第11話 膠着ですぞー
「あゆみ殿は角交換を拒否ですな。これはもう相矢倉ですかな」
「ええ、先手8八玉 後手2二玉 先手7八金 後手3二金、ふたりとも今時めずらしいくらい綺麗に矢倉を組んでくれたわねえ。おねえさんうれしいわ」
解説陣が和気あいあいとしている。
はた目に見るには楽しいだろうけど、ゲームのプレイヤーとしては、膠着した状況を打破する術を考えるのに忙しくてやきもきする。
先手3七銀 後手5四歩 先手2六銀 と、トウヤが銀を進出させる。
後手1四歩 先手1六歩 とお互いに端歩をついて、ひと段落。
後手4五歩 先手3七角 と、一度うっとうしい角を追い払い、後手4四銀。
「あゆみ殿が形を少し崩しましたな」
「隙ができたわね。これが誘いなのか、トウヤくんが踏み込むのか見ものだわあ」
結論から言うとトウヤは鋭く攻め込んできた。先手1五歩 だ!
だけど、後手同歩 に……先手同香としたのは、ちょっと私を侮ったかな?
後手1三歩 できれいに守りを固める。ここから攻めるのは無理筋でしょう~?
と余裕しゃくしゃくでいたら、先手2四歩!? え、ホントに攻めてきた!?
解説陣も黙って戦況を見守る。
後手同歩 先手2五歩 後手同歩 先手同銀 後手2三歩
ぐ、ぐぬぬ、攻め込まれた。なんかまずい気がする。
そしてここで、先手1三香不成! 強い攻め手が続く……
落ち着け私、気迫にのまれて相手の手に乗ったら、負けだ。ここは……
「おっと、あゆみ殿、後手同桂 ですな」
「あら、冷静ね。個人的には玉で取ってくれたらおもしろかったけど、ふふふ」
そんな危なっかしい手は怖くて指せないし……
さあ、まだまだ! 勝負はここからよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます