第22話 ボスの部屋



 その後、俺はエリスと協力し、ダンジョンを進んでいった。

 出てきた敵は俺の銃と、エリスの魔法剣ですべて楽に倒せた。


 そして……ようやく俺たちはたどり着いた。


「ここが……ボスの部屋か」


 俺たちの目の前には、巨大な扉がある。

 その前はセーフゾーンになっているらしく、魔物が入ってこない。


「ここにいるボスを倒せば、外に出れるんだよな?」

「そうです、ダーリン。迷宮には必ず一匹、迷宮の心臓部たる核を守護する魔物……迷宮主ボスモンスターがおります。そして、迷宮主ボスモンスターを討伐し、核を破壊することで、ダンジョンクリア。外に出る道が開けます」


 ……迷宮主ボスモンスター、か。


「当然……強いんだよな?」


 迷宮の心臓を守ってるんだから。弱いやつなわけがない。


「はい。そこに加えて……」


 エリスは何かを言いかけて、にぱっと笑う。


「大丈夫です! 私とダーリンの、無敵のコンビならば、どんな敵だって楽に倒せちゃいますよ!」


 ……明るい笑顔。明るすぎる。

 どこか、無理して笑ってるような感じがあった。


 ……さっきの台詞。

 あいつは、何かを言いかけていた。そこに加えて、と。


迷宮主ボスモンスターのレベルは、ダンジョンの難易度に比例する、といいたかったのだろうな』


 妖刀のやつがご丁寧に教えてくれた。

 ここは、最高難易度のダンジョンだって、エリス、そして妖刀も言っていた。


 最高難易度。

 つまり……ここのダンジョンのボスは、通常のボスよりも強いということ。


「…………」


 俺は改めてステータスを確認する。


~~~~~~

松代まつしろ 才賀さいが

レベル789


HP 7890/7890

MP 7890/7890(+500)

攻撃 789(+1000)

防御 789(+5000)

知性 789

素早さ 789

~~~~~~


~~~~~~

スキル一覧

・【無】レベル2

・スロット+1

・毒息吹

・毒突き

・完全保存

・熱耐性

・寒冷耐性

・超磁力

・斬撃耐性

・打撃耐性

・防御力向上

・動体視力向上

・空歩

~~~~~~


 ……最初の頃よりかなり強くなった。

 各種耐性に加えて、防御力向上を獲得したことで、結構な防御力が手に入った。


 火力面で少し不安が残るも、俺にはレールガンや特殊弾攻撃がある。

 それにMPが5000を超えてるので、【あれ】も使える。


 だから……大丈夫……だと信じたい。


「…………」


 冷静な自分が本当に、大丈夫かと問いかけてくる。

 答えは……わからない。


 この先に待っているのは今までに相手したこと無い、すごい強い敵だ。

 今のステータス、そして装備で……勝てる保証はどこにも無い。


 ……下手したら死んでしまうかもしれない。

 ……弱気が、俺の足を鈍らせる。そして、引き返そうとしてしまう。


 思わず振り返って……けど。

 そこには、微笑みを浮かべているエリスがいた。


「大丈夫ですよ。ダーリンは、大丈夫です」

「エリス……」


「今までどんな敵も倒してきたじゃ無いですか! ダーリンならだいじょーぶ!」

「…………」


 バカが。

 それがこの先にいるボスを倒しうる、根拠になると本気で思ってるのかよ……。


『思ってるんだろうな、この娘は。おまえ様なら大丈夫だと、おまえ様がいれば……と』


 エリスから向けられるその瞳は、本当に綺麗な色をしていた。

 心から俺の勝利を、信じてる目だ。


 ……その目に、信頼に……俺はどれだけ勇気をもらっただろう。

 ここで一緒に引き返そう、とか、ここで一緒に暮らそう、とか。


 そういう言葉は出てこなかった。

 俺はエリスの信頼に……答えたかった。それに何より。


 俺は……エリスと、外の世界で二人で旅することを、夢想していた。

 ……自分の命がかかってるっていう状況で、何あほなことを考えてるのだ。


 こいつにあほあほ言っていた俺も……あほだったってことだ。


『おにあいカップルだな』


 ……うるせえよ。

 でも……そう言われて、悪い気はしなかった。


 むしろ、うれしいとさえ思ってる自分が居る。


「エリス。いくぞ」

「はい!」


 俺たちはうなずくと、ボスの部屋の扉に、手をかけたのだった。

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