第25話 契約したっけ?

「ガルムッ!!!!」


 私がおびえて身をすくめたその時に。

 海底ダンジョンの地を駆け抜けてくる猟犬の姿があった。

 ガルムと呼ばれた猟犬はサメ型モンスターに体当たりを食らわせて、私に牙が届く寸前で撃退してくれる。


「び、びっくりした~」


 私がへなへなと座り込むと、猟犬は「ご無事で何よりです」と人語をしゃべった。


「あゆみ、大丈夫か?」


「と、トウヤ? どうしてここに?」


「おまえの帰りが遅いから様子を見に来たんだ。アサカ先輩もいっしょだ」


 見るとアサカ先輩がレッドちゃんを抱きかかえて通路を走ってきている。

 先輩はあまり運動が得意でないらしく、息を切らせているようだ。


「あ、ありがとう」


「別に……大したことじゃない。それよりフェータン。これはどういうことだ?」


 トウヤが厳しい面持ちでフェータンをにらむ。


「おまえはあゆみの専属モンスターだったな? なぜあゆみの危機を見逃した? 答えろ」


「ちょ、ちょっとトウヤ? フェータンも神様じゃないんだから……」


「違う。契約を結んだモンスターは絶対服従だ。おまえは本当に契約を結んだのか?」


 言われてみれば……私はふと思い返す。

 そういえば私、フェータンと主従の契約を結んだっけ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る