004 リターンマッチ vs.「風」の四天王 児島草平
それでも神崎龍斗は
「な、な何のつもりだ! こんなところでいきなり……お、おい
取り乱して余裕が無くなり
やむなく
しかし突然ここで教室に乱入してくる奴がいる。
「ヒャッハー! ここからは
ん? お前は……児島草平か? 茶坊主に何が出来るんだ?
「誰が茶坊主だ! なめた口をきけるのも今のうちだぞ。オレは生まれ変わったんだ」
「児島! ちょうどいいところに来てくれた! 頼んだぞ」
言いながら神崎が
「任せてくださいよ。『ファナティック』で強化されたオレは無敵! まさに最強! ヒャッハー!」
そういうことか。悪魔のドーピングに手を出したのか、バカ野郎が!
ここは一旦仕切り直しか。まあそれもいいと思い直す。
ただしその間にも
児島草平が左右の手にシックルを【現出】させる。クエスチョンマークのように湾曲した鎌状のナイフだ。
「どうした? びびってんじゃねぇぞ? 来なけりゃこっちから行くぜ、ヒャッハー!」
児島がシックルを打ち鳴らして威嚇する。手長ザル改め殺人カマキリ男といったところか? しかしヒャッハーを安売りするのはどうかと思うぞ。言う度に小物感が増してくるのが分からないか。
「う、うるせぇよ! これでも食らえ!」
児島がシックルを投げる。弧を描いて
「ぼさっとしてんじゃねぇぞ! どんどん行くぜ!」
言いながら児島は更にシックルを投げてくる。お前は野球部とかバレー部にいる熱血コーチか。
物陰から飛んでくるシックルなら脅威だが、堂々と正面から投げてくる児島草平の頭が残念すぎる。投擲武器は初手で致命傷を与えるか、それを目くらましにして別の武器で飛び込んで戦うしか活路はない。それができない時間稼ぎのヘタレは隙を見て逃げるべきだったな。
加えてスピードが無い上に、投げ方が一本調子で軌道が全部同じだ。バッティングセンターかよ。しかも右手でしか投げられない。これでどうやって
「か、数えていただと? 雑魚のくせに舐めやがって!」
舐めたつもりはないぞ。
「い、一般戦闘員だと? これを見てもそのふざけた口がきけるか! てめえも道連れにしてやるぜ! ヒャッハー!」
児島が白い仮面を【現出】させて顔に被る。両目に十字が描かれ口は笑った厚い唇の形にくり抜かれている。それが
おそらく『ファナティック』であろうバイアル瓶を児島が一息に飲み干す。「ごあっ!」と叫んで身体を硬直させたあと一転、弛緩して泥酔したようにヘラヘラ、ゲラゲラと笑い出す。これが人が『ラフィン』になる
『ラフィン』となった児島がガクンガクンと大きく体を揺らし、笑いながら
さて、今度はこっちから攻めるか。
「ぎっ! がは……あじゅぼぁ!」
みぞおちへの肘打ちが決まり児島草平が何度目かの透明な胃液を吐いて体を折り曲げる。そこからの回し蹴りが
勝負ありだな、児島。お前の負けだ、ワン・ツー・スリー。
ふっ飛ばされ動けない児島はもがき苦しみながらも、それでも『ファナティック』のせいで笑うのをやめられない。その声が静けさを取り戻した教室に虚ろに響く。
ならばせめてもの手向けだ。 【収納】してやれば苦しまずに死ねるだろう。
しかし児島が
……分かったよ。やれるだけはやってみるか。何の保証も無いけどな。
児島草平にはナノマシンで【最適化】処置を施した。その間は拘束することになるがこれはしょうがない。麻薬中毒でも回復の兆しが見えるには数日かかるだろうしな。飯も当然だが下の世話も
児島から『ファナティック』が抜けるのには3日かかった。その日の第一声が「どら焼きが食いてぇ」だった。タバコより先に甘いものかよ。不良らしくないな。
「食いてぇもんはしょうがねえだろ」
二人でどちらからともなく笑い合った。ごく普通の友達のように。
結果から言うと児島は『ラフィン』にはなっていなかった。育ちきっていなかったというべきか。『ファナティック』を飲んだのはあれが3回目だったらしい。前の日にただの
それならば四天王の残りはやはり花札トリオの3人か。よかろう、リターンマッチ希望なら受けて立つ。
「でもよ、あいつらはオレとは全然違うんだ。凶暴さもだが、もう笑うとこを取り越しちまったみてえだし……キメ過ぎると感情が抜けちまうんじゃねえのか?」
それが『ラフィン』の最終形態か。そうなってしまえば後戻りできない人外の怪物になるということか。
児島草平は
四天王の仕事は『ファナティック』の流通の際の護衛と、それを配った地域と量を
しかし考えるほどにソロール・カルドンにどうして神崎らが必要なのか理解できない。そもそも
現地でのいつ切ってもいいダミー要員とかなのか。 ワークシェア? ホワイト? 未来の悪の組織はいろいろと大変なんだな。
しかし後日、
「日妹ぉ~、コラお前、神崎に裏で何かつまらん真似をしてるらしいな。正直に言ったらどうなんだぁ~コラ、あ?」
そう言って体育教師の
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