虚界の中の君へ

庵野ゆたか

プロローグ

意識と体が結合していく。

深い闇の奥で閉ざされていた感覚が、まるで長い年月が経ったかのように。繋がる。

この広大な世界で君を探すためにここに来た。


  「一体どこにいるんだ…」


俺は自身の感覚だけを頼りに、この世界を進む。

高校時代からの恋人で、これからの生活もともに歩み続けることを決めた花本はなもとユズを探すために。今、俺がいるのは世界と世界の狭間。現世と『虚界きょかい』の間のある謎めいた空間。


  「


『虚界』への入り口と思える時空の切れ目を見つけた。

俺は世界に招かれたかのように吸い込まれていく。


  「待ってろよ、ユズ」


俺は最愛の人の名前を呼び、に入り込んだ。

これは長い長い旅の序章に過ぎない。あの世界で起きたことをここに書きとめたいと思う。



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