第14話 勝つのは私だ!

 後手同桂成 先手同金上 後手6六銀 先手同金左 に……くらえ必殺の後手7六銀 よ!

 どんなもんよ! ここでトウヤの手が止まった。


「おっと銀捨てですな。取ったらどうなるんですかな?」


「取ってしまった場合、後手6七銀が厳しいわねえ。ほとんど決め手だわ。ここは守るしか……いや、守っても、勝負ありかしらね」


 トウヤは長考の後、先手7八銀 とした。

 私は間髪入れずに 後手6七銀成 だ。

 先手同銀 後手6八銀 先手7八銀打 後手6五金 に、先手7七桂。

 ぐぬぬ~しぶとい~、ミスして駒を渡したら私の方が詰まされそうだしな~


 いや、弱気になるな。勝つのは私だ!

 後手6六金 先手同銀 後手同角 先手6七金 後手5九銀打 先手同飛 後手同銀不成  先手7九銀……ずいぶん粘ってくれたけど、後手4四角!


 よーし、これで飛車角を取り上げられたし、相手の手持ちは桂馬と歩だけ。

 ここから先はよほど私が大ポカをしない限り逆転できないと思う。


 トウヤもそれがわかっているのだろう。

 少しだけ考えるそぶりを見せた後に、「負けました」と投了の意思を示した。


「「ありがとうございました」」


 よ、よっしゃ~、勝った! 勝ったぞ! 激戦を制したのは私だ!


「そ、それにしても、あんた強くない? こんなに粘られたの初めてだわ」


「俺も攻めが甘かった。反省しよう。軟弱者は俺の方だったな。すまなかった」


 それはもう、謝らなくてもいいんだけどさ……

 戦いを終えた私たちは、すっかり打ち解けた気分で笑いあった。

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