第104話 合流


 雑魚を一匹仲間に引き入れた俺は、留守番してるシロのもとへと向かう。

 シロは御者台にちょこんと行儀良く座っていた。


 俺に気づくと、シロは跳躍し、俺の元へとやってきた。


「お兄ちゃんっ! おかえり~!」


 シロを正面から抱き留める。

 身長は結構あるのに、体重は驚くほど軽い。もっと食わせた方がいいな。


「今帰った。良い子で留守番してたな?」

「うん! してたよっ!」

「そうか。偉いな」


 シロの頭を撫でる。

 ぶぉんぶぉん、とシロが犬尻尾を振るう。可愛いやつだ。


「旦那様、獣人なんて飼ってたですぅ?」


 魚類はシロがただの獣人だと思ってるようだ。


「危機感の欠如……」

「ほえ?」


 シロの正体を知らない雑魚が首をかしげる。

 一方シロがぷくっと頬を膨らませる。


「しろ、じゅーじんじゃないもん」

「じゃあなんなんですぅ?」


 ボンッ! とシロが元の姿へともどる。


「ど、ど、どしぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~! フェンリルですぅうううううううううううううううううう!!!!」


 びたーん! と雑魚がひっくり返って倒れる。


「んな大げさな……」

「ダーリン、お忘れのようですが、フェンリルって伝説の魔獣ですよ? 本来なら、これが普通のリアクションなんです」


「そ、そうなんだ……」


 エリスさん今日は賢そうに見える不思議。

 マリンがアホを担当してるから、相対的に頭良さそうに見えるのだろうか……。



「まあ、とにかくだ。シロ、仲良くしてやれ」

『うー、お兄ちゃんがそういうなら。しろ、仲良くしてやる』


「偉いぞ。さ、竜車に乗っけてやってくれ」


 シロがうなずくと、マリンを口にくわえて、荷台に転がす。


『おいしそうだった……じゅるり……』

「駄目だぞ食べちゃ」

『うん。わかってる。お兄ちゃんの大事な仲間だもんね。傷つけちゃだめだよね』


 ちっ……。


「ちげーよ。こいつは非常食だ。今食うんじゃねえ。そういうことだ」


 それを聞いて、シロがこくんとうなずく。


『わかった』

「そうかわかったか」

『お兄ちゃんは優しい』

「わかってない!!!!」


 俺のどこが優しいんだっ。


『気を失ってる仲間を、ほっとかない。お兄ちゃんはやさしいと、しろはおもいますっ』

「そうかよ……」

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