第2週 5話

年鑑 フューチャー・ウォーカー

WEEKLY 2nd 「ポカ研って何?」


≪11≪


 時は1998年9月下旬、大学生の夏休みパラダイスも終わりに近づいていた。


 大学生の野比坂一刻のびざかかずときは、夏休み期間中に奇妙な体験をしていた。

 24世紀、未来の世界から謎の美女がやって来たのだが、当初、非現実的な出来事で、何処まで信じていいか彼にも分からなかった。

 

 謎の美女はナギと名乗り、彼女の外見・容姿は、明らかに20代前半の女性なのだが、実年齢は63歳らしい。未来の世界では、遺伝子技術が発達して、平均寿命も大幅に伸びたようだ。

 

 ナギは相棒兼監視役のロボット、ドラッチ(ガーディアン/スリーパー)と共に、20世紀の一刻が住む町に、突如現れた。

 初対面であるが、ナギは強かに一刻と接していた。彼は妙な女を忌み嫌っていたが、徐々に打ち解けていき、友達のような関係を築いていた。

 一刻はナギのことを未来人だと信じて、お隣さん同士の付き合いを始めることとなったのだが…


 ナギは過去の時代に移住する未来人〝チャプターレジデント〟として、20世紀の世界にやってきたわけだが、何故、一刻に付き纏っているかは、不明で謎に包まれたままであった。

 これから2人の人の関係が解明されるのか、未知なる時間が刻まれようとしていた。


 本格的な夏の終わり頃、一刻はナギに20世紀の娯楽を知ってもらおうと、彼女を誘っていた。何故か、一刻の部屋は真っ暗で、設置されたテレビには、映画映像が映っていた。


 映画のエンドロールが流れると、一刻の部屋は明るくなった。映画が再生されている間、部屋が暗かった理由は、どうやら、上映中の映画館内の雰囲気を再現したかったようだ。

 しかし、一刻の部屋は狭く、テレビはブラウン管の中古テレビ、VHSで画質は荒く、外の騒音が状態で、とても映画館の空気ムードは味わえなかった。


「どうだった?」

「そうね、実際に起きた事件を題材にした作品だから、リアリティーがあったけど…やっぱりラブストーリーは明るい方が良いんじゃない?」

 一刻たちは、昨年に公開された『タイタニック』を観ていた。

 一刻の部屋には、彼のお気に入りの映画作品のVHSが並べられており、3日間ほど上映会を行っていた。一刻は観た映画の感想をナギに訊くのだが…


「今まで観た中で、面白いと思った作品はあるか?」

「そうね~…色々観させてもらったけど、アクションものは男性が観るものでしょ、女性の役者さんが活躍する作品が良いわね」

「例えば?」

「…『ローマの休日』だったかな、その主演女優のことが好きになったわ」

「オードリー・ヘップバーンか、確かにアメリカの大女優だからな」

「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も楽しめたわ、時間旅行の体験者だからね…」

「非現実なSF作品がお好みのようだね」

「そうでもないけど…未来の世界では恐竜だっているわよ」

「え?」

 一刻は驚きが隠せず、ナギの発言に興味があった。


「…絶滅動物、絶滅危惧種を保護するための星があってね、太古の生物、恐竜はそこで生きているのよ」

「まるで映画じゃないか、どうりで『ジュラシックパーク』の上映時、リアクションが薄いわけだ」

「そんなことないわ、20世紀の映像演出は素晴らしいわよ、優秀な技術者が多いようね」

「ああ、スティーブン・スピルバーグは天才だよ…それとジョージ・ルーカスも…『スターウォーズ』はどうだった?」

 一刻の趣味の一つは映画鑑賞で、感情が高ぶる症状があった。


「どうも、暗いテーマの作品が苦手みたい…SF娯楽でしょうが、実際に宇宙で戦争があったしね…」

「へえ、辛いことを思い出させたとか…?」

「いえ、私は戦後生まれだから…日本映画でオススメはないの?」

「僕は洋画派でね…親戚夫婦が詳しいと思うけど…」

「映画のことは大体分かったわ、ありがとう」

「じゃあ次は…音楽、アニメ、ドラマ、それとも…」

「また今度にして…さすがに疲れたわ、外の空気が吸いたいし…その前に片づけないとね…」

 一刻の部屋を見ると、飲料水のペットボトルやスナック菓子の袋など、ごみが散乱していた。


「上映会はお開きか…よっこらせと…」

「どうやって、ごみを処理してるの?」

「ごみ袋を用意して、燃えるごみ、燃えないゴミに分けて…まあ適当でいいよ」

「………」

 ナギは一刻のごみ処理法が気に入らない様子であった。

「どうした?」

「この時代は環境問題に関心がないようね…」

「はあ?ちゃんと分別して、処理されているはずだが…」

処理してないでしょ?業者任せで責任を果たせてない」

「責任って…たかが、ごみだろう?」

 ナギは一刻の意見に呆れ顔であった。


「良いわ、私だけでここのごみを片付けるわ…お願い」

[了解しました]

 ナギはそう言った後、相棒のドラッチを呼び出した。

「何を始める気だ?」

 ナギはドラッチに何か指示すると、一刻の部屋の空間に異変が起きた。空間の一部にホールが生じて、そこから複数の物体が出てきた。

「これだけで何とかなるか…さて、始めましょうか…」

 ナギは一刻の前で、未来の道具を転送した。まず、彼女はスプレー缶のようなものを使用して…


 ナギは謎のスプレーを集めたごみに吹きかけた。すると…


「え…これは…!」

 一刻が驚くのも無理はなかった。スプレーがかかったごみは、時間が経つにつれて、変形していき、最終的にパチンコ玉のような球体となった。

「さて…次はと…」

 ナギはそのまま作業を続けた。彼女は小さな球体と化したごみを、金属の箱のようなものに納めた。その結果…


 かすかに金属箱の作動音が鳴って、それから1分後、作業完了を知らせる電子音が鳴り響いた。

「そろそろ、何をやっているか教えてくれよ」

「文字通り、ごみ掃除よ…これを見て」

 ナギは金属箱のふたを開けた。

「あれ?…さっきのがないぞ」

「完全に消滅したのよ」

「消滅って…あのごみが消えて無くなったってことか?」

 ナギは一刻の問いに頷き、軽く説明した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る