第20話

 少し遅れてアイシアの所に行くと耳元で声をかける。


「アイシア、モンスターを集めるアイテムの準備できた?」

「ふぁ! で、出来たわ」


 後ろで見ていたユニコーン騎士団のみんながはしゃぐ。

 ファニーは鼻血を吹き出した。


「ファニー、血を流しすぎじゃない?」

「い、いえいえ、ご馳走様です」


 モンスターを集めるアイテムは普通ビンで作る。

 でもアイシアは大樽でアイテムを作った。

 村の兵士も集まり準備が整った。


 今からアイテムでモンスターをおびき寄せて一気に倒す。


「大樽で作ったの? ビンじゃなくて?」

「私もやり過ぎだと思ったわ、でもウォードがこうしてくれって」


「問題無い、マグナムのガトリングがある」

「たくさんモンスターが来てもガトリングで連続で貫けばいいか」


 ファニーが僕の手を両手で握った。


「もう一回言ってみてください」

「たくさんのモンスターが来ても大丈夫?」

「いえ、後半ですガトリングで?」


「ガトリングで連続で貫けばいいか?」

「いいですね。はい、期待しています」

「う、うん」


「ファニー、お前は下がっていろ。何かあったら回復だ」

「はい、皆さんを見守っています」


 兵士も集まってきた。


「アイスザック、今回は銃を構えて後ろに居てくれ」

「いいっすね、寝そべっているだけでいいっす」

「何かあったら頼むぞ」


「分かってるっすよ、矢倉に登って、あ、パンと果物と水も持って行くっす」

「はあ、急いでくれ、ユニコーン騎士団はアイシアのアイテム設置が終わってから空中で待機してくれ」

「分かりましたわ」


 アイシアがゴーレムで大樽を村の外に運ぶ。


「セットして1分後に大樽が爆発してモンスターが集まってくるわ!」

「準備は出来ている!」

「ユニコーン騎士団、配置につくのですわ!」

「「はい!」」

「おいらも準備出来てるっす!」


 僕はパワードスーツとガトリング、そしてスティングリボルバーを纏って待つ。


「よし! いいぞ!」

「今から1分後だから!」


 大樽を発動させるとゴーレムとアイシアが後ろに下がる。


「「……」」


 ドッコーン!


 大樽が爆発して大量の霧が広がった。

 大樽があった場所にクレーターが出来る。


「やりすぎじゃない?」

「うん、私もそう思う」

「だがモンスターが集まってこない、アイシア、大丈夫か?」


「この匂いは、成功しているはずよ、設置場所が村に近すぎてモンスターに届かなかったとか? それか近くにいるモンスターはもう倒しちゃってるとか」

「あり得るね」


「風魔法で霧を森に飛ばすのですわ!」


 ユニコーン騎士団の3人が風魔法を発生させて森に霧を飛ばす。

 霧は風になって森に入って行く。


「……来ない、わね。ごめん、私失敗したのかも」

「いや、普段作らない大がかりなものを作らせた俺のミスだ」

「違う、成功してる、少しだけ、地面が揺れている」

「来ますわ! ガトリングの用意を!」


 地鳴りが大きくなる。


 ドドドドドドドドドドドドドドドドド!


 うさぎからサーベルベアにイノシシ、ポイズンスネークにドラゴンまであらゆるモンスターが村に迫ってきた。


「プウウウウウウウウウウウウウ!」

「グオオオオオオオオオオオオオ!」

「ブヒイイイイイイイイイイイイ!」

「シャアアアアアアアアアアアア!」

「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


「お、おいおい、失敗どころか大成功だ、1000以上はいるぞ!」

「ごめん! もっと調整しておけばよかったわ!」

「アイシア、お手柄だよ」


 僕は1人前に出た。

 走ってガトリングを発動させた。


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!


 モンスターの悲鳴が聞こえる。


「「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」


「あっはははははははは! ガトリングはこうじゃなくっちゃね! たくさん出て来てくれてありがとう!」


 後ろに下がろうとする体をパワードスーツで強引に前に走り体勢を維持する。

 それでも反動で体が下がっていく。


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!


 ドラゴン以外のすべてのモンスターが倒れた。

 僕ばガトリングを止めて前に走る。

 残るはドラゴン3体。

 ティラノサウルス型。


「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


 走って飛び込んでくるドラゴンにガトリングを数発浴びせた。


 ドガガガガガガガガガ!

 ドラゴンがガトリングで怯む。

 その隙に急接近した。


「スティングリボルバー!」


 パアン!

 ガッキョン!

 頭にスティングリボルバーを突き刺して離れる。


「バースト!」


 チュドーン!

 ドスン!


 ドラゴンの頭部が爆発して倒れる。


「後2体だけ」


 僕は同じ要領で残りのドラゴンを倒した。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

 

 歓声が響きあっという間に戦いは終わった。


 ユニコーン騎士団とレティが集まってきた。


「まるでユニコーン王国に伝わる伝説の英雄のようですわ」

「……英雄は杖を持っていたけど僕は銃だからね」

「ですが、あまりにも似すぎていますわ」


 みんなも集まってくる。


「その伝説はどういう内容なんだ?」

「左手に銀色に輝く杖をつけ、その杖は万の輝く塊を遥か彼方まで飛ばし無数のモンスターを倒した。黒き鎧は空をも駆けた。英雄は万の人々を救ったが最後は命と引き換えに竜王を封印し国を発展へと導いた」


「確かに、銃が銀色で鎧が黒いぜ」

「……僕が持っているのは杖じゃなくて銃だし」

「言い伝えに不可解な点がありますわ。『左手に銀色に輝く杖をつけ・・の一文ですが普通は『持ち』になるのが自然ですわ」


「マグナムのガトリングは持つと言うよりつけているわね」

「魔法銃の基礎理論が作られたのは500年前っす、でも英雄バンは1000年前の人っすよ。昔の人が銃を杖だと思っても不思議じゃないっすね」

「……ほら、僕って英雄とか伝説が好きだから、影響を受けたのかもね」


「黒いパワードスーツこれは黒い鎧にも見えますわ、銀色に輝く杖が銀色のガトリング、似すぎていますわ」

「それよりもさ、この肉、早く血抜きをしよう。処理する前に腐っちゃうよ」

「そ、そうですわね」


 レティが僕を見る目が変わった気がする。

 その目は酔ったように魅力的に見えた。

 気のせいだよね。


 あの瞳に、


 胸に、


 吸い込まれそうになってしまった。

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