第13話 エルフ嫁に伝説の武器を装備させる



 モンスターハウスにて。

 エルフェリスがついてくることになった。こなくていいんだが。


 ……で、だ。

 エルフェリス。改めてみると、とんでもない美人だ。


 長い金髪は、黄金のようにキラキラ輝いてる。

 翡翠の色をした目。


 そして抜群のプロイーションを持っている。

 胸、ケツはでかいのに、太っているようには全く見えない。


 腰はくびれてて、おれてしまいそうなほど。

 顔のパーツは、なんかもう、アニメのキャラかってくらい整ってる。目がでかい。かお小さい。


 美人過ぎてちょっと引く。


「あなた様のお名前をおたずねしてもよろしいでしょうかっ!」


 エルフェリスが手を上げて俺に聞いてくる。

 別に答えても良いのだが、教えると長く付き合わないといけなくなるきがした。


「言いたくない」

「なるほど……では! ダーリン♡ と呼びます!」

「ぶっ……!」


 だ、ダーリンだぁ……!?


『くはは! おまえ様のこと、すごくすごく愛してるのだなぁ。もうすでに、結ばれたいと思ってるらしいな!』


 ……迷惑この上なかった。


「だめですか? では、旦那様♡ で!」

「……サイガ。サイガだ」


 変な風に呼ばれたくなかったので、仕方なく、俺は名前を教えてやることにした。


「サイガ殿ですね……把握しました! とても良い名前ですね! 素敵です!」

「ああ、そうかい。エルフェリス」


 するとエルフェリスが顔を赤くし、もじもじしだす。


「その……親しい人は私のこと、エリス……と呼びます。なのでそのぉ……えへへ♡ エリスって呼んでくださると……えへへ♡」


 ……エルフェリスは見た目、だいたい10代後半くらいだ。

 しかもエルフは長寿なイメージがある。


 だからこいつ、結構年いってるはずなのだが……。

 えへへて……。


「エルフェリス」

「エリス♡ と! サイガ殿!」


 押しが強い……。

 まあ、エルフェリスは長いからな。


「わかった。エルフェリス」

「がくぅ……ま! これから仲良くなっていけば良いですね! いつかエリスと呼ばせて見せます! ダーリン♡」

「やめろ、切実に」


 変な女につきまとわれるようになったかもしれん……。


「エルフェリスは、こんなとこで何してたんだ?」


 まあ自分で言うのもあれだが。


「ダンジョン攻略に来ておりました。私、実は冒険者なのです」


 冒険者。

 ファンタジーでは定番だな。


 どんな職業を聞くと、だいたいネット小説などで聞くようなのと、同じ職業だった。


 依頼を受けて、モンスターを狩ったり、アイテムを集めてきたりするのだと。


「おまえ一人でか?」

「はい!」


 ……こいつはバカなのか?

 こんな危険な場所に一人で来て……?


「私、ソロで活動してるんです」

「一人でいる理由は?」


「別にソロにこだわってるわけではないのですが……。私と肩を並べて戦える人って、そうはいなくて」


 ふぅん……。

 こいつじゃあ、結構強いのか。妖刀もこいつのこと、高位の魔法使いっていっていたものな。


「なので! ダーリンに出会えたのはラッキーでした♡ こんなにもお強い人と出会えるなんて!」

「ダーリンっていうんじゃねえ。つーか……何を持って強いって言ってるんだよ?」


「? そんなにも強力な呪物を複数、装備してるおかたが、弱いわけ無いですよね?」


 まあ、それはそうか。

 いや、待て。


「どうして呪物ってわかる?」

「私、鑑定スキル持ちですので!」


 ……鑑定スキル。あれか、見た物の情報がわかるってやつか。

 そっか……こいつ、鑑定持ちだったか……。


『わはは! 残念だなぁおまえ様よぉ。こいつを食っておけば、鑑定スキルが自分のものになったのになぁ!』


 ……捨てるぞ、地下に。

 

「ダーリンのためなら、鑑定バンバン使いますので! 言ってくださいね!」

「ああ……というか、ダーリンはやめろ。さっきからなんなんだ、俺はおまえの夫になるなんて一言も言ってないだろうが」


 するとエルフェリスは目を♡にして、体をくねらせる。


「いいえ、私は貴方の妻になります! 私……夫となる強いかたをもとめ、エルフ国アネモスギーヴを出たのです」


 エルフの国なんてあるのか……。

 嫁探しならぬ、婿捜しで冒険者やっていると……。変なやつだ。


「私は夫に尽くすタイプの妻を目指しております! 何でも言ってくださいね!」

「じゃあ俺のそばを離れてくれ」

「それ以外で!」


 はぁ……。

 やれやれ、変な女に執着される羽目になった。


『役得では無いか。美人で強いエルフの冒険者の嫁なんて、欲しくても手に入らないぞ』


 やかましいわ。

 ったく……。


 俺はエルフェリスに言う。


「おいエルフェリス。おまえは何ができる?」

「はい! ベッドで殿方を喜ばせる術はたたき込まれて……」

「何言ってるのおまえ!? 戦闘面で、何が出来るんだって聞いてんだよ!」


 なんだよ、ベッドで殿方を喜ばせる術って……。

 どこでそんなもん、習うんだよ……。


「でしたら、魔法と剣術、どちらも得意です。私、魔法剣士なので!」


 ほぅ……魔法剣士か。

 前衛で戦い、敵を引きつけてくれる役だ。


 そのほうが後ろから銃で敵を狙い撃ちしやすい。

 良いおとりが出来たな。って、ん?


「おまえ武器は?」


 魔法剣士なら、杖や剣があるはずだが。


「あー……その、食われてしまいました」

「食われた……?」

「はい。高い魔法剣を使っていたのですが、魔物に……」


 どういうことだ?


『魔物はより多くの魔力を体内に摂取しようとする性質があるのだ。この女が使っていた魔法剣にも、おそらく大量の魔力が内包されていたのだろう』


 なるほど、だから武器を魔物に食われた訳か。


「申し訳ないです……サイガ殿。武器がないと私、本来の実力を出せないのです」


 魔法剣がなくても魔法は使えるだろうが。

 しかし、後衛は要らないんだよな。


 前でおとりになって欲しい。

 となると、こいつには剣を持たせておくか……。


 俺は黒衣ブラックウーズ・コートから、さっき拾った剣を取り出す。

 ボロボロでさびついた、剣だ。


 まあここで死んだ冒険者のものだからな。

 劣化してても当然。


「うーん……この剣では、私の全力には耐えられないですね」


 注文の多い女だ……。

 ふと、思いついたことを実践してみようと思う。


 俺は幸運銃トリガー・ハッピーを取り出し、銃口をさびた剣に向ける。


「【唯一無二】、付与」

『唯一無二……?』


 ずがんっ!

 銃弾がさび付いた剣にぶつかった瞬間……


 かっ……!

 ピカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


「おお! この黄金の輝き……! も、もしやこれは……伝説の聖剣! エクスカリバー!?」


 錆剣は一転、黄金の剣へと変化した。


『ははは! なるほど。【唯一無二】か。対象を文字通り、この世に二つと無いレアアイテムにするスキルか! 破格だなぁ!』


■唯一無二:常時発動型。消費MP3000。ランダム成功。


 俺のレベルは現在、332。最大MPは3320だ。

 発動できたが、結構MPを食うな、このスキル。


 俺はアイテムボックスからサソリの肉を取り出し、食ってMP回復しておく。


「サイガ殿! 鑑定で調べたところ、この剣は本物の伝説の武器、エクスカリバーでした!」

「それならおまえの全力に耐えられるだろ?」


「はい……ですが、問題が……」

「問題……?」

「はい。実は、伝説の武器は、使い手を選ぶのです」


 使い手を選ぶ……。 

 なるほど、ネット小説とかでも、伝説の武器は使えるやつが限られてたもんな。


「おまえじゃ使えないのか?」

「はい……おそらく、勇者ではないと……」


 ちっ……!

 勇者か。つまり、俺と一緒に転生していったやつら。あいつら専用武器ってことか。


 むかつくな。


「問題ない」


 俺は銃口をエクスカリバーに向ける。

 そして……。


「スキル付与」


 ズガンッ!

 銃弾を撃ち込んだ瞬間……。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「おおお! せ、聖剣が……まばゆい太陽のように輝きだしました! 手になじむ……まさか! わ、私が使い手となったのですか!?」


『その通りだ……信じられん! 勇者で無い人間が、神器を扱えるようになるなんて! 聞いたことが無いぞ!』


 なんで妖刀のやつが驚いてるんだ?

 ああ、刀鍛冶だったんだっけか、前世は。


『どうなってるのだ!? 何をしたのだおまえ様よ!』

「【無条件】、を付与したんだ」


『無条件! そ、そうか! なるほど! そういうことか!』


 装備できる人間に限りが……条件があるならば。

 無条件を付与すれば、その条件が消える。


「すごいです! すごすぎですよ、ダーリン! 伝説の武器を作り、そして装備できるようにするなんて! 本当にすごいです!」


 ……なんだか、据わりが悪いな。

 

「さっさと行くぞ」

「はい! やっぱりダーリンをダーリンに選んで、正解でしたっ! 絶対に離しませんからねっ!」

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