第2話〜探索〜

「黙れよ豚野郎!いや、豚に失礼か!」

「は?お前みたいなゴミ野郎に言われたくねぇな!」

「ゴミ野郎はお前だろ!いい加減その口塞げよくせぇ!」

「あ?ふざけんじゃねぇ!お前なんか黙って死んでろ!」

「…!そうだね…死ねばいい。」

「そうだ!ほらさっさと死ねよ!」

そこで目が覚める。どうやら、夢だったようだ。

「またあの夢か…」

身体を起こしふと周りを見る。どうやらみんなはもう起きてるようだ。隣の部屋の扉を開けると、食事の準備が整っていた。

「おはよう!そろそろ呼びに行こうとしていた所よ!」

ゆきさんは元気に声を掛けてきた。

窓を見ると、暗い闇。どうやらここには朝とゆうものは無いらしい。みんな席に着く、それに合わせて自分も席に着いた。

「「「「いただきます」」」」

昨日とは変わって少し物足りなく感じる。だが、ここではご飯を食べられる事に感謝しなくてはならないのだろう。いつもは当たり前に食べていたがそう実感させる。

「「「「「ご馳走様でした。」」」」」

食べ終わり、倉庫へ向かう。

「今日は、たぬきくんとこうちゃんが残って貰える?」

ゆきさんがそう言うと2人とも頷き、隣の部屋へと戻って行く。

「とりあえず、まさとはいつものように、君は私と来て!」

そう言うと、拳銃を手に取った。自分も昨日使った大鎌を手に取る。

「残弾よし、君もこれを。」

別の拳銃を手渡される。

「後ホルスターね、はい。」

ホルスターを腰に下げ、拳銃をしまう。

「じゃあ行こっか!」

そして、廊下へ出る。

「今日はとりあえず、食料ね。後は消耗品のティッシュとかトイレットペーパーが見付かれば上々って感じかしら?」

そうして闇へと歩き始める。

「ヴヴァ〜…」

目の前にゾンビが現れる。

「来たわね、さぁやってみて?」

「え?いきなりですか?」

「何よぉ〜今更怖気付いたのかしら?何事も経験よ!ほら!」

背中を押されゾンビの前に立つ。呼吸を整え、大鎌をしっかり握る。そして頭へ目掛け思いっ切り振り落とす。ザシュッと音を立て、見事脳天を切り裂き血を吹き出させる。

「お見事!」

その場に倒れ伏したゾンビを見る。するとゆきさんは慣れた手つきでゾンビのポケットなどを探り出した。

「…やっぱりね。」

「何がやっぱりなんですか?」

「この子、元々うちにいた生存者の1人よ。」

その言葉を聞いた途端手先が冷たくなる。元々仲間だった人を手に掛けた。しょうがないとは言えやはり罪悪感は拭えないものだ。

「…まぁ、見付かっただけ良しとしましょう。発見出来てない子も居るもの。」

淡々と話しているが、ゆきさんの顔は悲しそうだった。

「…寂しいですよね。」

手を合わせる。

「えぇ、でもここではしょうがないって割り切るしかない。」

隣でゆきさんも手を合わせている。

「さぁ、行きましょう。いつまでも惜しんで居られないわ。」

またいつものような明るい声色に戻る。慣れているのか、空元気なのかは分からなかった。

そこから少し歩き、ある部屋へと入って行く。

「…購買室」

扉の看板を読む。

「ええ、ここでいつも食料を調達しているの。誰かが配給をしているのか、週1くらいで陳列棚が埋まるのよ。」

何度も言うが、非現実的だ。

「不思議よね、それにこんな場所の得体の知れない物を食べるってとても怖いわ。でも、生き残る為には仕方ない事よ。君も早く慣れるよう頑張って!」

ふと外を見る、隣の校舎の窓が見えた。そこを勢い良く駆け抜ける影。

「ん?」

「どうしたの?」

ゆきさんが振り返る。

「いえ、あっちの校舎で何か走っている様な…」

「ん〜…あのガキじゃない?」

やはり鋭い…自分もそうなのかと納得し、探索に戻る。

「あ、ラッキー!!!見てみて〜!!!キャロル入荷してるわよ〜!」

10カートンくらい山積みになって置かれている。

「わぁ…学校の購買の筈なのに…」

「落ちてるのはよく見掛けるんだけど、たまーにこう言うのが有るのよねぇ!お姉さん助かる〜!!!」

2人で鞄に詰めて行く。こういった嗜好品はやはりここでは貴重らしい。

「落ちてるってやっぱり誰かが置いてったやつですかね?」

「そうねぇ、確かに中身が中途半端な物が多いからそうなのかもねぇ。」

「毒でも入ってたらヤバくないですか?」

「何を言ってるの?煙草なんて全部毒でしょう?」

…確かに、煙草なんて全部毒だ。言われて気が付く。

「さぁ、食料もある程度集まったし!戻りますか!」

上機嫌なゆきさんの後に続き部屋を出る。廊下に出るとゆきさんが居た…様子がおかしい。

「君、足は早そうよね。」

どういう事だ?

「体力はある?有るなら…」

今 す ぐ 走 っ て 逃 げ な さ い !

気付くと、足は勝手に走っていた。ゆきさんのドスの効いた声で逃げろと言われ無我夢中で走っていた。後ろを見る、何かがゆきさんを串刺しにしている。

「走れ!逃げろ!」

ゆきさんの声が響く。怖くて逃げた、とにかく逃げた。みんなの居る教室が見える。そこに入れば仲間が居る。助かる。みんなが居る。みんなが…

「…なんで?ここは安全じゃ…」

そこには頭が潰れた人らしき物が2つ転がっていた。

1つは小学生、1つは成人男性…

「こうくん…?たぬきさん…?」

返事は無い…何も聞こえない…ただの静寂。

「…まさとさんはっ!?」

また廊下に向き直る、少し遠くに人影が見える。

「まさとさんっ!」

人影に駆け寄る。しかしそこに立っていたのは、まさとさんだった物。身体は食い荒らされぐちゃぐちゃ、目は白く濁りうわ言の様な呻き声を上げていた。

「どう…して…?」

膝から崩れ落ちる、目の前に立つまさとさんだった物を見ながら。

人は簡単に死ぬ、強い筈のまさとさんですら今は動く死体と化している。

「…」

何も言葉が出てこない、この深く暗い闇の様な絶望に飲み込まれる。

「…なんか…もうどうでもいいや…」

目の前が赤く染まる。

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