第10話 海と花

――――――朝の日差しと鳥の声。


「…カーテン開けないで。」

「開けるよ。朝だから。」

「眩しいの嫌い…」

「知ってる。…じゃあもう少しだけならいいよ。」


咲は布団に潜る僕を優しく包み込んだ。


「侑海…おはよ。」

「おはよ。咲さん。」

「どう?体調。」

「咲さんは?」

「あたしは大丈夫。」

「僕も大丈夫…。」


僕はつい…本当についだった。

恥ずかしすぎて布団に隠れようとするとその布団を剥がれた。


「なに?もう一回聞かせて今の。」

「……なんも言ってない。」

「いや、言った。しっかり聞いたこの耳で。」

「……。」

「なに。恥ずかしいの?」

「うるさい…。」

「相手誰と間違えたの?」

「そういう訳じゃない…。」


「おいで。」


背中を向ける僕にそう言うと体ごと咲の方に向かせた。そしてそのまま抱き寄せられた。


「いいんだよ?そのままで。私に作る必要ない。でしょ?」

「……咲。」


咲は僕に優しく口付けた。


「私は意地悪はしない。嫌いだから。それでもいい?」

「いい。」

「私は優しい『海の女神』でいたいの。」

「じゃあ僕は、頭のいかれた花守はなもりだね。」


「ネーミングセンスのなさ。」

「俺だからね。」

「ね」

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海の見える家 海星 @Kaisei123

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