリア」

「うふふふふ」




「…あいつら、ホントいちゃつくの好きね…

 この施設に引っ越して以来ずっとじゃない。

 それに比べて、アタシの周りにゃこんなんばっかでイヤんなっちゃうわ…」

「良いではありませぬか、我輩はいつでもリザ様の味方でありますぞ!」

「お、おでも…」

「グリゴリ、アンタは浮気し損ねてたじゃない」

「い、いやあのそのそれは仲良しを増やしたくて…」

「フン、まあいいわ。アンタたちはアタシの手駒として働いてもらうから。

 イニシエーションで取れる授業はなるべく全部取らせるから、あとで個別のシラバス持って集合ね」

「「あわわわわ…」」

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