第5話〜覚醒〜
どのくらい歩いただろうか、時間の感覚はとうに消えた。教室を見て周り、偶に休憩を摂る。
「…外ではどんなふうになってるのかな。」
外ではどのくらい時が経ってのだろうか。
携帯を見る、充電はとっくに無くなって暗い画面。あの思い出の写真ももう見れない。
「…はぁ」
溜息をつき、ポケットに携帯を入れる。ふと、ある教室に目が止まる。
「…化学実験室」
来たばかりの事を思い出す。同じ教室で見た荒んだ光景…。扉に手を掛けてゆっくりと横へ押す。鼓動がドンドンと大きく音を立てる。
「…ホッ」
中は普通の理科室だった。まぁ、あんな荒んだ光景が珍しいんだと思う。
「今日はここで休もう。」
荷物を下ろし、食料を出す。ツナの缶詰とレトルトカレー。
「カセットコンロのガスもあと少しだなぁ…」
合わせただけだが、ツナカレーが出来た。
外の世界でよく食べていたもの。
「…やっぱり味は変わらないな。」
ぽつりと呟きカレーを口に運ぶ。食べ終え、眠りに着く。
「…静かだ」
外の世界では、動画投稿サイトで動画を流しながら寝ていた為か最初のうちは慣れなかった。今になって外の世界の事が頭に過ぎる。
…どのくらい経っただろうか、身体を起こす。
「ん…んん…」
伸びをして、水を飲む。
「ふぅ…さて、行こうか。」
立ち上がり荷物を持ち、またあての無い旅へ…
「あっ」
目の前にゾンビが現れる。作業のように刃を頭に振り落とし切り裂く。
「…慣れたものだな」
俺自身、この行為に慣れたのが意外だった。根暗で中途半端で、何事にも関心が無かった俺自身が意外だ。そんな事を考えていた途端、強い目眩が走る。
「…そろそろ休憩するか。」
最近は疲れからか休憩する頻度が多くなっていた。手頃な教室に入り、飯を食い眠りに着く。
「…!」
足に強烈な痛みが走る。見ると、赤ん坊の様な物が食らいついている。
「気付かなかった、なんだこいつ!離れろっ!」
振り払い、銃弾を浴びせる。
「はぁ…はぁ…」
痛い痛い痛い、血が止まらず血管の中で何かが蠢いているような感覚。
痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ…イタクナイ…
「…ははハ」
今度ハ…俺の番カ…
「中途半端な人生ダったなァ…」
視界がぼやけ始める。
「疲れたナぁ…ミンナ…今行くヨ…」
死を悟り、目を瞑った。
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