第2話 謎

白紙だった。何も書いてない。クシャクシャした紙

なぜ、翔が僕にくれた紙は手紙でも遺言でも伝えたい

事でもなく白紙。

僕の目には狂いは無いはずだ。

「え、これって白紙なんですけど」

翔の母は淡々と言った

「あなたなら分かるってあの子が言ってたの、だからこの謎を解いて欲しい」

「私には理解が出来ないの、なんであの子が自殺をしたのかあなたに渡す紙がまっさらの白紙で」

翔の母は糸が切れたかのように泣き崩れた。

「意味がわからないのなんであの子が自殺なんてするの!!」

人前では泣かないようにと我慢していたものが全て崩

れた。


思いっきり泣きたかった。友達が自殺して泣きたかったけど、それよりも謎だった。

自分にも理解が出来なかった。翔が自殺したと聞いた時頭が真っ白になった。

唯一の友達だった。内向的で人見知りな僕に話しかけてくれたのは。隣の県から引っ越してきた翔だった。

こんな性格の僕を今まで引っ張ってくれたのは翔だった。


翔は友達が多かったけど学校から帰る時は必ず僕と一緒に家に帰った。もう嫌だ。

僕の1人だけの友達がいなくなった、また孤独になる。

規則どおりに動く機械のように淡々と日々を過ごす

そんな日々を終わりにしてくれた翔が死んだ。

自分を落ち着くように呼吸をするが、嗚咽が止まらなかった。しばらくの間泣き続けた。こんなにも泣いたのは初めてだ。泣き疲れた。もう泣きたくない。

他のことを考えようとしても翔の笑顔が頭に浮かぶ。

もうその笑顔は見れないのか。


しばらくして落ち着いてきたので涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも翔の母に伝えた。

「すみません、僕にもまだ理解が出来ないんですけど、必ずこの謎を解きます」

確信は出来ないけど少しでも翔の母を落ち着かせるために嘘をつく。

「心当たりがあるのでその子に話を聞いてきます」

すると翔の母は少し落ち着いて。

「ありがとう」

優しい笑顔を見せた、翔とそっくりの優しい笑顔。

外を見ると暗くなっていた。翔の家に着いたのが

夕方ぐらいなのでだいぶ時間が経ったのだと、


今日はもう家に帰ろう。

翔の母に帰ることを伝えて、玄関を出た。

もう外は真っ暗だったスマホの時計を見ると8時16分

そんな時間か、先が見えないような僕の人生を表している夜の暗さ。いつもと変わらない夜なのに今日は一段と暗い。

目に見える景色は同じなのに。


家に着いてそのままベットに入った。

風呂も入らず夕飯も食べずに今日はそのまま寝よう。

明日も学校だ、どんなに辛いことがあってもどんなに

泣いても、明日は必ずやってくる。

呼んでもないのに明日が来るなんて理不尽だ。

死にたいけど死にたくない。

僕が今まで生きてきた理由がわからなかった。

この家にはずっと1人。生まれて3歳で両親は死んだ。

交通事故で僕だけ生き残った。ずっと1人で生きてきた。


学校から配られる保護者に見せる紙も自分でサインした。音読カードも自分でサインをした。

ご飯も毎日1人で作った、家に帰ると暖かい夕飯と

「おかえり」という声が聞こえるのでは無い

ドアの閉まる音と溜まっている洗い物、

干しっぱなしの服の生乾きの匂い。それが僕の毎日だった。これが普通だった。

それなのに翔がそれを壊した。

人と関わる楽しさをくれた。翔のくだらない話が好きだった、初めて食べた暖かい家庭のご飯、初めて行ったゲームセンター。翔は僕に色んな初めてをくれた

それなのに翔はもう。考えることやめよう、

もう泣きたくなかった。これ以上泣いても翔は戻ってこない。

夜は嫌いだ。ネガティブになってしまう。

これ以上、夜の闇に落ちないように僕は腫れた目を

そっと閉じた。





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