このエピソードを読む
2024年5月15日 20:15 編集済
白紙だった。何も書いていない、クシャクシャした紙だ。翔が僕にくれた紙は、手紙でも遺言でも伝えたい事でもなく、白紙だった。「え、これって白紙なんですけど」 翔の母は淡々と言った。「あなたなら分かるって、あの子が言ってたの。だからこの謎を解いて欲しい。私には理解が出来ないの、なんであの子が自殺をしたのか、あなたに渡す紙がまっさらの白紙なのか」 翔の母は糸が切れたかのように泣き崩れた。「意味がわからないの! なんであの子が自殺なんてするの!!」 人前では泣かないようにと我慢していたものが、全て崩れたようだった。 僕も、思いっきり泣きたかった。友達が自殺して泣きたかったけど、それよりも謎が残っていた。どうしても理解出来なかった。翔が自殺したと聞いた時、頭が真っ白になった。 唯一の友達だった。内向的で人見知りな僕に話しかけてくれたのは、隣の県から引っ越してきた翔だった。こんな性格の僕を、今まで引っ張ってくれたのは翔だった。翔は友達が多かったけど、学校から帰る時は必ず僕と一緒に家に帰ってくれた。 ――もう嫌だ。 僕の、たった一人だけの友達がいなくなった。また孤独になる。規則どおりに動く機械のように、淡々と日々を過ごすことになる。そんな日々を終わりにしてくれた翔が死んだ。 自分を落ち着けるように呼吸をするが、嗚咽が止まらなかった。しばらくの間泣き続けた。こんなにも泣いたのは初めてだ。泣き疲れた。もう泣きたくない。 他のことを考えようとしても、翔の笑顔が頭に浮かぶ。もうその笑顔は見られない。 しばらくして落ち着いてきたので、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも、翔の母に伝えた。「すみません、僕にもまだ理解が出来ないんですけど、必ずこの謎を解きます」 確信は出来ないけど、少しでも翔の母を落ち着かせるために嘘をつく。「心当たりがあるのでその子に話を聞いてきます」 すると翔の母は少し落ち着いて言った。「ありがとう」 優しい笑顔を見せた、翔とそっくりの優しい笑顔だった。 外を見ると暗くなっていた。翔の家に着いたのが夕方ぐらいなので、だいぶ時間が経ったのだと分かる。――今日はもう家に帰ろう。 翔の母にもう帰ることを伝えて、玄関を出た。もう外は真っ暗だった。スマホの時計を見ると八時十六分だった。――もうそんな時間か。 先が見えないような、僕の人生を表している夜の暗さだ。いつもと変わらない夜なのに、今日は一段と暗い。――目に見える景色は同じなのに。 家に着いて、そのままベッドに入った。風呂も入らず、夕飯も食べずに今日はそのまま寝よう。 明日も学校だ、どんなに辛いことがあってもどんなに泣いても、明日は必ずやってくる。呼んでもないのに明日が来るなんて理不尽だ。死にたいけど死にたくない。僕が今まで生きてきた理由がわからなかった。 この家にはずっと一人でいる。僕が三歳の頃、両親は死んだ。交通事故で僕だけ生き残り、それからずっと一人で生きてきた。 学校から配られる保護者に見せる紙も自分でサインした。音読カードも自分でサインをした。ご飯も毎日1人で作った。家に帰ると暖かい夕飯と「おかえり」という声が聞こえるのではない。 ドアの閉まる音と溜まっている洗い物、干しっぱなしの服の生乾きの匂い。それが僕の毎日だった。これが普通だった。それなのに翔がそれを壊した。 人と関わる楽しさをくれた。翔のくだらない話が好きだった、初めて食べた暖かい家庭のご飯、初めて行ったゲームセンター。翔は僕に色んな初めてをくれた。――それなのに翔はもう。もう、考えることをやめよう。 泣きたくなかった。これ以上泣いても翔は戻ってこない。夜は嫌いだ。ネガティブになってしまう。 これ以上、夜の闇に落ちないように、僕は腫れた目をそっと閉じた。――――――――――――――――――――――――――――――①数字は漢字に直す1,2,3→一、二、三8時16分→八時十六分1200円→千二百円②「」の前はスペース無し③段落が変わると(改行すると)、スペースを入れてからはじめる※「」や――は例外である④――は、主人公の独り言や、やっと口を開いたときの表現に使える⑤文章の終わりは。で統一する。 それなのに翔はもう。考えることやめよう、もう泣きたくなかった。↓――それなのに翔はもう。考えることをやめよう。 もう泣きたくなかった。――――――――――――――――――― ここはネット小説なので書き方はそんなにこだわらなくてもいいかもしれません。文学寄りのものを書きたいなら、このようなルールを守った方が読んでもらいやすいです。 相変わらず素敵な味のある文章です! お互い、頑張りましょう🐰
編集済
白紙だった。何も書いていない、クシャクシャした紙だ。翔が僕にくれた紙は、手紙でも遺言でも伝えたい事でもなく、白紙だった。
「え、これって白紙なんですけど」
翔の母は淡々と言った。
「あなたなら分かるって、あの子が言ってたの。だからこの謎を解いて欲しい。私には理解が出来ないの、なんであの子が自殺をしたのか、あなたに渡す紙がまっさらの白紙なのか」
翔の母は糸が切れたかのように泣き崩れた。
「意味がわからないの! なんであの子が自殺なんてするの!!」
人前では泣かないようにと我慢していたものが、全て崩れたようだった。
僕も、思いっきり泣きたかった。友達が自殺して泣きたかったけど、それよりも謎が残っていた。どうしても理解出来なかった。翔が自殺したと聞いた時、頭が真っ白になった。
唯一の友達だった。内向的で人見知りな僕に話しかけてくれたのは、隣の県から引っ越してきた翔だった。こんな性格の僕を、今まで引っ張ってくれたのは翔だった。翔は友達が多かったけど、学校から帰る時は必ず僕と一緒に家に帰ってくれた。
――もう嫌だ。
僕の、たった一人だけの友達がいなくなった。また孤独になる。規則どおりに動く機械のように、淡々と日々を過ごすことになる。そんな日々を終わりにしてくれた翔が死んだ。
自分を落ち着けるように呼吸をするが、嗚咽が止まらなかった。しばらくの間泣き続けた。こんなにも泣いたのは初めてだ。泣き疲れた。もう泣きたくない。
他のことを考えようとしても、翔の笑顔が頭に浮かぶ。もうその笑顔は見られない。
しばらくして落ち着いてきたので、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも、翔の母に伝えた。
「すみません、僕にもまだ理解が出来ないんですけど、必ずこの謎を解きます」
確信は出来ないけど、少しでも翔の母を落ち着かせるために嘘をつく。
「心当たりがあるのでその子に話を聞いてきます」
すると翔の母は少し落ち着いて言った。
「ありがとう」
優しい笑顔を見せた、翔とそっくりの優しい笑顔だった。
外を見ると暗くなっていた。翔の家に着いたのが夕方ぐらいなので、だいぶ時間が経ったのだと分かる。
――今日はもう家に帰ろう。
翔の母にもう帰ることを伝えて、玄関を出た。もう外は真っ暗だった。スマホの時計を見ると八時十六分だった。
――もうそんな時間か。
先が見えないような、僕の人生を表している夜の暗さだ。いつもと変わらない夜なのに、今日は一段と暗い。
――目に見える景色は同じなのに。
家に着いて、そのままベッドに入った。風呂も入らず、夕飯も食べずに今日はそのまま寝よう。
明日も学校だ、どんなに辛いことがあってもどんなに泣いても、明日は必ずやってくる。呼んでもないのに明日が来るなんて理不尽だ。死にたいけど死にたくない。僕が今まで生きてきた理由がわからなかった。
この家にはずっと一人でいる。僕が三歳の頃、両親は死んだ。交通事故で僕だけ生き残り、それからずっと一人で生きてきた。
学校から配られる保護者に見せる紙も自分でサインした。音読カードも自分でサインをした。ご飯も毎日1人で作った。家に帰ると暖かい夕飯と「おかえり」という声が聞こえるのではない。
ドアの閉まる音と溜まっている洗い物、干しっぱなしの服の生乾きの匂い。それが僕の毎日だった。これが普通だった。それなのに翔がそれを壊した。
人と関わる楽しさをくれた。翔のくだらない話が好きだった、初めて食べた暖かい家庭のご飯、初めて行ったゲームセンター。翔は僕に色んな初めてをくれた。
――それなのに翔はもう。もう、考えることをやめよう。
泣きたくなかった。これ以上泣いても翔は戻ってこない。夜は嫌いだ。ネガティブになってしまう。
これ以上、夜の闇に落ちないように、僕は腫れた目をそっと閉じた。
――――――――――――――――――――――――――――――
①数字は漢字に直す
1,2,3→一、二、三
8時16分→八時十六分
1200円→千二百円
②「」の前はスペース無し
③段落が変わると(改行すると)、スペースを入れてからはじめる
※「」や――は例外である
④――は、主人公の独り言や、やっと口を開いたときの表現に使える
⑤文章の終わりは。で統一する。
それなのに翔はもう。考えることやめよう、もう泣きたくなかった。
↓
――それなのに翔はもう。考えることをやめよう。
もう泣きたくなかった。
―――――――――――――――――――
ここはネット小説なので書き方はそんなにこだわらなくてもいいかもしれません。文学寄りのものを書きたいなら、このようなルールを守った方が読んでもらいやすいです。
相変わらず素敵な味のある文章です! お互い、頑張りましょう🐰