第6話 契約完了

ジャキーン ジャキーン


ああ、これ戦闘初心者の俺でもわかる。こいつに遊ばれてる。


俺の振る刀は全部あいつのナイフに掃われる。多分、あいつがまだ攻撃しようとしてないだけで、最初から殺す気なら十回は死んでいる。


「おいおいおい、さっきまでの調子はどこ行ったんだぁ?」


いや、主にしゃべってたの酒呑童子だけどな。


しかしどうしたものか。勝てるビジョンが全く見えない。そもそも運動神経皆無の俺がここまで戦えてる時点で奇跡ってレベルだ。


てか冷静に考えてナイフと剣じゃ剣のほうが火力高いはずだろなんで攻撃力勝負ですら負けてんだよ。


「おりゃ!」


すると、奴が突然すごい力で攻撃してきた。


ザシーン ザザーッ


何とか刀で受けられはしたが、反動が大きい。俺は後ろに滑るように下がらされた。


「この感じだとかまいたちの奴はあの金棒持ったやつに負けたみたいだが、あいつもそれなりにダメージを負ったはずだ。すぐには来れねぇだろ。あいつが回復する前にお前を倒して化け物の方もやるか」


そういいながら奴はゆっくりとこっちに歩いてくる。


やばいどうしよ。吹っ飛ばされたせいで体があまり動かない。受け身なんてとれるわけない。けどとれなかったらこれ人生ジ・エンドだよな?どうする…


俺が脳みそをフル回転させてる間にも奴はゆっくりと近づいてくる。ゆっくりというのがこっちの恐怖心を煽ってくる。


ブウォン ドーン


いきなり、奴に何かが飛んできて、ぶつかった。それは奴にぶつかったのち、地面に突き刺さった。

金棒だ


「双川、大丈夫か?」


金棒の飛んできた方向から、酒呑童子の声が聞こえた。外傷などはなさそうだが、疲れているのか、呼吸が荒い。


「酒呑童子、そっちこそ大丈夫なんか?」


「大丈夫じゃないな。未契約が予想以上に足を引っ張ってる」


なるほど。奴の言う通り、酒呑童子に頼るのは厳しそうだな。


「あーあ、結構いたかったなぁ」


奴が、片手で頭を押さえながら立ち上がった。契約者の耐久力がどんなもんか知らないけど、金棒頭に直撃したんだ。それなりには痛いだろう。


「でもこれで、この化け物もあんたを助ける手段はもうないはずだ」


そういいながらまたゆっくりと歩いてくる。


これ今度こそ死んだかな?やっぱ酒呑童子の言う通り、契約者って強いんだな…

そうだ、だったら


「おい、酒呑童子」


俺は、酒呑童子に向かって叫んだ。


「あ?どうした」


「契約って今すぐ速攻で結べるか?」


相手が契約者というアドを持ってるなら、こっちもそれを手に入れる。


「できるけど、本当にいいのか?」


「ああ、この状況で手段選べるほど俺偉くないんでね」


すると、酒呑童子は少し微笑んだ。


「わかったよ」


そして、酒呑童子の体が炎に包まれた。


「っくそ、やべぇ…」


奴が今の状況を理解して、こっちに走ってきた。そして俺の前に行き、ナイフを刺そうとしたとき


ブウォ


俺の体は燃え始めた。奴もそれに怯み、後ろに下がっていった。


俺は、燃えたまんまゆっくりと立ち上がった。横から足音が聞こえてくる。炎で前は見えないので、目視はできないが酒呑童子だと直感的に思った。


そして、俺の炎と酒呑童子の炎、二つの炎が合わさり一つの炎となった。そこで始めて俺と酒呑童子は、隣にいたのが誰だか確認できた。まだ俺たちは炎で包まれている。けど、不思議と熱さは感じない。


「余はかまいたちのほうやったし、あいつはお前やれよ。ピンチになったら助けてやるが」


「そうか。なら多分お前の出番はないな」


そして、俺たちを包んでいた炎は消えた。


「契約完了」


酒呑童子は、小さな声で呟くようにそう言った。

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