第12話 学校のパワースポット(2)

「神城さん、わたしも手伝うよ!」

 もしかしたら家保くんと二人っきりのほうが嬉しいかもしれないけれど、わたしも何か神城さんを助けたかった。いじめられているのを見るのはいい気がしない。たとえ元はいじめる側だったとしても。そんなお人好しだから、同級生からなめられるのかもしれないけれどね。

「ありがとう、羽瀬川さん……」

 剣士くんも何か言いたそうだったけれど、わたしたちを見て安心したみたいだった。

「じゃあ神城さん、この学校で話題のパワースポット教えてよ。なんだっけ、願いが叶う木があるってインターネットの掲示板に書いてあったんだけど」

 インターネットって、そんなことまで書いてあるんだ。

「ああ、告白の木ね。木の下で告白すると将来結婚できるっていうありふれた話なんだけれど、うちの学校には告白の木で出来たカップルの子どもとか結構いるらしいから本当かもね。あと、告白の木見たさに、たまに他の学校の子や中学生まで入り込んじゃうんだってさ」

「最近は、神社みたいなパワースポットも人気があるかも」

 わたしの言葉に家保くんが笑った。

「そうだね。神様は信じていても、お化けや妖怪を信じている人は昔より減っているかもね」

 妖怪という言葉にどきりとする。家保くんは妖怪が存在することを知っているくせにそんなことを言うなんて。わたしの反応を見て、からかっているのかな。でも、お母さんやクラスメイトに妖怪のことを話しても信じてくれないだろうな。

 休み時間に校庭に出て、校舎裏の一本の太い木を三人で見上げた。この学校ができるよりもずっと前から生えていたらしい。

「あら、可愛いお客さんですわ」

 木の枝には羽の生えた小人の女の子が座っていた。だけれど、神城さんはなにも見えていない様子だ。わたしだけが心臓が飛び出しそうになるくらい驚いている。

 家保くんのほうを向くと彼はにやにやしながら木を見上げているだけだった。幻じゃないよね?

 わたしにだけ見えているってこと?

「妖精でも住んでいそうな木だね、羽瀬川さん」

 このセリフ、多分、家保くんは小人が見えているんだ。でもなんで神城さんには見えないのだろう?

「あれ? もしかして、あなたはわたしが見えているの? わたしはこの木に住んでいる洋怪のピクシーよ」

 海外の妖怪だ! 剣士くんはいなくてよかったかも。いたら洋怪に向かって敵だって、切りかかっていたかもしれないし。


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