第13話

 レティ率いるユニコーン騎士団が住む屋敷を建てる為に石を集める必要がある。

 森を抜けて兵士15人と共に現場にたどり着いた。


「今から石を運ぶよ」

「王子、石を運ぶには村から遠くないですか?」

「大丈夫だよ、遠く感じるけど今ウォードが道を作っているから」


 遠くからウォードが木を切り倒す音が聞こえる。


「モンスターが出そうね」

「大丈夫だよ、アイスザックが近くにいるモンスターを倒しているから」


 パンパン!


「グギャアアアアアアアアアアオ!」


 アイスザックが使う魔法銃の音が響く。

 兵士を安心させる為に温存していた魔法弾を使ってもらいモンスターを倒しているのだ。


「ケガをすれば村に戻ってファニーの治療が受けられるし、緊急の時はアイシアが作った回復ポーションもあるから、早速始めるよ。スティングリボルバー」」


 パワードスーツの上にスティングリボルバーを出現させた。

 そして絶壁のような岩山に立った。


「皆、離れてね、もっと後ろに、もっとだよ。前に出ないでね」


 走ってスティングリボルバーの杭を岩に突き刺すと同時に叫んだ。


「スティングリボルバー!」


 パアン! 

 ガッキョン!

 ズザザザザアアアアアアア!


 スティングリボルバーを出現させた状態で杭を突き刺し、『スティングリボルバー』と叫ぶことでこのスキルは発動する。

 銃声と共に杭が岩に深くまで突き刺さった。

 そしてリボルバーが回転して次の杭が出現した。

 銃声と共に杭が岩に突き刺さり僕は大きな衝撃で弾かれるように後ろに飛んだ。


「王子! 大丈夫ですか!」

「腕が折れてませんか!?」

「無理はやめましょう!」


「だ、大丈夫、思ったよりも後ろに吹き飛んだけど問題無いよ。この調子で後2発撃ちこむよ!」


 スティングリボルバー3発を無事打ち込んだ。

 

「王子、全然砕石が出来てませんよ」

「まだ未完成なのかな?」

「後は俺達がやりますから大丈夫です」


「駄目駄目、まだ前に出ないで、後ろに下がって、もっと下がって、耳を塞いでね、爆発するから」


 兵士を後ろに下がらせた。


「バースト!」


 チュドドドーン!


 岩に突き刺した杭が『バースト』の声と共に爆発した。


 ガラガラガラガラ!


「ほら! 見て! スティングリボルバーが成功したよ!」

「差し込んだ杭が内部で爆発した!」

「こんなので攻撃したら、ドラゴンだって1撃で倒せる!」

「でも、ドラゴンに、接近できるか?」

「確かに、あの杭を差し込んで銃を撃っても普通は肩が外れる、王子以外使えないだろうな」


「大丈夫っすか?」


 アイスザックがやってきた。


「アイスザック、またサボりか?」

「違うんすよ、普通あんな爆発が起きたら心配になるっすよ」


 アイスザックは兵士からいつもサボりを疑われている。


 ウォードもやってきた。


「おーい、村に繋がる木を切り倒した。荷車に石は積み込んだか?」

「まだっす」

「ならアイスザックも一緒に荷車に石を積んでくれ、大きい石から順番にな」

「おいらはモンスターを倒す役目があるっす」


「む、今から命令変更だ、石を荷車に積んでくれ」

「そんなあ! 酷いっすよ!」


 ウォードとアイスザックの会話で皆が笑う。


「マグナム、体は大丈夫か?」

「大丈夫、どんどん体力もスキルの威力も上がっているよ」


 僕は石を積み終わった荷車を持って走った。


 ガラガラガラガラ!


「ほら! 体が軽い」

「お、おい、道が出来たわけじゃないんだ! ゆっくり運んでくれ」


 僕は切り株やでこぼこを避けつつ走って家を作るアイシアの所に向かった。




【ウォード視点】


「……危ないだろ」

「王子は、完全に子供っすね」

「そうだな、本人がいくら15才だと言っても信じて貰えないだろう。アイスザック、石を積んでくれ」

「……うっす」


 だが、俺と村長とで集まり3人だけで話す時はやたらと配慮深い。

 スパイがいた場合の対処法、王が次何をしてくる危険があるか、そしてユニコーン王国の精鋭を前に1人で交渉に臨む胆力。


 今まで不遇な人生を送ってきた分はしゃいでいるのもあるんだろう。

 それが結果的に子供のように見える、だがそれでいい。

 マグナムはもしかすれば子供としてふるまっているいる演技の可能性すらある。


 マグナムの石運びが終わったら村に続く道を整備するか、いや、もう少し作業を見てからだな。

 切り株を火で燃やし、穴の開いた道を土と砂利で整地する係も必要だろう。


 アイスザックが手を抜いて作業をしながら兵士を話しをする。


「あの爆発は何なんすか?」

「スティングリボルバーだよ」

「あの岩壁をそれで砕いたんすか?」


「そうだ、杭が突き刺さって爆発するんだ」

「へえ、危なくないっすか?」

「だから爆発の前に俺達は後ろに下がっていた」

「ふむふむ、休憩はまだっすかね?」


「まだ始まったばかりだ」

「はあ、石が多すぎて終わらないっすよ」

「明日になればまた砕けた石が増える」


「げえ、単純作業は嫌いなんすよね、ウォード隊長はゴリラ並の体力だからいいっすけど繊細なおいらは疲れるっす」

「ゴリラ言うな、ふんぬ」


 俺は大きな石を両手で抱えて荷車に積んだ。


「ほら、ゴリラっす」

「違う」


 ドドドドドドドドドドドドドドドド!


「げえ、王子が笑顔で戻ってきたっす。荷車に石を積んでもまた空の荷車が出るっす」

「次も運ぶよ」

「マグナム、明日から岩を砕くのと運ぶのを任せていいか?」

「いいよ、どんどん運ぶから」


 マグナムがアイシアの所に石を運んでいく。

 まるでアイシアの犬のように石を運ぶ。

 マグナムがいるなら運ぶのは問題無い。

 後は道を整備して荷車を増やし、マグナムのサポートをするように立ち回ればいいか。

 採石場は将来に渡って使う、道は必要だ。


「部隊を分ける、マグナムの足を止めないようにな」


 俺の言葉でサボれない事を察したアイスザックが嫌そうな顔をした。


 マグナムは走れば走るほど速くなっていき、切り株やでこぼこを避ける荷車引きの効率も上がっていく。

 体力、スキル、学習、すべての能力上昇が早すぎる。

 普通に考えて異常な成長速度だ。


 15才の体で使いこなせなかったというスティングリボルバーを当然のように使いこなしている。

 スキルの鍛錬には時間がかかる、スキルを使えるように数年の修行をする事も珍しくない。

 だがマグナムは1発放つだけで、1回動くだけで急速に成長しているように見える。


 呪いの首輪は本当に呪いの首輪なのか?


 まるでマグナムに祝福を与えているようにも見える。


 弱るどころかどんどんと生き物としての格が上がっている、俺にはそう見えた。

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