第10話 地下でお宝ゲット



 死蠍デス・スコーピオンを討伐し、モンスターハウスをクリアした。

 ブラックウーズに、サソリどもの死骸をすべて回収させておく。


 魔物の死骸は、今の俺にとって貴重な回復薬だからな。

 さて。


 とりあえずサソリを食ってみるか。

 魔物食いは、まあ、味は良いんだが、ビジュアルの面で問題がある。


 それと、調理方法だな。

 今のところ生食しかしてない。無毒スキルのおかげで腹をくださないとはいえ、俺は日本人だ。肉の生食はしたくないのである。


 せめて調理道具があれば……。火でも……いや、ないものをねだってもしょうがないな。


 サソリの前へとやってきた。

 腕を銃でぶっ飛ばし、前腕を手に取る。


 硬そうな外皮につつまれているため、このままじゃ食えないな。

 中の部分を手で摘まんで引きちぎる。


「エビみたいだ」


 おそらく筋繊維だろうそれを、俺は口の中に入れる。

 食感は完全にエビだった。


 味は……淡泊だな。

 悪くは無い。伊勢エビ的な食感だしな。だが、味がないのがな。


 ほどなくして、俺はサソリを食い終わる。


「ステータス展開オープン


~~~~~~

スキル一覧

・【無】レベル2

・スロット+1

・毒息吹

・毒突き

~~~~~~


『おお、みろおまえ様よ。【無】のレベルが上がっているな』

「ああ……これで【無】は3つまで、セット可能になった」


 今まで無毒+何か、だったので、いちいちセットが面倒だったのだ(変えるたびにMPを消費するし)。

 これで【無】のスキルを3つセットできる。


 たとえば【無視】【無音】で完全ステルス状態にするとかな。


「しかしあんだけ魔物倒して、やっと【無】レベル2か……」


 結構レベル上げるのに、時間かかりそうだ。


『仕方あるまい。強力なスキルなのだ。レベルを上げるのに必要な経験値は多くなるのは必定』


 そういうもんか。

 まあポケ●ンとかもそうだよな。ドラゴンタイプは強いが、レベル上げるのに結構苦労する。


「毒突きってのが、死蠍デス・スコーピオンの持っていたスキルっぽいな」

『うむ。溶解毒を付与させた、強烈な一撃をお見舞いする、攻撃スキルだな』


「攻撃スキル?」

『まあ必殺技のようなものだ』


 壁際まで移動する。

 俺は妖刀を手に持って、毒突きを発動させる。

 スキル発動を念じると、俺の腕が、自分でも目で追えない速度で動いた。


 ドスッ……!

 すさまじい早さの刺突。


 部屋の壁に、妖刀の刀身が完全に埋まっていた。


『いかに堅い敵であろうと、敵の外皮を貫く、強烈な一撃をお見舞いするようだな』


 なるほど。しかも、妖刀自身のもつ毒も相まって、突き刺したら相手を即死させられる……。


「妖刀+毒突きのコンボ、なかなか使えるな」

『持ってて良かったであろう、妖刀。幸運銃トリガー・ハッピー+特殊弾では、火力が足りないだろうからなぁ』


 まあ妖刀ってしゃべるくらいで使い道に乏しかったからな。

 毒突きコンボが使えるなら、まあこの先もこの妖刀を捨てずに持っててもいい。


「とりあえず魔物も食えたし、死骸も回収できた。出口を探すか」

『まあ待てよ、おまえ様。もう少し探索をした方が良い。面白いものが手に入るぞ』


 ……面白いもの?

 俺は反響定位で周囲を調べる。すると……。


「………………」

『ほら、面白いだろう? 魔物に敗北した冒険者の、死体だ』


 ……妖刀のやつが実に愉快そうに言う。趣味の悪いやつだ。

 人間の死体が、壁によりかかるっている。


 かなり時間が経過したのか、白骨化していた。

 よく見ると、骸骨があちこちに転がっているのがわかる。


 みんなあの悪辣なトラップにひっかかり、サソリどもに食われてしまったんだな。


「…………」


 ふと、俺の脳裏に一つの可能性がよぎる。

 魔物を食らい、魂を吸収すると、強くなる。

 ならば……人を喰らえば……。


 ……いや。


『なんだ、人間を食べてレベルアップとか言わないのだな』

「あほか。魂を吸収しないと、意味ないんだろ?」

『くく……そのとおり。きちんと覚えていたのだな』


 ただ死体を食べれば強くなれるわけじゃ無い。

 魂がまだ抜け落ちていない、新鮮な死骸をたべないと、意味が無いのだ。


 そこらに転がっているのはすべて白骨化死体。

 魂なんぞとっくに抜け落ちているだろう。食べても意味ないし、俺はできれば、人を食いたくない。


 死体はこのまま放置しよう……いやまて。


「何か持ってるぞ……?」


 死体の手には1本の錆にまみれたナイフが握られている。


『気をつけろ。呪物だ。天然のな』

「? どういうことだ? 天然のって」

「生者が持っていたもちものに、死後、強い念がこもり、呪物となるケースがあるのだ」


 なるほど、物に怨念が染みつくことで、呪物となる……か。

 天然じゃ無い呪物はどうやって作られるんだろうか。まあ……特に興味はないが。


 こいつが呪物であるならば、触れるとやばいデメリットが発生するだろう。

 が、俺は無毒スキルがある。


 呪物はどれも強力だ。

 持っていて損はないだろう。


「悪いな、もらうぞ」


 俺はさび付いたナイフを手に取る。


『ふむふむ……どうやらこいつには、この男の持っていたスキル、【上級解体】が宿っているようだな』

「上級解体?」


『非生物を対象として、相手を解体し、素材を獲得することができるというものだ』

 

 なるほど。

 なんとなくわかった。物は試しだ。死蠍デス・スコーピオンに使ってみるか。


 俺は死蠍デス・スコーピオンの死骸に、ナイフをさくり、と突き立てる。

 ぼんっ! という音とともに、サソリが身の部分と、外皮に分かれた。


「おお、助かる。サソリを食うのに、結構苦労したからな」


 中身ほじくり出すのが面倒だったのだ。

 ん? 待てよ?


「これがあれば……ミミックも……食えるんじゃ無いか?」

『魂が残っていればな』


 俺は急いで黒衣ブラックウーズ・コートに保存していた、ミミックの死骸を取り出す。

 ミミックの蓋にナイフを突き立ててた。

 ぼんっ! という音とともに、宝箱と、そして……。


「なんじゃこれ……?」


 ホタテの中身みたいなもんが、箱の隣に出現したのだ。


『それがミミックの本体だ。本来ミミックは堅い空の箱の隙間に、本体となる中身が入ってるものだ』

「甲殻類みたいなもんなのか」


 なるほどね。

 さっきは堅い殻(宝箱)に入ってて、ミミックが食べれなかったが、上級解体のおかげでミミックを食べれる。


「そうだ、じゃあ鋼鉄牛も……ああ、くそ、ブラックウーズに食わせてしまった」


 まあいい、また出現するだろう。そんときは倒して、このナイフで解体し、食べれば良い。

 俺はホタテ……もとい、ミミックを食べる。

 本当にホタテみたいな味と食感がした。バター醤油で焼けば美味かっただろう。


 ステータスを確認。


~~~~~~

スキル一覧

・【無】レベル2

・スロット+1

・毒息吹

・毒突き

・完全保存

~~~~~~


「完全保存を獲得した。なんだ、これは?」

『仕留めた獲物を、完全な状態で半永久的に保存できるスキルのようだな』


「完全な状態で保存……鮮度が落ちないってことか」

『そんなレベルでは無いぞ。生物の魂を長く、その器たる肉体の中に保存しておけるのだ』

「! なるほど……つまり、今後は倒した死骸を、いつ食べても、魔物からスキルが獲得できるってことか」


 言うまでも無いが、人間には食べれる量に限度というものがある。

 たくさん魔物を倒したとて、食べなければスキルを獲得できない。


 今までは食べようと思ったときにはすでに魂が抜け落ちてるって場面が結構あった。

 けれど、今後はいつ食べても、スキルを獲得できる。地味に助かるスキルだ。


『ほかにもこの部屋で死んだ奴らがいるみたいだぞ』

「よし……じゃあ、物色した後に、出発だ」


 反響定位を使い、すでに外へつながるルートは確保ずみである。

 俺は近くに落ちてる死骸を調べまくることにしたのだった。

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