鈴⑥ いつも通りの俺達

 意気込んですずの家に行って、思ってた百倍すんなり部屋に通された。

 なんか、意外といったら失礼かもしれないけど冷静で調子が狂ってしまう。

 計画性とか投げ捨てて来たからどういう風に会話を持って行けばいいか分からない。


「ここ、座る? 話をしにきたんだよね」


 女の子の部屋に入ってベッドに腰掛けるという高難易度ミッションに成功。ただしそれは連続ミッションの始まりにすぎない。

 カーテンは水色、木目調のベッドに勉強机と本棚。クローゼットもある。

 壁には大きく花が咲いているカレンダーやキラキラした小物をとめてあるコルクボード。見覚えのあるグソクムシ。

 俺の部屋にはないものがたくさんある。


「あー。えとっ。じゃあ、お邪魔します」


 あまりじろじろ見るものじゃない。

 となると俺の視線は必然鈴に向かう。


「あの、さ。手、繋がない?」


 また断られるのが怖い。

 でも、こんなよそよそしい距離感は嫌だ。

 俺と鈴の距離はもっと近い。


 今なら、という思惑がある。

 二人とも座っている状態なら足のあるなしは関係ない。

 だからこの状況で受け入れられなかったらいよいよ終わりだ。


 あれ?

 そういえば部屋だと義足してないんだ。

 まぁ自分の部屋なら動けなくなることもないか。


「良い、けど……」


 鈴が良いと言った瞬間に手を繋ぐ。

 けどに続く言葉はその後で良い。

 この温もりを感じれなかっただけで随分落ち込んでしまったけど、ようやくここまで戻ってこれた。


 幸い俺の手を振り払う様子はない。

 ちゃんと握り返してくれた。

 左手におなじみの感触が帰ってくる。嬉しさで涙が出そうだ。


「私達、どうなっちゃうんだろうね」


「別にこれで仲直りなんて考えてない。俺達は喧嘩した訳じゃないからね」


 最大の問題点はそこだ。

 俺達は思っていることを言葉にしなさ過ぎた。

 エスパーじゃないんだ。思っただけじゃ伝わらないのが当然。ちょっと上手くいってたからってそれは変わらない。


「だからちゃんと喧嘩して、ちゃんと仲直り……したい」


 仲直り前提とはいえこの状況で喧嘩となると別れ話に繋がりかねないことは重々承知の上。

 だけどこのままじゃどのみち自然消滅だ。


「俺はさ、今までこうやって手を繋ぎたい時はずっと鈴と手を繋げてたから鈴に拒否されて悲しかった。今まで当たり前だったのが無くなって足元が崩れ去ったみたいだったよ」


「仕方ないじゃん。そういう気分の時もあるよ」


「うん。どんな気分の時?」


「……今日の洋くん意地悪だ」


「一応喧嘩だからねこれ」


 田代さんから答えは聞いている。

 でも、鈴の口から直接聞いた訳じゃない。

 鈴の口から聞かないと意味がない。


「それは……感情が即座に言葉にできる訳ないじゃん。何か分からないけどつらかったの!」


「じゃあそのつらかったって気持ちだけでも俺にぶつければ良い」


 諦めたような笑顔を向けられてそのままさよならだなんて納得できるものか。


「それとも俺に感情をぶつけることはできないかな」


 鈴は俺じゃあ想いを受け止めることができないと判断した。

 なんというか、それが悔しい。


「だって。やだよそんなの」


 左手にかかる力が強くなる。

 なら良い感じだ。感情の高まりをそのまま言葉にしてほしい。


「たとえば田代さんならきっと鈴は好き勝手言ったと思うんだ」


 バーガーショップで言われたことを思い出す。

 鈴が自分の意志を無理矢理通すのは甘え方の一種らしい。

 あれ地味にマウントをとられた形になるんだよね。はい。気にしてます。


「だって鈴は田代さんなら我儘を受け入れてくれるって思ってるよね。このくらいじゃ関係が壊れない。たとえ喧嘩したとして仲直りできるって信じられるよね。俺はそれが羨ましい」


 失礼な話だと思う。

 だって、年単位で一緒にいた田代さんと出会ってまだ一月足らずの俺なら田代さんの方を信用して然るべきだ。

 つちかった絆の種類はともかく大きさで勝てる気はしない。


 それでも


「俺は鈴の彼氏だ」


 少しだけ大きな声。

 半分は自分に言い聞かせるためだ。


「だから鈴は嬉しかった時も楽しかった時も、悲しかった時も怒った時も口に出して良いんだよ」


「なら言わせて貰うけどさぁ」


 来た。


「今日は洋くんとキスをした大切な日なんだよ。洋くんにも今日をそんな日にしてほしかった。それをたかだか幻肢痛が起こったくらいで一人じゃ何もできない可哀想な娘を見るような目でこっち見ないでよ!!」


「心配するに決まってるじゃん。あんなに痛そうにしてたんだよ。なのに鈴はちょっとタンスの角に足ぶつけましたみたいな反応してさ。こっちは処理追いつかないよ」


「幻肢痛、痛かったよ。でも、痛いのが過ぎれば本当に何でもないの。だから痛いのが終わった後は変な気を遣わないでほしい」


「それを言ってよ。分かる訳ないじゃん。こっちは察する能力皆無なんだよ!」


「毎回毎回私の理想叶えてきたくせによくそんなこと言えたね! 私がどれだけ洋くんに救われたか知らないの!」


「知る訳ないだろ!」


「じゃあ何!? 普通にしてたら私の理想だったって言うの?」


「普通なもんか。こっちは鈴の可愛さに中てられてずっと舞い上がってたんだよ」


「私だってそう。素敵な彼氏ができて、ずっと欲しかった言葉をくれて、なんだって叶えてくれて」


 途中からちょっと聞いてられなくなったので左手を腰に回し、右手で顔を胸に抱き寄せる。

 ここで真っ赤になった顔を見られたら喧嘩じゃなくなってしまう。

 左手でトントンっと背中を叩き、少し落ち着かせる。


「いやなの。洋くんにあんな目で見られるの」


 鈴が涙声で訴えてくる。

 ようやく俺の前で泣いてくれた。


「今の俺はどんな感じ」


「今は、平気」


 今の俺は幻肢痛より鈴と別れなきゃいけないかもしれないことに怯えている。

 だから障害者としての鈴は表に出てこない。


 でもきっと、今日以降全くそんな目で見ないなんてことは不可能だ。

 可能だったなら今日は起こってない。


「そりゃ見ないでって言われたら努力はするけど実際無理だよ。俺はもうどうしても鈴のことをそういう目で見ちゃう。少なくとも、そんな瞬間はこれからも来る」


 腕の中の鈴がビクッと震える。

 こんな反応させたい訳じゃないんだけどなぁ。


「申し訳ないんだけど、等身大の俺は鈴の理想じゃない。精一杯そうでありたいだけの普通の高校生でしかないんだ」


 鈴にとって理想

 それはとても嬉しいし誇らしいことだけど過去形な時点でそこが俺の限界だ。

 背伸び自体はするけどそれで誤魔化せるようなものではない。


「だからそれ以上に一人の可愛い女の子として見るってのはどうかな?」


 完璧を約束できない以上どこかで妥協してもらうしかない。

 もし鈴が望む彼氏像がそれを赦さないなら俺達は乗り切れない。


「また幻肢痛が起こったら、デートは中止。今回みたいにタクシー呼んで鈴の家に帰るよ。心配だもん」


 今日の行動は大袈裟だっただけで間違いじゃない。

 過去に戻れたとしても、もっと上手くやりたいとは思うけどデートを中断するという結論は変わらない気がする。


「でも今度はそれで終わらせない。続きはおうちデートにしようよ。何やるか思いつかなかったら小さい頃のアルバム見せてもらうか一人ファッションショーやってもらうかの二択だね」


 ちょっと欲望がだだもれたけどここまでならやくそくできる。

 その二つなら幻肢痛のことなんて吹き飛ぶに決まってる。


「……その二択なら両方でも良いよ」


「マジか。無敵じゃん」


「だって今の私も過去の私も知ってほしい」


「うん。そうだね。俺も知りたい」


 なんというか。

 鈴って俺が思ってるよりずっと俺のこと好きだったんだなって。

 それだけに鈴を悲しませたという事実が重い。

 たった一つ、それだけが欲しいというものを俺は渡せないのがチクチク刺さってくる。


「改めて、俺は鈴の理想じゃない。それでも俺が彼氏で良いかな?」


「私だって、ホントの私はこんなだよ。ありのままの私はきっと洋くんの理想と全然違うよね。つまんないこと拗らせてさ。自覚はあるんだ」


「俺は鈴が好きだ。俺の彼女は鈴以外考えられない」


 自虐が始まりそうだったので強引に流れを戻す。

 それをちっぽけなものだと断じることなんてできはしない。

 鈴が大切にしているものならそれがどんなものであろうと俺にだって大きなものに違いないんだ。


 告白した時は誰だって良かったなんて思っていたけどあれはもう撤回する。

 鈴じゃないと駄目だ。


「やっぱり洋くんずるい」



 顔を上げた鈴と、触れるだけの優しいキスをした。



 言葉を交わそうとしてどうしてこうなった。

 いや、不満なんていっさいないんだけど。


「洋くんはさ、足がないのって嫌じゃない?」


「足がないこと自体は別にどうでもいい。でも散歩中にすぐ疲れたとかいう人は勘弁してほしい」


「じゃあリハビリ頑張った甲斐あった」


「ちなみにどのくらい歩けるもんなの?」


「2時間くらいなら余裕。それ以上はやったことないから知らない」


「よくよく考えたら俺も自分がどれだけ歩けるか知らないや」


「じゃあ洋くんより長く歩けるかもね」


 また唇を触れ合わせた。


 初めての時みたいに貪り合うのも良いけどこういうのも良いな。

 元から近かった距離感がとうとうここまで来た。


「またこんなふうにすれ違ったり喧嘩したり、したらさ。仲直りするために私のところに来てくれる?」


「うん」


「私が悪くてもだよ」


「分かった」


「でも、私が悪かったら謝っちゃ駄目」


「おう」


「ちゃんと私に謝らせるんだよ」


「任せて」


 約束の代わりにもう一度キス。

 甘えてくる鈴が可愛い。

 今回は少しだけ、長かった。


「今日うち親いないんだ」


「いや俺がどうやってこの家に入ったと思ってるの? 鈴の親御さんに挨拶して家にあげてもらったんだよ」


 ちゃんと鈴の彼氏と名乗りました。

 なんと田代さんから話がいっていたので特に衝突することもなかった。

 恐る恐るどんな話かと聞いてみたら、鈴と手を繋いで歩ける人、と紹介してくれたらしい。

 現在鈴と手を繋いで歩ける人間は俺だけだからそれだけで信用がMAX。返すはずの恩がどんどん積みあがっていく。


「ちっ」


「舌打ちしない」


 俺がのったらどうするつもりだったんだ。


「大丈夫だよ。バレない」


「やっぱりドア閉めたの失敗だったか」


 嫌な予感はしたんだよなぁ。

 やだよ。最後までできたらバレたとしてもトータルプラスかもしれないけどもし途中絶妙なタイミングでお茶とか運ばれてきたら最悪じゃん。


 立場逆じゃない?

 いや、俺と鈴は最初からこんなだった気がする。


「やっぱり足ないと魅力ないかな?」


 卑怯な言い方してくるな。

 障害者として見られるのが嫌ならそうやって利用するのもやめろと言いたい。

 だけど曇った顔が100%演技とも思えなくて……。


 考えた末、覚悟を決めるために一度鈴にキスをしてから口を開く。


「できれば笑わないでほしい、いや、やっぱり笑い飛ばしてほしいんだけど」


「?」


「俺、鈴と付き合いだしてから毎日腹筋してる」


「……」


 ちなみに俺も鈴も帰宅部。

 別に何かスポーツを始めたとかじゃない。でも、夏休みまでにはなんとか見れるものになってたら良いなと思って続けている。鈴と二人っきりになる機会はすぐだ。


「んぶふっ。えっ、そういう? 本当?」


 意味を理解した鈴が吹き出した。そのまま笑いが止まらなくなる。

 そりゃそうだ。

 馬鹿が馬鹿やってたら笑ってやるのが礼儀というもの。


「何回を何セットしてるの? 朝? それとも夜だけ? ちゃんと背筋とか腕立てとかスクワットとかもしないと綺麗な筋肉にならないよ」


 え!?

 まさかのガチ目のアドバイス。

 いや、回数とか特に決めてないんだけど駄目なの?


「ちょっとクローゼット開けてよ。メディシンボールあるよ」


「メディシンボールって何!?」


 室内でトレーニングできるボールらしい。

 中学の時に自主練として使っていたものだそうだ。


 鈴にはベッドに座っててもらい言われた通り俺がクローゼットを開ける。

 まず目に入るのは制服。

 夏のも冬のもある。

 特に何も考えず鈴の言う通りにしていたらこんなトラップがあったか。視線のやり場に困るな。


 ハンガーに吊り下げられてるスカートって、その……。


「めくってみる?」


「今度着てる時にめくらせてもらうから。絶対」


 男は全員スカートめくりたいものなんだから挑発したからにはきっちり責任とってもらう。

 鈴からしたら望むところかもしれないけど問題ない。


「あ、そこに部活でとったトロフィーあるよ」


「え……。っ。凄いじゃん」


「30点」


「ふいうちは卑怯だろ」


「女の子はいついかなる時も可愛く見てほしいもんなの」


 メディシンボールと一緒にクローゼットの奥にしまわれていたトロフィーを見つける。

 鈴はもうスポーツができない。

 少なくとも部活でやる健常者の大会には絶対に出れない。

 探せばあるかもしれないけど今やってないということは辞めざるを得なかったんだろう。上位入賞するほどに打ち込んでいたものを取り上げられた訳だ。

 せっかくのトロフィーが飾られることもなく埃をかぶっていたということは本意じゃなかったに違いない。


 と思ったことを悟られた。

 しまったと思った時にはもう遅い。今鈴に背中を向けているはずなんだけど声の調子だけで伝わってしまうものらしい。

 さっそくそんな目で見てしまった。いやこれ罠でしょ。的確にIQ下げたところにぶち込んでくるじゃん。もしかして計算?


 でも、今回は即座に不満をぶつけてくれた。

 もう俺と鈴はこの程度じゃ会話がなくなるような事態にはならない。


 そう証明できた。


「まぁでもせっかく洋くんに褒めてもらったことだし飾っちゃおっか。手伝って」


「良いよ。ちょっと待ってて」


「あ、飾る前に罰としてチューね」


「それどの辺が罰なの?」


 罰としてのチューが終わったらただしたいだけのチューをしよう。する。

 ……した。






「仲直りできたようで良かったわ」


「ありがとう。いやホント、田代さんがいなかったらどうなってたことやら」


「聞いたよ。蘆花が頑張ってくれた話」


「別に、……何もしてないわよ」


 あれだけ奔走しておいて何事もなかったように振る舞うのは無理がある。

 機会があれば、いや、機会を無理矢理にでも作って恩を返すので覚悟しておいてほしい。

 俺も鈴もやる気に満ち溢れてる。


 いつもの登校風景。

 俺と鈴が指を搦めて手を繋ぎ、そこに田代さんも含めた三人で学校に向かっている。これを日常と呼ぶには日が浅すぎるがそれでもこれをいつも通りと呼びたい。


「鈴のお父さん、お母さんと話せたよ。田代さんのおかげ」


 仲直りした後にちゃんと二人で挨拶した。

 鈴の両親もまさか俺がメディシンボールを持って部屋から出てくるとは思わなかったのだろう。唖然あぜんとしていた。あとボールはもう必要ないからくれるらしい。親御さんにも是非貰ってくれと言われた。

 ……鍛える目的は一生話せないな。


「蘆花、大好き!」


「それは彼氏に言ってあげなさい」


「えとっ。洋くん……。好き」


「急に恥ずかしがるわね」


 ちょっと負けた気がするんだけど田代さんなら仕方ない。

 仕方ないけどいつかは追い抜く予定だ。


「いや、えっと。昨日を振り返ったら私とんでもないこと言っちゃってたなーって」


「正気に戻っちゃったかー」


「ちょっと待ってね。すぐ大好きって言えるようにするから」


 まぁ鈴はキスするとすぐトロンとなるからなんの支障もない。

 昨日は鈴の両親が在宅だっただけで俺は別に草食系になる気はこれっぽっちもない。


「貴方自分が正気のつもりなの? 手繋いで登校してるカップルなんていないわよ」


「いや、俺たちには最強の免罪符があるから」


 俺達は未成年なので権利が制限されて当たり前。

 それと制服を着ているので学校の評判にも関わるから公序良俗に反すると言われたら普通は手を離さざるを得ない。

 義足はそれらを全て跳ね除ける言い訳にとっても便利だ。


「えっ。もしかして私が義足じゃなかったら手繋いでくれないの?」


 鈴がめちゃくちゃ衝撃を受けた顔ですごく悲しそうな声を出す。

 そんなに手を繋ぎたかったのか。ちょっと嬉しい。


「少なくとも口実としては最上級だよ。というか鈴が義足じゃなかったら俺たち付き合うどころか知り合ってないし」 


「そっか。うん、じゃあいっか」


 鈴が義足で良かったとは思わない。

 だけど、義足じゃなかったらのIFはあんまり考えたくないな。俺なんか見向きもされなさそうだ。


「あ、そういえばさ。俺ちょっと鈴のクラスまで行ってやりたいことあるんだよ」


「嫌な予感しかしないのだけれど」


 正解。






「F組の諸君。鈴は俺の彼女だから手を出さないように」


 恋人宣言だけど鈴は俺のクラスで大々的にやったのに対して俺は鈴のクラスでやってない。

 少し時間が経ってしまったけどこの機会にやってしまおう。


 という訳で朝のホームルーム直前に鈴のクラスで大声を上げた。

 そして教室中の注目を浴びた後、すぐに二割くらいの人間が田代さんの方を向いた。

 あ、やっぱりクラスでもその認識なんだ。

 気配を消そうとした田代さんだったけど忍者じゃないんだからすぐに見つかった。


「その勝ち誇ったような顔やめてくれないかしら」


「このタイミングで視線奪われるのってやっぱりそういう意味でしょ」


 俺の噂は出回っているらしく、雰囲気としては驚きではなくこの人がそうか、といったもの。そりゃこれだけところ構わず手を繋いでいたら新鮮さはない。

 だからちょっと悔しいけど田代さんがどんな反応するかに注目が集まるのも無理はない。

 俺達三人の雰囲気が和やかなことで教室の空気が弛緩する。

 この通り、保護者の許可もとっているから安心してほしい。


 それが分かったからか、クラス中の女子が鈴に祝福の言葉を送る。


「彼氏さーん。ひとことどうぞー」


 恋人宣言を弄っても構わない宣言と捉えた女子たちが姦しく囃し立てる。

 その余波が俺にも来た。


 良かった。

 皆受け入れてくれているみたいだ。


「鈴。大好きだよ」


「私も。大好きっ!!」


 クラスに響く歓声を聴きながら、鈴と笑いあった。




これにて鈴編は完結です。

次話からの蘆花編は共通②からの分岐になります。

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