第3話 化けの竜巻
倒せた…
勝てるということにしていたとはいえ、やっぱり驚きを隠せない。鵺を一匹倒して少し俺の状況も落ち着いてきたので、余計に色んなことに驚いてくる。
あの炎、なんで出せたんだ?俺は酒呑童子とは違って化け物じゃない。ただの人間だ。炎なんて出せるはずがない。でも、確かに出た。刀の力か?いや、酒呑童子の炎は赤かった。でも、俺の炎は青。一体、どうなってんだ?
「お?一匹だけとはいえ、鵺倒したのか。人間にしてはやるな」
酒呑童子が後ろから声をかけてきた。振り返って見えた酒呑童子は、鵺の返り血で所々が赤く染まっている。
「他の鵺は余が全部やっておいた。安心しろ」
「他全員倒せたんじゃやっぱ俺いらなかったんじゃ…」
「いや、ちょっとお前の実力を知りたくてな」
「知ってどうすんだよ」
すると酒呑童子はこちらの顔をじっくりと見つめてきた。酒呑童子の背が高く、体格もいいので無意識に緊張してくる。
「でも、お前の力なら大丈夫そうだ。双川、余と契約しろ」
「いやです」
俺は即答した。酒呑童子もまさかこんなに早く断られるとは思ってなかったのか、少し固まった。
「え?何故?」
「いくら命の恩人とはいえよくわからない契約を結ぶほど俺はおろかじゃないんで」
「そうか。まぁ、詳細言わなかった余も悪かった。詳しく言おう」
いや、別に求めてないけど
しかし、酒呑童子はそのまま話をつづけた。
「古くから人と化け物は契約を結ぶことによって、お互いに力を引き出してきた。それをお前と結ぼうという提案だ」
「それを結ぶことで得られる俺のメリットは?」
「まず確実に強くなれる。人の限界を超えるといっても過言ではない。余と契約を結ぶのなら、余と同じ炎を操る力を得られるはずだ」
ふーん。でも、あまり戦闘面での最強にはあこがれないんだよな。ハッカーとか情報屋とかの非戦闘系の方が俺好きなんだよな。
「それともう一つ。これは強くなるからこそではあるが、誰かの命を守れる」
酒呑童子の目が急にマジになった。
「さっきの鵺のように、人に悪さを働く化け物はたくさんいる。日本の原因不明の死者や、行方不明者の大半は化け物が原因、そして化け物が絡んだ場合、ほとんどのものが助からない」
ほとんどのものが助からないと聞いた時、俺の体が震えだした。鵺に襲われた時とはまた違った恐怖だ。
「でもそれを救えるのは、我ら化け物と、その契約者だけだ。どうだ?少しは乗り気になったか?」
酒呑童子が契約結べと圧をかけてくる。でも…
「わるいけど、別に俺には誰かを救いたい欲はないんで。じゃあ」
「あ、ちょっと!」
俺は酒呑童子の呼び止めを無視して歩き出した。
「ただいま」
俺は家に帰り、いつものように言った。
「お帰り。学校間に合った?」
「しっかりアウトだった」
「まったく。次から気をつけなさいよ」
母さんが心配そうに言った。
「わかったよ」
俺はそう言って自分の部屋に入り、着替えた。そしていつものようにスマホでゲームをしていると…
「春人!大変よ!」
母さんがものすごい勢いで部屋の中に入ってきた。
「どうしたんだよ母さん。今ゲーム中なんだけど」
「そんなのいいから。これ見なさい!」
そういいながら母さんは俺に無理やりネットニュースの記事を見せつけてきた。そこにはこんなことが書いてあった。
【速報】東京都練馬区で竜巻が発生
「日本で竜巻か。珍しいな」
「でしょ?しかも練馬区ってあんたの学校ある所じゃない」
「まぁそうだな。ちょっと怖いかな?」
嘘だ。さっきあんなに怖い目に合ったんだ。竜巻の話だけじゃそんな怖くない。もっとも、目の前で竜巻起こってたら話は別だが。
そうして母さんが俺の部屋から出ていた。すると
「おい、双川。行くぞ」
なんか聞いたことある声が聞こえてきた。
「酒呑童子。お前何勝手についてきてんだ」
俺はそう言いながら窓を開けた。するとそこには酒呑童子がいた。おそらく、窓のふちにでもぶら下がってんだろう
「お前、やばいな」
「化け物だからな。それよりも行くぞ。靴はさっきすきを見て取っておいた」
「待て行くってどこにだ」
「竜巻のところにだよ」
「は?なんで?」
「あれは確実の化け物が絡んでる。余としてはお前に契約してほしいし、化け物について少しでも知ればその気になるかなって思ってな」
「わるいが他をあたってくれ」
そういって俺が窓を閉めようとすると
「っておい!」
酒呑童子が俺を無理やり引っ張り出してきた。
「おい早く戻せ!」
「うるさい」
そういいながら酒呑童子は俺を軽々と持ち上げて走り出した。
早い。まるでジェットコースターに乗ってるようだ。
「おい!てめぇいい加減にしろ!」
しかし酒呑童子は無視して走っている。
「ああ、もういいや」
俺は、何か言うのをやめて素直に竜巻まで連れてってもらうことにした。
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