六芒星入隊試験編
第8話 六芒星
俺と酒呑童子が契約を結んでから一か月がたった。
六月になった東京都は暇さえあれば雨が降っている。雨にはかまいたちと戦った時の記憶のせいであんま好きではない。戦ってなくてももともと雨は好きではないが。
そして酒呑童子だが
「お?春人、おかえりー」
いつも俺が学校から帰ってくるとリビングで酒を飲んでくつろいでいる。
家に来てから三日間ぐらいは親にばれなかったが、父さんの酒を盗もうとしたのがバレたらいい。そして今は「親に捨てられた他校の友達」と親には説明して一緒に暮らしている。
「お前一応親には未成年だって伝えてあるから、酒控えろよ」
「別にいいだろ。今ご両親いないし」
「いや、まぁ…そうだけど…」
「言い返せないだろ?ちゃんとご両親帰ってきたらやめるから安心しろ」
なんだろ、めっちゃむかつく!
とはいえ何も言い返せないので俺は自分の部屋に戻った。しかしなんやかんだで酒呑童子とはうまくやれている。なんなら酒のつまみを作るのがうまいのでうちの父さんに気に入られている。この前油揚げに納豆入れて焼いたに醤油垂らしてだしてきたが、あれは結構うまかった。どうしたらあんなの思いつくんだ?
俺はスマホを開き、現在時刻を見た。15時23分。両親が帰ってくるまで時間がある。ゲームでもしてよ。
三時間後
ガチャ
「ただいまー」
ドアが開いた音とともに、母さんの声が聞こえてきた。
「母さんおかえり」
俺は自分の部屋を出て言った。
「今日はお肉が安く買えたのよ。早速ご飯にしましょ」
そういって母さんは手を洗って台所に立った。
うちの母さんは料理のスピードが速い。十分もあれば、炊飯器で時間をかける必要がある米以外は基本作れる。
「できたわよー」
十五分ぐらいで台所から声が聞こえてきた。やっぱり早いな…
「それじゃ、いただきます」
俺は、自分の席についてご飯を食べた。
「春人、そういえばあんた、バイトしないの?」
食事中にいきなり母さんが口を開いた。
「あー、バイトか…別に興味ないしいいかな?」
「そう。でも学生のうちに経験しといたほうがいいわよ」
「はいはい、そうですか」
俺は適当に相槌を打って飯を食べ終えたのち、部屋に戻った。
バイト、か…
さっき興味がないといったがあれは適当にあしらうための嘘だ。本当は経験しときたいと思ってるし、なにより金が欲しい。けど別に何かやりたいバイトがあるわけでもないし別にいいかなと思ってる。
コンコンコン
「春人、入るぞ」
ノックの音とともに酒呑童子が部屋に入ってきた。
「酒呑童子、急にどうした?」
「実はここだけの話、儲かるバイトがあってな」
「それ人間の間だと怪しいバイトへの誘い方だぞ」
「え、まじ?」
「まじ」
「えぇ…」
酒呑童子、普通に社会生きていく分には問題ないかもしれないが、余にいう「スラング」というのにめっぽう弱い。この前俺がゲームしてて「鯖おちたー」とつぶやいたら、しょうゆとフライパン持って部屋に入ってきたこともある。
「まぁでもいいバイトがあるんだよ」
「どんなバイトだ?」
「その名も、六芒星の化け使いだ」
「ん?なんじゃそりゃ?」
聞きなじみのない単語が二連続で飛んできた。なんだ六芒星って?なんだ化け使いって?
「まぁ一から説明するとな」
最初からそうしてくれ
「人間たちの極一部は、お前みたいに化け物と契約して奴らを化け使いって言うらしい。そして、そいつらを集めて化け物の力で悪さしようとするやつらをこらしめる組織が六芒星らしい」
「なるほど、つまり俺たちも六芒星に入って金稼ごうぜってことか」
「そうだそういうことだ」
「却下」
俺は即そういった。
「え?なんで?」
「だって戦うってことは死ぬかもなんだろ?」
「え?まぁ…」
「怖い、ヤダ、以上」
「ちょっと待て」
酒呑童子が慌ててそういった。
「いや一か月前に戦っただろ。大丈夫だって」
「あれでさえ契約しなかったら俺死んでたけどな」
「契約したから大丈夫だって」
「でもやだ。痛いの嫌い」
「子供かよ」
「18未満は子供だろ」
「まぁでも、一緒にやらんか?」
「やだ」
「給料いいぞ?」
「やだ…ちょっと待てどんくらいだ?」
「働きにもよるけど未成年なら月15万は最低でも行くな」
「よしやるぞ」
「え?」
酒呑童子は俺が急にやると言ったからなのか、きょとんとしてる。
「そんなにもらえるなら話は別だ」
「そ、そうか…」
あ、こいつ少し引いた。失礼だな。
「じゃあ、今週の土曜日、試験行くぞ」
「試験?」
「ああ、どうやら入隊するためには実技試験受けないといけないらしい。まぁ、お前なら大丈夫だと思うが」
「そうか。じゃあ、土曜に行くか」
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