第103話 無碍自在



 マリンが同行することになった。


「まってほしいですぅ~」


 びちびち! とマリンがひれを動かしながら言う。


「マリンちゃん、陸地を歩けないんですぅ!」


 ……そりゃそうか。こいつ人魚だもんな。下半身が魚なんだ、歩けるわけがない。


「しかたねえな」

「そこで放置しない、ダーリンやさしくて大好き♡」


 エリスが目を♡にしながら、くねくねと体を動かしながら言う。

 ちっ……!


「勘違いすんな。この雑魚を腐らせたら、もったいないからな。こいつはほら……その……いざというときに非常食になる魚類だからな」


 エリスが「そうですねー♡」とあほ面さらしながら言う。


「旦那様……。どうしてそんな回りくどいことをいうですぅ? マリンちゃんのことほっとけないって、なんで素直に言えないんです?」

「黙れ魚類」


 俺はマリンのそばまでやってくる。

 ひれに触れて言う。


「【無碍自在】」

「むげ……?」「じざい……?」


 アホ二名が首をかしげている。

 その間に、マリンの足が変化しだした。


「わ、わー! すごいですぅ! マリンちゃんの足が、人間の足になったんですぅう!」


 マリンのひれが美しい、人間の足に変化していたのだ。


「ダーリン、今のも【無】スキルを使ったんですか?」

「ああ。【無碍自在】。触れた相手の肉体を作り替え、障害を無くすスキルだ」


 こいつの足では陸地で歩けない。そこでこのスキルを使い、人間の足(というか下半身)へと作り替えた。


「旦那様……♡」

「感謝しろよ」

「これで……旦那様とえっちぃできるですぅ♡」


 ……雑魚が両足をM字に開脚しやがった。


「ちょっと、何をやってるのですか! そんなエッチなポーズを取って!」


 エリスのアホが珍しく、アホじゃないぞ。


「ダーリンは前からじゃ無くて後ろからが好きなんですよ!」


 前言撤回アホだった。

 俺はアホ2名をほっといて歩き出す。


「マリンちゃん、下半身丸出しはさすがにはずかしいかなーって……わぷっ!」


 俺は黒衣ブラックウーズ・コートの一部をちぎって、雑魚にぶん投げる。

 黒衣ブラックウーズ・コートは白いスカートとサンダルに変化させた。


「やっぱり、旦那様は優しい人ですぅ~♡」

「わかるー! ダーリンは素敵な人だよねー!」


 ……はぁ。

 女が増えてうるさくなったな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る