第24話 昔のことを

「あゆみ殿は、昔のことをおぼえていらっしゃいますかな」


 昔のこと? どのくらい昔のことなのかな?


「ずっとずっと昔のことです。この世に生まれたばかりのころの話、ひょっとしたらそれより前の話ですぞ」


「え~、赤ん坊のころの記憶があるかって話? さすがに覚えてないかな~」


 それよりも前なら前世の話?

 私は輪廻転生を信じていないから……というかあんまり宗教を信じていないから、その手の話題には疎い。


 スピリチュアルで救われる人がいるなら、それはそれで尊いと思うんだけどねえ。

 私個人としては宗教的な話題には気が進まないのが正直なところよ。


 そんなふうに話題をはぐらかす。


「ふふふ、あゆみ殿は現実主義者ですな。しかしこの世界にはすばらしい運命があります。運命のもとでこそ、人は輝けると知っておくべきですぞ」


「ん? なに~? 新手の宗教勧誘? ちょっとノーセンキューよ」


「……これは失礼いたしました。さ、そろそろ散歩を切り上げましょう」


 フェータンは私とすれちがうようにして来た道を戻る。

 そのときに見たフェータンの表情は、笑顔ではなく真顔だった。

 いつも笑っているフェータンにしてはめずらしい。


 なんて思っていると――


「モンスター!?」


 フェータンの死角、私がいる方向へとサメ型のモンスターが突っ込んできた!?

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