第10話 居飛車VS居飛車

 私は後手3四歩で応じる。

 まあ将棋を知っている人はわかると思うけど、定石中の定石よね。


 先手2五歩 後手3三角 先手7六歩 後手4四歩と続き、私が角道をふさぐ。

 そこでトウヤは少し考えるそぶりを見せてから、先手4八銀とする。

 ここまではどちらも定石、トウヤは居飛車で確定。

 私は居飛車にも振り飛車にもできる状態だけど……ここは、後手3二銀。


 あと一手保留させてもらおうかな。急戦模様なら振り飛車でもいいし、そうでなければ相居飛車で真っ向勝負とまいりましょう……と思っていたけど、続くトウヤの先手5六歩で私の心は決まる。おっけー、相手が王道を貫くなら、私も堂々とこたえましょう。

 後手4二玉 先手6八玉 後手3一玉と続けて、私は玉を盤面左に移動させる。


「おっと、相居飛車のもようですなー、あゆみ殿は左美濃囲いで早く形を決めましたぞ」


「そうねえ、ここまではよく見る進行だけど……続く先手7八銀 後手5二金右 先手7七銀 と、先手のトウヤくんは矢倉かな? うふふ、これは相矢倉がみられるかもしれないわねえ」


 解説陣がのんきに実況している。戦意をそぐのはやめていただきたい……

 後手6二銀 先手7八玉 後手4三金 先手5八金右と続き……後手8四歩。

 私もそろそろ攻めに着手しよう。

 先手7九角 後手8五歩 先手3六歩 後手7四歩。

 おだやかな進行が続くと思っていたら……ここで先手4六角!


「ふーん?」


 角交換を狙う前に、飛車を脅してくるわけね? まあここは想定内よ。

 後手7三桂 と防ぎ、先手6六歩 後手4二角 と私が角を引く。

 ここで角交換してくれるかな? と思っていたけど、続く手は先手6七金だった。

 ほうほう、急戦でなく、じわじわ削りあう持久戦をご所望ってわけ?

 私は内心でニンマリと笑みを浮かべて、後手3三銀とした。


 上等よ! 実力勝負で、たたきのめしてやるわ!

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