第6話 羽の着いた悪魔


―――――――――「……僕だよ分かる?」


咲が消えた直後、雨が止んで月が出た。

月光に照らされて男の顔が見えた。


「何しに来たの。」

「ご挨拶だなぁ。僕は稜太を助けに来たんだよ。」

「どういう意味?」


大きな羽を付けたその男が少しだけ羽を動かしながら僕の顎を掴んで唇が触れるか触れないかのところで止めた。


「……。」

「なに?欲しそうな目して。」

「黙れ。」

「素直じゃないなぁ。」


翔は僕の額に翔の額を合わせた。

僕が唇を自ら求めると手で塞がれた。


「何?分からない。教えてくれないかな?」

「……嫌。」

「どうして?僕までそこらへんの女と一緒にするの?」

「……違う。」

「うん。どう違う?」

「かけは…お前は…」

「うん?僕はなに?」


僕は自然に翔の左頬に手を伸ばした。



「僕可愛い?」

「可愛い…。可愛いけど…」

「けど?」

「ちょっとえろい。」

「そうだね。でもそれが好きでしょ?」

「……。」

「うん?なに?」

「手邪魔。どけろ。」

「やだ。どけない。」

「可愛い顔して力強すぎ。腕動かねーじゃん。」

「腕相撲する?」

「絶対しねー。こんなほっせーのにどこにそんな馬鹿力隠してんのよ。」

「……どこだろうね。…ここかな。」


翔が自らの下に目をやる。


「……だからさ、その顔でそれやめろ。」

「可愛い僕に襲われたい?」

「……それ以上喋んな。」


「うん。じゃあこうしてあげる。」


翔は手を下ろして僕に軽くキスした。

ずっとの瞬間まで額を突合せたままだった。


「お前の負けだな。」

「……負けちゃった。」

「その笑顔反則な。……あっ…ちょっとお前…。」


翔が僕を押し倒した。


「砂だらけになっちゃうね…。」

「……。」

「なに?物欲しそうな顔して。」

「……。」



僕は翔を引き寄せてキスした。

「……稜太、お風呂入ろうよ。砂だらけだよ。」

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