第3話 パズルのピース

――――――またある日の夜。


咲が寝たあと、ベランダである人と電話で話していた。


「ごめん、急に電話して。」

「大丈夫。構えてたから。」

「さすが。」

「何が『さすが』よ。」

「迷惑でした?」

「そんなんじゃないけど」

「けど?」


「一人で抱えられて死なれたりしたら自責の念で潰れそう。」

「自分が可愛いか」

「当たり前でしょ」

「……。」


「……こういう事って、解る人にしか解らないから。だから辛い。だから孤独になる。」

「蘭華は今の仕事好き?」

「好きでやってるよ。」

「触らせたりすんの?やったり。」

「しない。触らせない。こっちからは触れるけど私は直接的にはそこには触れない。」

「それが蘭華のやり方?」

「そう。その方がより尊くなる。私の存在そのものが。」

「…切ねーな。手に入らないのって。」

「手に入れたい?」

「要らない」

「即答??」

「だってさ、ぶっちゃけだよ?『女王様』なんて職業じゃん。脱いだら普通の女でしょ?足開いて喘いでいかされる。どの女も結局そう。組み敷かれたいだけ。」


「……お子様ね。相変わらず。」

「怒んないの?」

「別にプライド傷つけられたわけでもないから。」


「……俺の頭の中って蘭華は理解出来る?」

「出来ないわけじゃない。そういう奴もいる。けど、それを本当に理解して相手できる女はそうそう居ない。」

「結局『プレイび』でしかない。そんなの要らない。理解してるフリも、付き合いも、社交辞令も要らない。」

「本当に病んでる女がいいのかもね。」

「それたまんない。」


電話の向こうで鼻で笑う声が聞こえる。


「俺さ。」

「うん。」

「結論やらなくてもいい。」

「でしょうね。」


「今、椅子とかソファで蘭華が露出なんて全くない革の服着て、手がだるいからってスピーカーで話してくれてるって想像しただけでムズムズする。」

「フッ…ムズムズ?どんな風に?」

「なんか、もうこの空間空気?この状況?話さなくてもいいよ。面倒くさいなら。ただ、電波で繋がって同じ時間を共有して、俺だけに時間を割いててくれてる…。それがなんか嬉しい。」


「それって誰でもいいの?」

「うん。だからダメなんだよ。」

「昔から?」

「15歳で5股行った。」

「死刑。」

「誰でもいいから俺とその時その時をいて欲しかった。」


「でもそういうことはしてないんでしょ?」

「してない。興味もない。」

「やっぱり。」

「別にしなくてもいいんだよ。でも、求められた方が女の人は喜ぶし、そうしてあげれば繋いでおける。そうすればパズルのピースみたいに少しずつ埋めていけるから多分そのうちパーツごとに集まってその集まったパーツを脳裏に描けば1つの絵になるんじゃないかなって思う。」


「それ、何ピースくらいになるの?」

「1000ピースくらいかな。」

「途方もないね。」

「夢はでっかくだよ」

「使うとこ違うくない?」

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