第19話
「おーい、いるか! アイシアが家から出てここにいると聞いた」
ウォードの声だ。
ユニコーン騎士団が出迎える。
ウォードがアイシアと僕を見た。
「……」
「「……」」
ウォードは明らかに僕とアイシアの関係に気づいた。
でも気づかないふりをして話を進める。
「相談があるんだが、アイシアにモンスターを集めるアイテムを作ってほしい。モンスターが集まったらマグナムのガトリングで倒して欲しい、後ろは俺達が固める」
ユニコーン騎士団のみんながにやにやしたまま話を聞く。
アイシアは真っ赤なまま会話をする。
「分かったわ、材料さえあればすぐに作れるわ」
「ああ、集めてある」
「前に言ってあった話だね? 僕も大丈夫だよ。動くのが遅れてごめん」
「……いや、いい」
「わたくしも空から援護しますわ」
「助かる、明日でいいか?」
「作ろうと思えば今日出来るわ、みんながいいなら今日でも行ける」
「アイシアさん、大丈夫ですか? 疲れているようですけど」
ユニコーン騎士団の女性が言うとアイシアが目を逸らした。
「大丈夫よ、魔力はあるわ」
「ベッドの上で魔力は関係ありませんからね、後で女子会をしましょう」
「私も詳しく聞きたいです」
ファニーが笑顔でアイシアの手を取った。
「だから鼻血、それとウォード」
「マグナム、どうした?」
「意外と紳士なんだね」
「せっかく言わないでいるのに、おまえ言うなよ」
みんなが笑う。
アイシアが真っ赤なまま俯く。
「おほん、マグナムもアイシアも年頃だ、色々あるのは理解できる、アイテムの作製を今から頼む」
「分かったわ、ありがとう。すぐに作って出来たら玄関の外に運ぶわ」
「頼む」
ウォードが出て行くとアイシアが遅れて出て行った。
「レティ様、笑ってますね」
「ふふふ、いけませんわ。笑ってしまっては失礼ですのに」
「レティ様も人の事は言えませんね」
「後で話を聞きに行きましょう」
「恋バナです」
キャッキャッキャ!
「ウォードに気を使わせるってよっぽどだね」
「はあ、はあ、アイシアが真っ赤でした。ナニがあったのですか!? どこで行われたのですか!?」
「ふ、ファニー、鼻血鼻血!」
「お、お構いなく」
「いやいや、もう少ししたらモンスターを狩るから、休んでて。僕は行ってくるよ」
「わたくしも参加しますわ。ですが今日は皆さん、失礼が過ぎますわ」
「「レティ様が喜んでくれるかと思って!」」
仲がいいな。
レティは気を使っていたけど、本当は恋バナが好きなんだろうな。
ユニコーン王国の精鋭は女性部隊のユニコーン騎士団と男性部隊のホワイト騎士団がある。
精鋭の選定条件は戦闘能力だけではない。
人格や健康である事など、強さ以外の項目も見て候補生が選ばれる。
サバイバルから話術、家事、育児、夜の営みまで様々なスキルを覚え脱落しなかったものが精鋭に選ばれる。
ユニコーン騎士団のみんなはからかう部分はあってもまともだ。
いや、純粋に恋の話が好きなだけか。
ユニコーン騎士団は基本みんな人が良くて自分で動くタイプだ。
人にやらせてサボろうとはしない。
前に聞いた話だとユニコーン騎士団に手を出した村人がロープで縛られて村びとに囲まれて罵声を浴びせられ馬で引きずり回されて殴られ最後には村人全員でユニコーン騎士団に土下座をしたらしい。
精鋭のユニコーン騎士団とホワイト騎士団はそれだけ特別視されている。
精鋭に選ばれる=国からのお墨付きをもらった優良な結婚候補でもある。
ユニコーンに乗れなくなればユニコーン騎士団ではなくなるが、 ユニコーン騎士団の兵役を1年以上勤めて子供を3人以上産めばユニコーン王国の紋章入りの黒い武器を手に入れる事が出来る。
男性の場合も同じでホワイト騎士団にいてもいなくても黒い紋章入りの武器を持っていれば既婚者で子供が3人以上いる事が分かる。
黒武器所持者=マスターと呼ばれ年を取っても尊敬され指導の仕事も出来る。
ユニコーン騎士団やホワイト騎士団の制度だけ考えても人を大事にして長期的に国を発展させる姿勢が伺える。
「ユニコーン騎士団のみんなはどうして騎士団になろうと思ったの?」
「モテたくて!」
「マスター(黒武器所持者)になれば将来安泰です」
「子供をたくさん作りたいです」
「ホワイト騎士団とお茶会をしたかったです」
「ホワイト騎士団を捕まえて家族に楽をさせたいです」
「恋がしたいです」
「皆正直だね、長い目で見た発展を目指すユニコーン王国と、人を人間爆弾にしたり、少数で奇襲をかけさせて人を道具のように使うようになったピサ王国。正確には兄が王になってから狂ったが正しいけど。兄が王になってからピサ王国は傾くばかりだね」
ピサ王国には優れた錬金術師が多く、ゴーレムを使った攻撃と銃騎士の強さはあるけど、兵を使い潰して錬金術師を倒れるまで働かせれば人は逃げるし反乱も起きる。
100年続く長期戦で短期的な優勢を取って長期的な優勢を捨てる兄は普通ではない。
人間爆弾や殺されてもいい前提の奇襲は短期的には良くても長期で見れば国の兵力を削ぎ落とす。
お腹が空いたタコが自分の足を食べるようなものだ。
「驚きましたわ。ピサ王国の教育を受けて真っすぐに物事を見る事が出来ますのね。多くの人にとって中々できる事ではありませんわ」
「ピサ王国の教育係には僕は変人と呼ばれているよ」
バロンを思いだした。
あいつがいなくて本当に気分がいい。
口やかましくて何かあれば人のせいにして自分には甘いバロン。
性格の良い人に囲まれて暮らせるって当たり前の事じゃないんだよなあ。
今ここにいられる。
とても居心地がいい。
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