008 そしてまわり出すかわり絵
そのとき廃工場の中から現れたドーラは、鍾子と対峙する追手の二人から彼女を庇うように前に立ったのだという。「何だ、てめえ! すっこんでろ」「いやどうせならこいつも攫っていこうぜ」などと口にする男どもを、ドーラは無言のまま蛇腹剣、
「そこには何のためらいも感情もなかったわ。処理という感じで……あっ、ごめんなさい」
そのあとドーラは鍾子を廃工場の事務所に連れて行った。「私に協力するなら今はまだ殺さない」と言われれば鍾子に断る余地はない。そしてドーラは鍾子と肌を合わせて同衾し、情報や知識をコピーしようとして
「ただ私が
そう言って
おそらく【浸蝕】も他人の精神に潜って馴染む間は【同化】と同じで無防備になるのだろう。そして情報を得たあとに浮かび上がるはずだったところを、別人格の柊子に捕まって身動きが取れなくなり、危険を冒すよりはと止むなく鍾子と共生することを選んだということか。
「共生……確かにそうね。ドーラにもやらないといけないことがあったし、私には彼女の力が必要だったから」
鍾子とドーラは情報だけでなくお互いの置かれた状況も『共有』したことだろう。そして二人は目的のために共闘することにした。ドーラはモストーから解放されることを、鍾子は神崎への復讐を……いやそれなら彼女の
「じゃあ次はモストーのことね……そもそもモストーは錬金術師じゃないの。ソロール・カルドンに雇われていたお抱えの魔術道具の職人だったのよ」
モストーは独学で錬金術の知識をかじったこともあって、いつかは自分も錬金術師になれると勘違いしていたらしい。それがソロール・カルドンと仕事上の付き合いから助言を貰ったりするうちに、自分も弟子に加えて貰ったのだと思い込んでしまったのだ。
しかし誰も知識だけで錬金術師になれるわけではない。瞑想などでチャクラを活性化させ
錬金術師になれないことを知ったモストーは、逆恨みしてソロール・カルドンを殺して星から逃亡した。そのときソロール・カルドンの助手だったドーラはモストーに禁呪具で拘束されたせいで、彼女もまた奴隷のように従ってモストーについていくしかなかったのだという。
衝動的にソロール・カルドンを殺したものの、モストーは本来は臆病でそんな大それたことができる人間では無かった。魔術道具を作る以外の能力もまるで無く、逃亡生活もいつも行き当たりばったりな杜撰なものだった。悪党にもなり切れず他人に利用されて騙され、たまに心機一転して魔術道具を作っても、もぐりのはぐれ職人と足元を見られて買い叩かれたちまちその日暮らしに落ちぶれていった。「今に見ていろ」と口では言いながらも酒に溺れ小バクチにのめり込む日々だったという。
クズ男のそうした転落人生をドーラは嫌々ながらも支えてきた。ドーラを縛っている禁呪具はモストーが死ねばドーラも死んでしまうという厄介なものだったからだ。「死にたくなかったら俺を助けろ!」と開き直られればそうするしかない。
……これはアレだな、「付き合ってくれなかったら遺書にお前の名前を書いて自殺する」と脅すストーカーと一緒だな。
事件に関してもそのうちドーラは共犯者でなく主犯のように扱われるようになったという。人ではない作られた
ドーラは逆にそれを利用することにしたのだという。二人は賞金稼ぎ(ドーラ)とその相棒(モストー)に身をやつして星から星を渡り歩いた。
「賞金稼ぎという肩書きは意外と便利だったそうよ。自分たちの情報を集めるのにもね」
凶悪な犯罪者を追う賞金稼ぎを名乗って日銭を稼ぎながら、自分たちも逃亡者として追われる賞金首という
そして今回は【B∴D∴N】がゼロワンたちに掛けた懸賞金を狙って、地球くんだりまで流れてきたというわけか。確かにビンゴだったが当たって欲しくは無かったな。
SPLATTER FANATICS AND A LITTLE LOVE, THAT'S ALL 02 桜盛鉄理/クロモリ440 @kuromori4400
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