第4話〜限界〜

あれから何日たっただろう、とにかく歩き続けゾンビを殺して探索を続けていた。

「後…缶詰は10個、レトルト食品が5箱、飲み物は缶のお茶が3本にペットボトルが2本。」

食料は沢山有るが、飲み物が少ない。

「とりあえず飲み物…購買室に取りに行こう。」

皆が何故拠点を敷いていたのかが分かる。だが、こういう時は1人の方が立ち回りやすい分拠点を敷かない方が吉だ。ここは不思議で、別の購買室が偶に見つかる。空間が歪んでいるのか、何度も同じ教室を見た。

「あ…購買室…。飲み物あるかな。」

購買室へ入る。幸いにも冷蔵庫があるタイプだ。無い場合も有るが、今回はあった。

「飲み物は…水と炭酸だけか。珈琲は無いみたいだな。」

有るだけマシだろう、荷物に飲み物を詰めすぐに出る。

「あっ…」

目の前にゾンビが居る。

「扉の音で寄ってきたか」

大鎌を構え、臨戦態勢になる。

「お前も買い物しに来たんだろうな、でもここはもう閉店だよ。」

刃を頭めがけて振り下ろす。

「ごめんな、でも生きる為だ。」

死体を残し、また闇へと歩み始める。

「うっ…ふぅ…そろそろ休憩するか…」

慣れない環境、失われた時間感覚、それらが疲れを感じさせる。手近な教室に入り安全確認し、荷物を下ろす。

「はぁ…」

ため息をこぼす…その瞬間扉が開く。

「…!?誰!?」

○○○○が入って来る。

「あれぇ?ここに居たんだ!お姉さん会えて嬉しいわぁ!」

有り得ない、死んだ筈だ。

「どうしたの?顔色が悪いわよ?」

血の気が引く、手足の感覚が無くなっていく。

「…っ」

声にならない声を上げる。

「…そうよね、お姉さんはもう死んでるはずだもんね。」

その言葉と笑顔が不気味に思える。

「お姉さんねぇ、貴方とお話したくて探してたの。」

何も返せない、声が出ない。

「単刀直入に聞くわ、君、お姉さん達が死んでどう思った?」

いつものふざけた感じじゃない。

「それ…は…」

「…悔しいわよね?悲しいわよね?私達を忘れようと、名前すら思い浮かべないようにしてる。」

思い浮かべたくもない、あんな惨劇を…思い出したくない。でも、現実は非道で、こうやって過去の幻影を見せる。

「君は、気持ちを押し殺して、意味の無い旅を続けようとしてる。もう諦めてしまえば楽になるのに、どうして?」

「…」

何も言い返せない。何もかもどうでもよかったはずなのに、こうして生きようとしている。

「答えの無い問いは答えない主義かしら?」

あの優しかった笑顔は無い、まるでゴミを見るような目で、嘲笑うような口で、こちらを見ている。

「…今更頑張ったってって君自身もどこかで思っている筈よ?」

的確に抉ってくる、あの時のような希望の光は無い。死の淵へ引きずり込もうとしている。

これが俺自身に諦めようとする自分自身が見せるものか。

「じゃあ、質問を変えましょう。君は、この先何もかも忘れて無我夢中で見えない出口を探して行くの?」

答えられない、答えなんて無い、そんな問いが無慈悲に浴びせられる。

「…でも」

「でも?言い訳かしら?でもでもだっては誰でも言えるわよ?」

やめろ

「もういい加減楽になればいいんじゃないかしら?」

やめてくれ

「辛くて辛くて堪らなくて、なのに意味の無いもがきを続けて」

もうやめてくれ

「君は、貴方は、お前は、お兄ちゃんは」

聞きたくないんだ

「「「「どうして生きてるの?」」」」

「やめろぉ!」

目が覚める、どうやら寝ていたらしい。目覚めが悪い夢だ。額を伝っていく冷たい汗。

「…どうして今更」

そんな言葉をこぼす。

「…はぁ…考えても仕方ない、行くか。」

立ち上がり荷物を背負う。重みが、現実を感じさせる。廊下へ出てまた宛のない道へ歩き始める。摩耗する精神、見えない光を探し続ける絶望。それが荷物をさらに重く感じさせる。

ふらふらと歩き続け、何も見えない前へ顔を向ける。

「見つけなきゃ行けないんだ、続けなくちゃいけないんだ。」

出口を、光を求め、あの人達の分を背負って。助けてもらった恩を返せなかった自分へ向けて贈る。見せしめとゆう旅を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る