第13話 アイス①

『帰ったぞー』

「ただいまー!」


 娼館の裏口から食堂に入ると、女たちが服をはだけてぐったりしていた。


 毎度、お馴染みの光景だな。いくら日陰とはいえ、やっぱり砂漠の暑さは殺人的なのか、現地住民でも堪えているようだ。


「おかえり、ペトラ。みんな、ペトラが帰ってきたよ!」

「おかえり、ペトラ。もう暑くて暑くて堪らないよぉ」

「ペトラ、早く精霊様にお願いしておくれよ」

「ん。アラン、お願い」

『仕方ねえな……』


 オレは氷の魔法と風の魔法を組み合わせて冷たい風を創り出す。イメージはエアコンの冷房だな。


「はああああああああ。生き返るううううううううううううううう!」

「これよ! これがないと生きられない体になってしまったのおおおおおお!」

「ふああああああああああああああああ!」


 女たちが一斉に服をバッサバッサとさせて仰ぎ始める。


 もう慣れたけどさ。ここの女たちにはもう少し羞恥心というものを持ってほしいところだな。ペトラもここの女たちの仕草を見てるから、天下の大通りでスカートを捲るなんて暴挙に出ちまったんじゃないか? 


 とりあえずそこの女はパンツを穿け!


「ペトラ、何買ってきたの?」


 もうすっかり目の腫れが引いたゾラがペトラの持っている荷物を受け取りながら言う。


「ヤギの乳?」

「アイス作るの!」

「アイス?」

「アイスってなんだい?」

「冷たくて甘くておいしいの!」

「冷たくて……」

「甘い……」

「いいわね! さあ、早く作っておくれよ」

「ん! アラン、早く作ろ!」


 みんなに期待されているからか、いつになくペトラがやる気だ。


『よっしゃ! んじゃ、作るか!』

「ん!」

『まずは本当に作れるのか、実験だな』

「じっけん……?」

「あ! ヤギの乳が!?」

「う、浮いてる!?」


 オレはヤギのミルクを一掬い宙に浮かせると、砂糖を混ぜて氷の魔法でどんどんとヤギのミルクの温度を下げていく。


『ん?』


 すると、ヤギのミルクの凍り方にムラが出てきた。ちょっと凍った部分を分けてよく見てみると、それは透明な水の氷のようだった。


『こりゃもしかすると……』


 オレには学がねえから正解かはわからねえが、ヤギのミルクに含まれてる水が先に凍ってるのか?


 てことはだ。この氷を取り除いていけば、ヤギのミルクの生クリームができるんじゃねえか?


『できるかもしれねえ……!』


 生クリームがねえから、多少味が薄くても仕方がないと思っていたが、これなら解決するかもしないぞ!


 そのまま氷を取り除きながらヤギのミルクを冷やしていくと、ねっとりとしてきた。アイスクリームだ!


『おいおいおい、本当にできちまったよ……。オレ天才か!? おい、ペトラ。皿とスプーン持ってこい!』

「ん!」


 ペトラがタタタッと走って皿とスプーンを持ってきた。


 オレは、皿の上に創り上げたアイスクリームを乗っける。


『ペトラ、食ってみろ!』

「ん! ちべた!?」


 ペトラが、女たちが見守る中、出来上がった少量のアイスクリームを口に運んだ。


「おいひい……。冷たくて、甘くておいしい!」

『よっしゃ! 成功だ!』

「ん!」


 ペトラが元気よく頷いたのを見て、オレは心の中でガッツポーズをとる。


 なんだよ、意外に簡単じゃねえか。


「ペトラ、そんなにおいしいの?」

「冷たくて甘くておいしい……。どんな味なのかしら?」


 女たちもアイスに興味津々のようだな。


 オレは食堂の中央にゴトッと石のプレート創る。


「おわ!? なんだいこれ!?」

「アランがつくった」

「精霊様が?」

「なにに使うんだろうね?」

「あれ、これすごく冷たいよ!」


 女たちがペチペチ叩いてる石のプレートを氷の魔法でどんどん冷たくしていく。


 それと同時に、残ったヤギのミルクをどんどん冷やして、氷を取り除いて、ヤギの生クリームを大量生産していく。


「なくなっちゃった……」

『ペトラ、こっちにヤギのミルクと砂糖を持ってきてくれ』

「ん!」


 アイスのなくなったお皿を寂しそうに見ていたペトラに声をかけて、ヤギのミルクと砂糖を持って来させた。


『いいか、ペトラ。これからアイスを作る!』

「ん!」

『作るのはペトラだ!』

「ん? ペトラが作るの?」

『そうだ。ペトラがみんなの分を作ってやれ。大丈夫だ、作り方は教えてやるよ。心配すんな』

「ん……」

『みんなとアイス食べたいだろ?』

「ん!」

『ならがんばってみろ!』

「ん……!」


 ペトラの決心した顔を見ながら、オレは土の魔法でヘラを創った。


『いいか、ペトラ。まずはヤギのミルクと砂糖を混ぜるんだ』

「ん!」


 ペトラが一生懸命バケツの中のヤギのミルクと砂糖を混ぜていく。


「ペトラ、もしかして、あんたが作ってくれるのかい?」

「ん! ペトラ、がんばる!」

「がんばってね!」

「頼んだよ」

「あたしがバケツを持っといてあげるよ」

「なにか必要になったら言うんだよ?」

「いつでも手伝うからね」

「ん!」


 女たちは一生懸命ヤギのミルクを混ぜるペトラを愛おしそうな目で見ていた。幼い子どもが頑張る姿ってのは尊いもんだよな。それが自分たちにデザートを振る舞うために頑張ってるんだ。愛おしさも込み上げてくるってもんだ。




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