第6話

 だらんと垂らした左腕の横にまるで拘束具のようにガトリングが固定されて手の甲から肩の先まで伸びる。

 左手でパンチをした時のように構えると左腕にずしりと重さを感じる。


 サイズを小さいこの体に合わせたつもりだけどフィット感がいまいちだ。

 ガトリングがぐらぐら揺れる。

 うまく狙えるか!?

 前に走り倒れこむように前傾姿勢になりガトリングを発射した。


 ドガガガガ!


 1発撃つだけで後ろに下がる力が働き攻撃が当たらない。

 子供の体だと1発撃つだけで体が仰け反る。

 それに体が小さくなったからだけじゃない、威力が大幅に上がっている!


 かなり前のめりになって撃たないと駄目だ。

 前傾姿勢とダッシュをしつつガトリングを撃った。


 ドガガ! ドガガガガガ! ドガガガガガガ!


 1発撃つごとに標準を調整してサーベルベアに当てるとサーベルベアが倒れた。

 5体すべてにガトリングを当ててサーベルベアを倒すとすぐにガトリングを消した。


 ちょっと撃っただけで体が大きく仰け反る。

 そして標準の感覚が前とずれている。

 10才の体と強くなったスキル性能、慣れる必要があるか。


「もう大丈夫です。倒しました」

 

 村長が駆け寄ってきた。

 そして僕の手を取って握手をした。


「ありがとうございます! 王子は巨大な銃を出すスキルを使えると聞いております! 突き出した腕の上に固定された巨大な銃、遠くにいるモンスターを一瞬で倒すそのお姿、間違いなくあなた様はマグナム王子です!」

「う、うん」


 王子ではないんだけど、きっとこれから王子と呼ばれるんだろうな。


「さあ、温泉はこちらです」

「あ、ありがとう」


「待て待て、呪いの首輪は大丈夫なのか? 外れて体は何ともないか? なぜ10才の体のままなんだ?」

「分からないけど、そういうものなんじゃない?」


「じゃあ、呪いは、もし死ななかったとして10才でいる呪いは解けないのか?」

「多分そうだね。呪いの首輪をつけた時の感覚がまだ消えてないから呪いは解けていないね、でもスキルは使えるようになったよ」


「体は大丈夫か?」

「うん」

「そうか、よかった」

「大丈夫、温泉に行ってくるね」

「お、おう」


 僕は温泉に行くまでに村人に手を振って貰い何度もありがとうと言って貰えた。

 いい村だ。

 助けてありがとうって素直に言って貰えるのはかなりいい。


 温泉に行くと小さな子供が何人もいた。


「だれえ?」

「マグナムだよ、今日からここに住む事になってるんだ」

「へえ、そっかあ。おふろはいるの?」

「うん」

「こっちだよ」


 なるほど、どうやら僕はちびっこ枠に入れられているようだ。


 服を脱いで温泉の部屋に入ると1人だけ体が発達した女性の後ろ姿が見えた。

 きれいなお尻とくびれだ。

 子供達を洗っている。


 顔が見えない。

 ちびっこたちが「新しい人来たよ」「ここに住むって」と言って女性の所に寄っていく。


 村長たちと違って子供や女性は痩せてはいない。

 若い人には食べさせる方針なのかな?


「石鹸を使ってもいいかな?」

「いいわよ、今他の子を洗ってて忙しいの、ほら、まだ洗ってないからお風呂に入ろうとしないで!」


 ちびっこ相手で忙しそうだな。


「そっか」


 僕は石鹸を泡立てて背中を女性に向けて体を洗う。

 女性が僕に「洗い方が上手ね」と言った。


 桶で泡を流して木枠で作られた温泉に入り女性を眺める。

 

「おお、温泉だ」

「ふふふ、そうよ、温泉ははじめて?」

「うん」


 女性が僕を見た。

 即座に女性の姿を目に焼き付ける。

 美人だ。


 茶色い髪を肩まで伸ばし、瞳も茶色。

 胸は大きくは無いが形がいい。

 下半身がしっかりしていて腰から上が細い。

 安産型か、いい。


「僕はマグナム、お名前は?」

「私はアイシアよ」

「へえ、僕は15才だけどアイシアは何才なの?」

「……本当は何才?」


「15才」

「……まあいいわ、私も15才よ」


 信じてないな、でも言って信じて貰えないならもう言わなくていいか。

 僕はちびっこ枠でいい気がする。

 アイシアの体が綺麗だなあ。


「アイシアって子供を洗うのがうまいよね」

「慣れているだけよ」

「へえ」


 アイシアの手先が器用でそれだけでエロく感じる。

 洗われ終わった子供が話しかけてくる。


「あいしあねえ、れんきんじゅつしなんだよ」

「ごーれむ、2つつかってる」


 錬金術師は生産職で魔道具から家づくり、ゴーレムや魔法銃の作製と極めれば一通り作れる。

 だが王都の錬金術師は設計のみ、魔法陣のみと専門性に特化している錬金術師が多い。

 アイシアがもし1人でゴーレムを作ったとすればかなり優秀だろう。


「そうなんだ」


 相槌は打つがアイシアから目を離さない。


「だから手が器用なのかあ」

「慣れよ」


 アイシアが最後の子を洗うと桶で温泉のお湯をかけて立ち上がった。

 いい。

 きれいな体だ。


 そしてアイシアが温泉に入る。

 お湯の下はあまり見えないけど胸が温泉にぷかぷかと浮いている。

 僕は目線だけ顔を見て目の端では胸を見る。

 絵画に出てくる芸術のような出来栄えだ。


「マグナムはどこから来たの?」

「王都だよ」

「そう、王都はいい所?」


「この温泉の方がいいよ。王都よりこっちの方がいい気がする」


 そう言いながらアイシアの胸を見る。


「王都に錬金術の本や素材はたくさんあるのかしら?」

「本はたくさんあるよ。でも素材は王様に持っていかれるんだ」


「戦争は終わらないのかしら?」

「100年続いているからね。今はもしかしたら辺境の方が幸せかもしれない。この温泉はとてもいいね(アイシアが)」


「実はこの木の湯舟は私が作ったのよ」

「凄いね。最高だよ(アイシアが)」


 僕はしばらく話をしてアイシアの胸を目に焼き付けた。

 温泉を上がると素早く着替えて座る。

 先に子供を連れてあがったアイシアの着替える様子を見学する。


「いつもみんなの面倒を見てるの?」

「温泉に入れてたまに食事を作るくらいよ」

「凄いと思う」


 アイシアの着替えが終わると笑顔で言った。


「ここで暮らしていけそう?」

「全部を見ていないから分からないけど、今の所とてもいい村に見えるよ」


 丘の辺境。


 柔らかそうな双丘。


 アイシア。


 この村は最高だ。



 


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