第14話

「素敵な屋敷ですわ、ありがたく使わせてもらいますわね」


 レティの家が完成した。

 当初は2階建ての予定だったが丁寧に石を切ると時間がかかりすぎることが分かり、割れた石を積んでレンガのように固める方法で平屋を作った。


 予定の変更や見栄えが悪くなった事をアイシアは気にしていた。

 僕から見れば十分きれいに出来ている。

 作り手側から見れば細かく悪い部分が見えてくるのかもしれない。

 帰ってきたレティは気にしたそぶりを見せず満面の笑顔でアイシアや皆に感謝した。


 当初はこの屋敷をレティの拠点の1つにするだけかと思われたがここに居つくようになり村のみんなともすんなりと溶け込んだ。

 そしてアイシアに家具を作って貰い定期的に村の人とお茶会を開いている。


 アイシアは欲しがっていた錬金素材や本を貰い家に引き籠った。

 ゴーレムをパワーアップする予定らしい。

 そう言えばゴーレムの見た目がちょっとずつ変わっていた。


 ファニーはユニコーン騎士団が治癒を手伝ってくれたおかげで時間が出来たようだ。


 村は前より良くなった。


 ユニコーン騎士団がモンスターを狩ってくれるし家事も手伝ってくれる。

 更にユニコーン騎士団が定期的に物資を運んで来てくれる。

 特に効果が高いのがユニコーン騎士団による空中からのパトロールだ。

 村の近くにある森を上から見下ろしてモンスターを発見する事で奇襲を受ける頻度が大きく減った。


 レティがパトロールから帰って来ると駆け寄った。


「ぶひーん!」

「わあ!」

「落ち着くのですわ! ユニコーン!」


「ごめん、ユニコーンに近づいちゃ駄目だったよね」

「ええ、乙女以外には懐きませんの」


 ユニコーンがレティにすりすりする。

 僕が近づこうものなら角を向けてすぐさま威嚇するユニコーン。

 乙女以外には態度が豹変するって、人だったらただの嫌なやつだな。


 ユニコーンが小屋に入るとレティが僕に笑顔を向ける。


「たまにはお茶でもしません? みんなでお話をしたいですわ」

「そっかあ、うん、他に誰を呼ぼうか」

「村長とウォードさんをお呼びしたいですわ」

「分かった、すぐに呼んで来よう」


 こうして屋敷でお茶会をする事になった。

 このメンバー選びは大事な話だろう。


 3人が集まり屋敷に入ると椅子やテーブルなどの家具に丸みがあり、味があった。

 お菓子のいい匂いがして紅茶の香りも混ざり心が落ち着く。

 レティだけでなく他のユニコーン騎士団も椅子に座り丸くて大きいテーブルに座る。

 お茶会が始まるとレティが会話を回す。


「ここの温泉は本当に素晴らしいですわ。わたくしも毎日入ってしまいます」

「温泉、いいですよね、お肌がつるつるになります」

「毎日の入浴は大事ですよね」


「村長さんは最近おかわりありませんか?」

「ほっほっほ、私は毎日みんなの悩みを聞いているだけです。ただ、肉が手に入り過ぎて村のみんなの仕事が増えて、良い事ではあるのですが人手が足りませんなあ」

「それは大変ですわね、ユニコーン王国からあまり人を入れますとみんなが怖がってしまいます、何かいい手があればいいのですが」


「いえいえ、モンスターの解体が多いのは今だけの事でしょう。それに仕事が多いのは活気があっていい事です」

「ウォードさんはおかわりありませんか?」


「俺はいつもと変わらねえなあ」


 いつもと変わらない?

 いやいや、最近この村の年上美人といい関係だとみんなが言っている。

 もうすぐ結婚するらしい。


「マグナム、にやにやするくらいなら言ってくれ」

「結婚する相手が見つかったんだよね?」

「そうだ」

「まあ、おめでとうございます! めでたい事ですわ」


 レティが僕を見た。


「僕は、ガトリングでモンスターを倒して運んだり、石を運んだりしているだけだよ」

「ガトリング、ユニコーン王国に伝わる1000年前の英雄を思いだしますわ」


「……竜王からユニコーン王国を救った英雄だよね? でもガトリングは左手に持った杖で鉄の塊を飛ばす魔法だって聞くよ。僕のは杖じゃなくて銃だから。それにね、僕は英雄が好きだから英雄の影響くらい受けるよ。もっと言うと500年前の錬金術の基礎を作った人の影響も受けて『銃』のスキルになったのかもしれないね」


 僕が覚えるスキルは基本銃に関係している。

 パワードスーツにも銃が付いている。

 スティングリボルバーは接近攻撃ではあるけど銃だ。


 1000年前の英雄は竜王を封印したと言われている。

 僕はドラゴンをガトリングで倒している。

 重なる部分があるのかもしれない。


「小さな英雄のおかげでこの村は救われていますわね」

「皆が優秀なんだよ」

「そう言えるマグナムは人を束ねる素質がありますわ。自ら決断し、自ら前に出て人に感謝できる、大きな力を持ちながらうぬぼれすぎない方は貴重ですわ」


「おう、マグナムは俺達のリーダーだからな」

「その通りです。王子が村に来てからこの村は更に発展しました」

「わたくしもそう思いますわ」


「僕はリーダーじゃなくて、みんなで村を発展させているだけだよ」

「いや、マグナムがリーダーだ。ユニコーン騎士団が出て来て1人前に出た、あの時点でマグナムはリーダーだ」

「その通りです、王子がいなければ我らは右往左往していたでしょう」


「その通りですわ。ですが困りましたわね」

「え? 何かあったの?


「わたくし達はこの村で一番いい屋敷に住んでいますわ。でも村のリーダーであるマグナムが小さな家に1人住むのは良くありません」

「そういうのは気にしないよ。今は発展の為の大事な時期だからね」


「は!? そう言えば! 私は重大な事を見逃していました。村長としての至らなさを思い知りました」

「村長はよくやってるから」


「俺もうっかりしていたぜ、マグナムをこのままあの小さな家に住ませていいわけがねえ」

「あの家は気にいっているよ」


 村長は上下関係を、ウォードは防衛の事を気にしているようだ。

 

「マグナム、アイシアやファニーと一緒に住みたいとは思いません?」

「な、何故僕の心を読めるんだ!」


「マグナム、いつもアイシアとファニーを見ているし見つけると吸い込まれるように寄っていくじゃねえか、それにレティにもな」

「皆分かっていますとも」

「そうだね、きれいなお姉さんに囲まれて暮らしたい」


「マグナム王子の家を建てる。決まりだな」

「私も賛成です」

「わたくしも賛成ですわ」


 こうして僕専用の家を建てる事が決まった。

 重大な話じゃない気がするけど、まあいいか。



 ◇



「スティングリボルバー! バースト!」


 チュドーン!


 地面を爆発させると温泉が吹き上がった。

 アイシアが僕のスティングリボルバーを触る。


「凄い精密な作りのスキルね」


 アイシアはスティングリボルバーに興味津々だ。


「温泉は掘ったから家づくりはお願いするね」

「任せて、まずは住めるようにするわ」


 こうして、まだ完成ではないが住める状態までは家が出来上がった。

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