第21話

 大討伐の成功で味を占めた僕たちは村へのモンスター襲撃を防止するため毎日のようにモンスターを狩った。

 部隊を2つに分けて大討伐は加速した。


 引っ越してくるはずだったファニー。

 でもモンスター退治がうまくいったことで引っ越しは後回しになった。

 部隊を2つに分けた事でけが人が増加したのだ。

 燻製室は昼も夜もフル稼働し、モンスターの肉は燻製肉に変わっていった。


 今日もガトリングでモンスターを倒そうとするが

 ユニコーン騎士団が村に戻ってきた。

 様子がおかしい。


「ピサ王国から武装した兵士がやってきます! 数は30!」

「一旦モンスター狩りは中止ですわ!」


 ピサ王国から兵士が来た。

 ろくなことは無いだろう。

 ピサ王国はこの村を切り離した。


 それでもまたここにやってきたのなら、亡命か厄介事だ。

 厄介事だった場合この村にスパイがいてまだ情報が王に漏れていると考

えるのが自然だろう。


 みんなで吊り橋に集まると吊り橋の向こうには柄の悪そうな男たちが立っていた。

 ウォードが僕の近くに来て小さな声で言った。


「あいつらは、見た事がある。軍規を犯して牢に入れられていたはずだ」

「そういう事か」


 犯罪者を死んでもいい場所に送り込む、前の世界の戦争でも行われていた事だ。

 僕たちが兵士を殺せば宣戦布告をしたと言いがかりをつけてくる気だろう。


 兄はユニコーン王国とこの村が同盟を結ぶとは思っていなかった。

 そこで難癖をつけてユニコーン王国とこの村に亀裂を生もうとしている。


「うん、でも一応話をしてみる」

「吊り橋を渡ろうとしたらどうする?」

「攻撃開始だよ」

「吊り橋を渡ろうとすれば魔法を撃て! 殺しても構わん!」


「おいおい! 俺達は王の使いで来てるんだぜ!?」


 向こうにいたリーダーと思われる男が声をあげた。


「ではこちらには渡らず、今の状態で話を聞こう!」

「へっへっへ、分かった。王の命令を読み上げる。『おとなしく従って物資を渡しユニコーン王国に関係する人を追い出すか奴隷にして差し出せ』だそうだ! 俺達に危害を咥えたらどうなるか分かってるんだろうな! 宣戦布告になる!」


 この村とユニコーン王国は同盟関係だ。

 向こうに従えばユニコーン王国と亀裂が生まれる。

 拒否すれば戦争開始となりピサ王国の兵が攻め入ってくる口実を与える事になる。


「はあ、予想通りか。パワードスーツ」


 パワードスーツを纏って前に出た。

 そして向こうを睨みつける。


「へっへっへ、雑魚が威嚇してやがるぜ! 呪いの首輪で弱くなった間抜けな王族がよお!」

「兄貴、やっちまいましょうぜ、ユニコーン騎士団を犯して無力化してやらねえとなあ!」

「村の娘も上玉がいるじゃねえか、俺が可愛がってやるよ!」

「その前にだ! 酒と肉を持ってこい! 俺達は王の命令で動いてるんだ!」


「ガトリング」


 ガトリングを出現させた。

 よく分かった。

 王から『死ぬことは無い』だとか『好きにしていい』とか言われたんだろう。

 

 お前らは宣戦布告扱いにする為の言い訳作りに利用されているだけだ。

 だが、分からないんだろうな。


 牢屋に入れられるような連中だ。

 頭が良くないんだろうな。

 で、牢屋に入れられても反省の色が無く変わっていないと。

 ただでさえこっちの方が数は多い。

 でもそそのかされて騙されてるんだろうな。


 もう決心はついている。

 ピサ王国よりもユニコーン王国側につく。

 あいつらは口で言っても駄目だろう。

 災いをもたらすならためらいなく殺す。


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!


「「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!」」


 敵兵士30人をハチの巣にした。

 そして振り返り歩きながら言った。


「使えそうな武具やアイテムだけ奪って後は全部崖に捨てて」

「お、おう」


「モンスターの大討伐はしばらくストップだ! これから吊り橋前にトラップを仕掛けるよ! 今はモンスターより人が脅威になる!」

「それはいいが、どんなトラップにするんだ?」


「それはアイシアと秘密会議で決めるよ、アイシア、行こう」

「……分かったわ」


 僕はアイシアの背中を押して温泉へと向かった。



 ◇



「はあ、はあ、もう、もうもう無理いいいぃ!」

「アイシア、気持ちよかったよ」

「スル為に呼んだの?」

「それもあるけど、まだスパイがいる事が確定したね」


「遠くから見張られてたんじゃない?」

「その可能性もあるけどここに来る道は吊り橋に繋がる1本道だよ。ユニコーン騎士団がパトロールしているからあの崖を通って発見されないのはおかしい、見張ってるんじゃなくて情報を受け取って流されていると考えるのが自然だね」


 実際にユニコーン騎士団は兵士がこちらに来るのを察知していた。


「最近はピサ王国に繋がる吊り橋を監視していて誰が通ったか名前を付けて記録する事にしているから紛れ込むスパイは通れなくなっている、違う方法で情報を受け渡ししているんだろうね」


 人が通れなくても情報を書いた紙を何かに入れて崖に落として拾ってもらうくらいの事なら出来るだろう、実際スパイから情報を受け取っていた兵士も指定の場所から紙で情報を受け取っていた。


「ちょ、ちょっと、揉まないでよ」

「いい胸だ、考え事をするにはいい」

「あああああああああ!」


 アイシアにトラップを設置してもらってピサ王国に繋がる吊り橋は立ち入り禁止にしてもらおう。

 そして兵士にはチームで動いてもらいスパイをしにくいように持って行こう。


 これですべて対策できるわけじゃないけど、少しずつ向こうの手口を絞ってスパイを特定する。


 レティとも温泉で話をしよう。

 そして兵士をそれとなく見張って貰う。


 温泉ルームにアイシアの声が響き渡った。

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