第61話 男女平等



 俺は元クラスメイトの千曲川を、追い詰めていた。

 

「て、てめえ! あ、あたしに何かしたらあいつが黙ってお、おかねえからなぁ!」


 きゃんきゃんとうるさい女だ。

 あいつって木曽川のことだろう?


「だから? 俺は別に、あいつのことなんて怖くもなんともねえよ」


 これは慢心ではない、事実だ。

 俺は現在超強化されているからな。


「とりあえずまあ、そうだな。何からしゃべってもらおうかな」

「は、はん! あたしに何聞かれても無駄だし! てめえに何を言われてもしゃべらないから」

「あ、そう。じゃあ」


 俺は左腕の呪符を解く。

 左腕がバケモノのそれとなる。


「ほい」


 ざしゅっ!

 俺は左腕を振る。


「は、ひ、ぎゃぁああああああああああああああああ!」


 千曲川の足が、両足とも消えていた。

 黒獣の腕は触れたものを何でも食べるからな。


 それは勇者の足だろうと関係ない。


「いだぁあああああああああ! あぎゃぁあああああああああああああ!」


 んで、【無傷】っと。

 にゅっ、と千曲川の足が元に戻る。


「はぁ……! はぁ……! あ、あえ……? あし……あしなんで……あし……?」

「俺のスキルの効果で、傷をなかったことしてやったんだよ」


「は……は……な、なにそれ……あんた、スキル【無】だったんじゃあ……?」

「違うよ。【無】っていうスキルがあったんだよ。無が付く事象なら、スキルで発生させられるのさ」


「な、な!? なによそれ!? そんな……無敵じゃないのよぉ!」


 そのとおり。

 無敵のスキルだったのだ。


 それをこいつを含めたあほクラスメイトどもは、名前だけで底辺だと断定し、切り捨てたのである。


「さ、じゃあ拷問を……」

「ちょ、ちょっと待って松代まつしろ! いや、才賀さいがさまぁん~♡」


 千曲川が気色の悪い声を上げる。


「ねえ、あたしをカノジョにしなぁい? 才賀さいが様のためならぁ、あたしなんだってしますよぉ~ん?」


 ……はぁ。

 なんだこいつ?


 色仕掛けってか?

 はんっ。


「悪いな」


 ザシュッ!


「あぎゃぁあああああああああああああああああああ! 腕がぁ! 腕がぁあああああああああああああああ!」


 右腕を取らせてもらった。


「俺には、もう心に決めた女がいるんでね」


 それに加えて、面倒を見ないと行けないメスフェンリルもいるし。

 こいつの入り込む余地なんてもうないのだ。


 無傷で元に戻す。


「それに、俺を切った女の言葉なんて、誰が信用できるかよ」

「ま、まっで……! まっでぇ!」

「待たん」


 ざしゅっ!


「ぎゃぁああああああああああああああああああ!」


 左腕ももらった。

 で、無傷で元に戻す。


「あんたぁ! 女にこんな酷いことして男として最低だとは思わないのぉ!?」

「思わんね。人として最低なことした人間以下のゴミに、何しようとね」


 こいつはクラスメイトが捨てられそうになってるときに、庇おうとしなかった。

 死のうとしてる人間を前に、何もしなかった。


 そんなやつに、どうして手加減しないといけないのだ。


「おまえにはこれからたっぷり、痛みを覚えてもらう。俺に嘘ついたり、逆らったりしたらどうなるか。その体に刻ませてもらうよ」




 

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