第11話

 僕と村長、そしてウォードが集まる。

 村のみんなが遠くから見ていた。


 ドラゴン3体を村に運び終わる頃合いを見計らいユニコーンに乗った女性が1人僕達から離れて地上に降りた。


「村の代表者の方と会談をしたいのですが、用意は出来ましたか?」

「僕が代表です」

「……出来ればピサ王国王の弟であるマグナム・ピサとの会談を望みます」


「僕がマグナムだよ、ほら、ガトリング」


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

 空に向かってガトリングを撃った。

 他国でも僕のスキルくらいは調べているだろう。


「……少々、お待ちください」


 ばっさばっさばっさばっさ!

 ユニコーン騎士団の女性が戻って行った。

 そして遠くにいる仲間の元に降り立ち、ひそひそと話をしている。


「マグナムは15才だ、でも10才の子供が『僕がマグナム』とか言っても信頼できないだろうな」

「そうですね、真実なのですが、呪いの首輪の話をして分かってもらうのがいいと思います」

「また戻ってくるぜ」


 また僕達から距離を取った位置にユニコーンを下ろす。


「失礼しました。その鎧とガトリングは確かに王の弟のスキルに見えます。会談を申し込みます」

「うん、じゃあ、村から離れた場所で話をしよう」

「待て待て! 1人で行くのか?」

「危険です」


 これは!

 ヒーロー展開の匂いがする。

 ここで僕が活躍すればヒーロー間違いなしだ!


「大丈夫だよ、これでも僕はみんなの代表だからね」

「今の所争う意思はありませんので」

「危険だぜ!」


 ファニーも前に出た。


「私もついて行きます、せめて盾になるくらいはして見せます」


「駄目だよ、1人で行ってくる、まずはこっちから心を開かないと。向こうだって緊張しているんだ」


 僕たちはドラゴン3体を運んでいる所を見せている。

 ドラゴンは強いモンスターだ。

 向こうとしては油断できないと思っただろう。


「僕は大丈夫だから」


 ウォードが何かを決意した顔をした。


「もし、マグナムに何かあれば俺は前に出て戦う!」


 後ろにいた兵士も叫ぶ。


「そうなったら私も戦うわ!」

「俺もだ! ちっちゃいマグナムだけ前に出して終わりにはしない!」

「そうだそうだ!」


「今の所争う意思はありませんので」

「うん、信じよう、行こう」


 前に歩き出すとユニコーン騎士団が慌てる。


「だ、ダメです! ユニコーンに近づかないでください!」

「ヒヒーン! ブフウウウ!」

「落ち着いて、ユニコーンは乙女以外に懐かないので下がってください!」


 ユニコーンは乙女以外には獰猛だ。

 乙女でも処女を失えば態度が豹変する。

 なんで乙女かそうじゃないかを見極められるかは不明だけどとにかくユニコーンがいれば乙女かどうかが分かるのだ。


「あ、ごめん」

「い、いえ、ほら、下がって、噛みつこうとしないの!」


 ユニコーンが落ち着いた。

 あの美女軍団は、みんな処女か。

 なんか、エロいな。


 街から離れた場所で1人の女性が前に出てその左右に1人ずつ付きしたがうように歩いてくる。


「向こうは1人で来たのですわ、護衛は不要ですわよ」

「し、しかし」

「姫、げふんげふん、それはいけません」


「向こうは誠意を示したのです、こちらもそれに答えますわ」

「失礼しました。ですが危険だと思えばすぐに駆けつけます」


 2人が下がる。


「ふう、前に見える村からは兵士が構えて、後ろからはユニコーン騎士団が武器を構えていますわね。出来るだけ友好な関係を築きたいところですのに。申し遅れました。わたくしの名はレティですわ」


 レティシアーナ・ユニコーン、王の子は21人いてその中の1人がそういう名前だったと思う。

 金髪のロングヘアと青い瞳。

 完璧なプロポーションと見た目で姿勢と動きに品がある。

 かなりタイプだ。

 

「僕の名はマグナム・ピサ、と言っても15才であるはずの僕がこんな見た目をしている経緯から話してもいいかな? 疑念を解いていきたいからね」

「ええ、よろしくお願いしますわね」


 今までの成り行きをざっくりと語った。

 そしてお互いに戦う意思が無い事を確認し合った。


 ウォードや村長と事前に話をしてあった。


『最悪の場合ユニコーン王国の国民になる』


 そう決めている。

 最悪のパターンは独立を貫きユニコーン王国と戦いながらも後ろからは兄の攻撃を受けるケースも想定出来た。


 それよりはユニコーン王国陣営に取り込まれた方がマシだと話はついていた。

 問題は条件だ。

 あまりにも厳しい条件は飲めない。


 もしもあまりにも厳しい条件を突き付けられた場合は兄の思惑通りになったとしてもこの場で戦う事になるだろう。


「出来る事ならばこの村と協力を結びたいところですわね」

「その条件を教えてくれるかな?」

「わたくしが望んでいる事は、この村との同盟ですわ」


 同盟? 属国や支配じゃなくて?

 予想外だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る