第3週 5話
年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」
≪17≪
初秋の清々しい朝、その日は日曜日だった。このまま問題が起こらず、時間が過ぎていくのを願うが、彼らの場合、そうはいかなかった。
「は?」
一刻がいつものように店扉を開けると、店内の様子が違っていた。彼の叔母である<mii>のマドンナ、
「いらっしゃいませ~」
何故か、店内にはウエイトレス姿のナギが立っていた。
「おい、何やってんだ?」
「見て分からない?今日から働かせてもらっているの」
「叔母さん、本当なんですか?」
「ええ、バイトで雇ったわ、注文を訊いてあげて」
「じゃあ…いつものモーニングセットで…」
「かしこまりました~オーダー入ります~!」
ナギがオーダー内容を発すると、一刻の叔父、
「彼女、働き者ね、うちの看板娘になれるわ」
「あんまり褒めない方が良いですよ、すぐ調子に乗るから…」
一刻の心配をよそに、<mii>は常連客や新規の利用客が続々と来店していき、一気に賑やかになった。そんな中…
「…初日だから勤務時間は午前中だけなの、バイトが終わった後、私の部屋に来てね」
「え?何で?」
「ちょっと忘れたの?ほら、大学祭のことよ」
時間は数日前に遡る。場所は一刻が在学している大学。
ポカ研ことポップカルチャー研究部の部員、一刻、
「うちの部の紅一点、
「異議なし!」
ポカ研部長の英雄がそう言うと、兼正・剛志コンビが口を揃えた。一刻は無言のままであったが…
「主演は決まって、エキストラは友人、知人にお願いするとして…問題はストーリーだね」
ポカ研男性部員は腕を組んで、ナギ主演作のストーリーを考えるのだが…
「やっぱり恋愛ものでしょう、相手役は勿論、僕だ!」
「バーカ、俺に決まっているだろう、派手なアクションものが良いな」
自分の欲望を満たすための意見が多く、企画会議は難航していた。
「できるだけ筋がある作品にしたいな、野比坂君、何か案はない?」
「うーん、そうだな…」
「彼は中学・高校時代に演劇部の脚本を担当していたそうよ」
「ああ、確かそうだったね、今作の脚本・演出は野比坂君に任せようか」
「え?」
「一刻で大丈夫なのか?
「いやいや、僕ばかりがやるとマンネリ化するからね、新鮮味を出さないと…どうかな?」
一刻は気が進まなかったが、英雄の推薦で自信を持ち始めた。
「じゃあ…やってみるよ」
一刻は大学祭映画の脚本を引き受けた。
「ちぇ…」
兼正・剛志コンビは不満げな表情を浮かべていたが、多数決で一刻の脚本担当が正式に決定した。ここで一歩前進したが…
「では、野比坂君に脚本を任せるとして…音代さんと協力して、あらすじを考えてきてよ」
「何で彼女と?」
「
「分かりました、よろしくね~野比坂君~」
一刻は英雄との約束事を思い出した。彼はそれで億劫になっていた。
「演劇部で使用した脚本を持ってきてね」
「へいへい」
一刻はバイト中のナギと会う約束をして、<mii>の会計を済ました。彼の足取りは重く、上階の自宅に帰るのに時間を要した。そして…
一刻は自宅に戻ると、押し入れや収納棚に触れて、ナギに言われた通り、自身が創作した脚本を探そうとした。
それから時間が経ち、一刻はナギの部屋を訪ねるのだが…
「いらっしゃい~鍵は開いてるから勝手に入って~」
一刻はナギの指示に従って、部屋扉を開けようとするが…
「あれ?…わわ、どうなってんだ!?」
一刻がナギ宅の玄関で違和感を覚えた。彼の体はふわっと宙を浮いていき、不思議な現象が起きていき…
「あっごめんなさい、元に戻すの忘れてた」
ナギはひょこっと顔を出して、異様な空間を泳いでいた。
「また妙な道具を使ったな」
一刻は体の自由が利かず、無様な姿を披露していた。
「はい、これで元通り!」
ナギは専用端末を操作、それで室内に変化が起きた。
「え…いで…!」
宙に浮いた一刻は突然、地面に吸い寄せられていき、そのままうつ伏せ状態で倒れ込んだ。
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