第16話 レベルと勘違い



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松代まつしろ 才賀さいが

レベル 339

HP 3390/3390

MP 3890/3390(+500)

攻撃 339(+1000)

防御 339(+2000)

知性 339

素早さ 339

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 蜥蜴人リザードマンを食って、俺のステータスはこんな感じになった。

 ちなみにスキルはこんな感じだ。


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スキル一覧

・【無】レベル2

・スロット+1

・毒息吹

・毒突き

・完全保存

・熱耐性

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 熱耐性は、蜥蜴人リザードマンを食って手に入れた。


「いやぁ~……ダーリンはすごいなぁ~」


 うれしそうに、俺を見ながら言う。

 こいつは鑑定スキルを持っているため、俺のステータスが見えるのだ。


「レベル339なんて、一般人を遙かに超えますよっ。英雄クラスって言ってもいいレベルです」


 なるほど……これが高いのか。

 ん?


「エリス。おまえレベルどんなもんなんだよ」


 ふと気になったのだ。

 この世界の、一般的なレベルがどんなものなのかって。


 俺には鑑定スキルが無いからな。

 今まで戦ってきた敵のレベルがどんなものなのか、わからない。

 

 俺は俺がどの程度強いのかわからなかったのだ。

 そんな中で、あほエルフが俺の仲間になった。


 こいつのレベルと比較すれば、俺がこの世界で、どれくらいの強さなのかわかるだろう。


「ふぁ……♡ しあわせぇ~……♡」


 あほエルフが恍惚の笑みを浮かべる。

 なんだ急に……。


「ダーリンにエリスってぇ~……♡ 愛称で言われてしまいましたぁ~♡ ふへへ~♡」


 ……ほんとに、あほだなこいつは。

 エリスって呼ぶようになったのは、単に、長さの問題だ。


 エルフェリスなんて、長いからな。エリスのほうが呼びやすい。

 だから言ってるだけにすぎない。


『愛称を使ってる時点で、このエルフを気に入ってるってことなんだよなぁ~……くくく!』


 くそ妖刀の戯言は無視する。いちいち相手してたらカロリー消費しちまうよ。


「で、エリスよ。レベルはどの程度なんだ?」

「ええ~……ダーリンと比べるの、恥ずかしいですよぉう。ダーリンすごいから……」

「良いから見せろ」

「はいっ♡」


 そう言って、エリスはステータスを開く。

 どれどれ。


~~~~~~

エルフェリス・アネモスギーヴ

レベル 650


HP 6500/6500

MP 16500/16500

攻撃 650(+3500)

防御 650

知性 65

素早さ 650

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「俺の倍くらいあるじゃねえか……!!!!!!!!!!!」


 なんだよさっきの言い草だと、俺の方がレベル上みたいな感だったのに!

 こいつもしっかりすげえじゃねえかよ!!!


「だ、ダーリンおこなの……?」

「……ふぅ。いや、別に」


 冷静になれ。

 そうだよ。俺はFランク勇者として、この世界に廃棄させられたんだ。


 そんな俺が強いわけ無いのだ。


「でもでも、ダーリンほんとにすごいんだよっ?」

「……いいって、別に。慰めなくても」


 別にわかってたし。

 俺、Fランだってさ。


「ほんとうにすごいんですってばー!」


 こいつのすごいは、信用ならないからな。

 何にでもすごいって言うあほだし。


 とはいえ、こいつにも人を気遣うっていう心があるんだな。

 まああほだが優しいもんなこいつ。


「う~……どうしたらダーリンがすごいって、信じてくれますか?」

「おまえがもうちょい頭が良かったらな」


 だいたい、なんだこいつの知性の数値。65て。

 俺の五分の一じゃないか。レベル650もあるのに、知性になんでこんなデバフかかってるんだ?


 まあ、バカだからか。

 うん……。


「わかりました! 私、頑張って頭良くなります!」

「頑張るってどうするんだよ」


「1足す1は……2!」

「先に行くぞ」

「あーん! ダーリン待ってくださいよぉ~~~!」


 しかしエリスのレベルをしれて良かった。

 この世界の人間は普通にレベルが高いんだ。


 このあほでさえ、レベル3桁(650)なのだ。

 他の連中は普通に考えて、同じくらい、もしくはそれ以上レベルがあるってことだ。


 ゲーム(ポケ●ンとか)だと、レベル上限が100。

 MAXが100で、それを超えてレベル339とかいう数値を持つ俺は、規格外の強さを持っているって思っていた。


 けど、井の中の蛙だった。

 このあほは650レベル。三桁レベルのやつは普通に存在するんだ。


 レベル上限が4桁とかだったら、俺はまだまだ弱いってことになる。

 多少強くなったからって、慢心しないようにしよう。


「うぅ~……ダーリンほんとにすごいのにぃ~」

「おまえの言葉すごいは、軽いんだよ」


 ヘリウムガス並に軽いんだよな。

 女子が女子に対して言う可愛いくらい、信用ならない。もしくは、男に向けて言う優しい人くらい。


「ダーリン疑い深いなぁ~。でも、そんなとこが好きです♡」

「はいはい」

「あ! 信じてないですね!」

「はいはい」

「ひどいですー!」


 まあ、何にせよ慢心禁止だ。

 まあ、ワンチャン……こいつが人類でもトップクラスに強いやつって可能性も、なくはない。


 でも、このあほが?

 人類トップクラス?

 何にでも「すごーい! すごーい!」だの「好き好き~♡」だのと言ってる、知性65のこいつが?


 ……ないな。うん。

 ないない。こいつが強いわけが無い。


「何考えてるんですか? 嫁の可愛さについてですかっ?」

「違いますよ、知性65さん」


「馬鹿にしてません!?」

「そんなことないですよ、知性65さん」


「やっぱり馬鹿にしてますねっ! もうっ! でもでも、うふふ~♡ こんな風に雑談を言う程度には、ダーリンと深い関係になってるってことですよね~♡」


「うるせえ、65は黙ってろ」

「新しいあだ名です! うふふ~♡ またダーリンと親密になったぁ~♡」


 ったく……。

 あほエルフが。さすが知性65だな。

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