第3週 1話
年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」
≪13≪
[お早うございます~]
ナギの部屋に設置されたテレビ画面には、男女の人気芸能人が映っていた。彼らは朝の情報番組の司会進行を務めており、元気よく挨拶した後、数分のフリートークを話し、本格的に番組が始まる。
当番組は、事件事故もの、芸能ネタなどは取り上げず、日常のためになる生活情報を届ける内容となっている。有名人をゲストに招くトークの他、料理やクイズコーナーが企画されて、バラエティー感が強調されることに。
なお、メイン司会者が放送局のアナウンサーではなく、元アイドルと大物女優だということが画期的で、それに加えて、生放送であることから時折の笑いを誘うハプニングが楽しめる。
ナギは20世紀の情報を得るために、あらゆるテレビ番組を観ていた。彼女はのんびりと過ごしていたわけだが…
ガチャン…
ナギのテレビ鑑賞中、隣人室扉の開閉音がした。
[それではまた来週も、はなまるでお会いしましょう、今週末もはなまるな日をお過ごしください~]
司会役の天真爛漫な人気女性俳優が番組のエンディングを締めた。ナギは飽きたのか、テレビの電源を切って、次は何をしようかとソファーで寝ころびながら天井を見ていた。
「
ナギは呟いた後、何か始めようとした。
「じゃあ、お願いね」
ナギは相棒のドラッチに便利な道具を出すよう指示をした。
すると、亜空間ホールを通じて、A4サイズ薄型タブレットのような機器が転送された。
「えっと、名前は
ナギはタブレットを操作、一刻の個人情報を音声入力していった。タブレット画面には地図が表示されて、彼の現在位置を探索していた。
ナギは小型人工衛星を所有しており、通信機器として利用していた。小型人工衛星は、地球周回軌道上で起動中、彼女の音声データは周回中の衛星に送信されて、搭載された高性能衛星カメラにより、瞬時に目的地を解析することが可能であった。
「ここね…」
ナギは一刻が在学する大学を突き止めた。
「彼を驚かしちゃお~、あれをお願い」
ナギは再び、ドラッチに便利な道具を出すよう指示した。すると…
トランクのような物体が転送された。それはたちまち、洋式の〝門〟に変形した。その名は収納型目的地通行門〝コンパス・ゲート〟という。
ナギは一刻が通う大学の座標をコンパス・ゲートに送信した。
[…無茶はしないで下さいね]
「ほんの暇つぶしよ、じゃあ、行きましょうか」
ナギたちはワクワクしながらコンパス・ゲートを通った。その先は…
場所は変わり、都内の何処か。ナギは一刻が通う大学に辿り着いた。
「ここがカズ(一刻)ちゃんの学校か~」
ナギは物珍しそうに、目的地の大学を見ていた。彼女は胸を躍らせて、
「あの…すみません、ちょっと訪ねたいことが…」
「え…何でしょうか?」
「野比坂一刻って生徒を知らない?」
「う~ん、知らないけど…その人の知り合い?」
「まあね、用事で彼に会いに来たんだけど…」
「学生課に行けば、分かるんじゃないかな?」
ナギは声をかけた男子大学生に学生課がある場所を教えてもらった。
「ありがとう、助かったわ」
ナギは男子大学生に礼を言って、彼の手を優しく握った。
「…いえいえ」
男性大学生は純粋に照れて、ナギと別れた。彼女の実年齢が63歳であるが、とても信じられないことだろう。
ナギは学生課に向かい、女性職員に一刻のことを訊ねた。
「…彼は経済学部の3回生ね…今日は授業がないから、サークル目的で来ているわ」
「サークル?」
「〝ポップカルチャー研究部〟の部員よ、不定期で自作映画とか作って公開しているわ」
「へえ~…ありがとう…ございました」
「あなた、ここの学生じゃないの?」
「は…はい、彼の姉です、ちょっと用があって…」
ナギはどうにか誤魔化して、その場を切り抜けた。彼女は一刻に会おうと、ポップカルチャー研究部の門を叩こうとしたが…
「ウチに何か用?」
ナギは廊下で1人の男子大学生と出会った。
「あの…こちらに野比坂一刻君がいるって聞いてきたんだけど…」
「ああ、一刻の知り合いか~まあ入りなよ」
「あなたもここの部員なの?」
「そうだよ、僕は
兼正はチャラい外見だが、由緒ある財閥の御曹司であった。彼の
ナギは一刻と同じ部員と遭遇した。そして…
「え…!?」
一刻は部員仲間と一緒に入室してきたナギを目にして、驚きのあまり絶句していた。
「彼女とはどういう関係だ?」
「こんな美人が一刻なんかと…?」
「紹介してくれよ~」
ポップカルチャー研究部の部員は、突如現れたナギに興味津々だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます