021 tr17, housewine/ハウスワイン
ルイーズの誕生日パーティの日。
「皆様お集まりくださってありがとう。
3日ほど前、我が家の末娘ルイーズは14歳になりました。
成人には遠いものの高等学校に編入し、学園都市へ留学中です。
会う機会は減りますが、どうか皆様本日は楽しくご歓談ください。
プロースト!」
イヴァン伯爵のあいさつと共に、乾杯の音頭。
身内だけというものの、結構な人数だ。
主人公のルイーズは壇上でお父様と何か語り、段を折りつつ歓談に交わる。
ちなみに皆ライカンスロープなのか、ケモミ…んっんん、柔毛の生えた柔らかそうな耳をしていらっしゃる。
――――――――――
「やあ、ケイン君!初めましてだな。
妹の誕生日を祝ってくれて、ありがと!
俺はブリャチスラヴィチ家の長男、カーマインだ。
カーマイン・グラーフ・フォン・アッピス、領地のない将校だから、官僚扱いだな。
一応伯爵(Graf/グラーフ)だが親父より2ランク下の扱いで、仕事の都合で王都在住だ。
今はUMA(übermenschlich Aufteilung/超人兵団)の副団長として、親父の代理をしてる。
親父から話は聞いてるぜ、いつでもUMA来てくれよ!
期待してるからな!」
バシーンと背中を叩くカーマイン伯爵。若いころのイヴァン伯爵と生き写しと云うほどにそっくりの面構えに髭もっさり、おまけに身体は縦横とも伯爵より一回りデカいと来た。
細けぇこたあいいじゃねえか!的な人物に見えるな。
既に結婚して子供もおり独立した
そこで、さらっと横に並んだ優男。
「兄さん、私も彼に挨拶しても?」
「おおそうだコイツは弟のランディ、ここの屋敷で領地経営を引き継ぐ予定で働いてる。
同じ屋敷に居たんだから知ってるだろ?」
――――――――――
「はじめま…あ、あれ?どこかでお見かけし……あっ、水瓶と本を差し入れしてくれた人!」
そこに居たのは、ビシっと礼服を着こなしたイケメン侍従の人だった。
「どうもケイン君、はじめましてじゃないけれど改めてこんにちは。
ルイーズの誕生日を祝ってくれてありがとう、色々とね。
私はランディ・フライヘール・フォン・ブリャチスラヴィチ・ツー・プーラ…になるのかな?
これからイストリアの南端プーラという港町に赴任して、男爵として統治する予定だ。
いつも見ていたよ、妹をサポートしてくれてありがとう。
何度も襲撃されてそれでも彼女は連れ去られなかったんだから、君も大したものだ。
キミは見かけによらず紳士的な人物なようだし、これからも妹を助けてもらえるとありがたい」
ウインクしてニッと笑いやがった。
クセモノか。
父や兄と違い母に似たんだろう、ルイーズを男にしたらこうだろうという鼻筋の通った彫り深めの鼻梁、ややたれ目で優し気なエメラルドグリーンの瞳、細身で見事に礼服も着こなしている。
彼はイストリアの領主を継ぐべく領内で経営を学んでおり、また前世でいうところの大学・大学院に相当する帝都大学院の官吏部を卒業し、若くして男爵位(Freiherr/フライヘール)を取得済みとか。
まだ今年の6月に卒業してイストリアへ戻ったばかり、少し余裕があるのでルイーズの拾ってきた怪しげな人物をからかってやれと伯爵の許可を得、侍従の振りをして偵察してたと。
このお茶目さん一家め…
――――――――――
ひとしきりイケメンビームを浴びてタジタジしていると、長身の男女二人組を連れたルイーズが寄ってきた。
「ホラッ、ちい兄ちゃんそろそろアタシ達にも自己紹介させて!」
「ごめんよランディ兄さん、タミーが我慢できなくなっちゃって」
「ランディ兄さんもうネダばらししたんでしょ、そろそろ二人に譲らないと…後が怖いかもね?」
「おお怖い怖い、ブリャチスラヴィチの女はなんで皆こんな強いのかね…イデッ」
ランディさん、女性から膝キックもらってた。
「はじめましてケインさん、アタシはトマジア・ブリャチスラヴィチ、タミーって呼んでちょうだい。
今日はルイーズの誕生日祝いに出てくれてありがとね。
このボブと双子なんだけど、ルイーズと合わせて三人とも帝立ウィーン高等学園に通ってるわ。
来月から4学年だから、ルイーズの2年先輩ね」
「は、はじめましてケインさん、僕はロバート・ブリャチスラヴィチです、ボブって呼ばれてます。
ルイーズにお祝い、ありがとうございます。
僕らは家に一昨日付いたばかりで、挨拶も遅れてしまいすみません。
異世界からの転移者だって聞いてます、いろいろお話聞かせてください!」
「これっ、まーたボブは…今日はお祝いの席でしょ!
そーいうのはもっと時間のある時にしなさい!」
勝気なタミーはどちらかというとイヴァン伯爵に近い骨太の容貌で、エラのあるがっしりした顎、燃えるような赤髪とエメラルドグリーンの瞳、将来肝っ玉母ちゃんになりそう。
一方双子のボブは一家の中では異端なアッシュグレーの髪と瞳、耳も普通だ。
猫背気味でタミーよりも背が低く見え、典型的な研究畑の風貌だ。
ひとしきり学園生活の楽しさや辛さをアレコレ披露してもらい、「ところで自分ら来年卒業したらどうするの?」のオレの発言でススーっとタミーが退散したのをきっかけに、4人での会話はいったんお開きとなった。
あとでボブが
「タミーは学習院の軍部に行きたいんだけど、今年頑張らないと単位足りないんだよ。
僕は研究部志望で色んな技術に興味あるから大丈夫です、今度またお話ししましょう」
とコソッと教えてくれた。
良い感じに凸凹な双子だなぁ。
「さて、そろそろ合奏の準備をしませんか?」
横でニコニコと待機してたルイーズが声をかける。
ちょっとだけヒュってなった。
「そ、そうだねルイーズさん。
こちらから声掛けられなくてごめんねルイーズさん。
お誕生日おめでとう、14歳だねルイーズさん。
今日もより一層可愛いよルイーズさん」
ルイーズさん、ニコニコしたままズイっと近づいてきた。
ブリャチスラヴィチ家の女性、ツヨイ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます